- スピーチロックは、言葉で相手の行動をしばること。たとえば「〜しないで!」などの言い方。
- 介護現場では、職員の都合を優先しがち。転倒防止のため「立たないで」と言ったり・入浴を強くすすめるなど…気をつけたいですね。
- コツは言い換え。「あなたのペースで大丈夫」「どちらにしますか?」など、相手の気持ちに寄り添い、選べる言葉にするとgood。
【言い換え表】はこちら

スピーチロックってどんなこと?
スピーチロックとは、言葉によって相手の行動を制限することです。
今回は、知らず知らずのうちに相手の心を縛ってしまう「スピーチロック」について解説します。
この記事を読めば、あなたの声かけが変わり、利用者さんとの関係がもっと良くなりますよ。
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ブログ運営者:なお
【介護業界15年目】
【資格】
・介護福祉士
・介護支援専門員
・上級心理カウンセラー
ブログを書き続ける理由【クリックして開く】 著者の詳しいプロフィール
☑未経験から介護業界に飛び込む
☑介護施設のリーダー職
☑ブラック企業からホワイト企業に転職
ブログを書き続ける理由
ぼくは、今日も介護現場で働き、
家ではキーボードを打っています。
なぜブログを書き続けるのか?
答えはシンプルで、
あの頃の自分に向けて書いているからです。
夜勤明け、
心も体もすり減って、
休憩室でため息ばかり……
そんな時期がありました。
理不尽な叱責、
見えないいじめ、
パワハラ。
仕事は好きなのに、職場に行くのが怖い。
あの時のぼくに必要だったのは、
「大丈夫、道はある」という自信でした。
だからこのブログでは、
同じ介護士として、
あなたの悩みを解決すること目指しています。
抽象論やキレイごとではなく、
今日から使える言い回し、動線、伝え方、記録の工夫、チームの回し方。
現場が少しでもラクになるコツを共有します。
また、ぼくにはブラック企業からホワイト企業へ転職した経験があります。
運や根性ではなく、
準備と戦略で抜け出しました。
- 求人票の読み方
- 面接でのポイント
- 入職前の条件確認
- 入ってからの立ち回り
——失敗しないコツを知っています。
だからこのブログでは、
自分らしい人生を取り戻す方法を共有しているのです。
あなたが「また同じ目に遭った…」と絶望しないように。
そして何より、
パワハラやいじめに苦しんでいる、
あなたを救いたい。
「あなたは悪くない」
「辞めることは逃げじゃない」
「残るなら自分を守る方法ある」
ぼくの約束は次の3つ。
- 現場基準:実際に体験したことだけを書く。
- 嘘をつかない:できないことはできないと正直に書く。
- あなたの味方でいる:どんな状況でも、ぼくはあなたの味方ですよ。
このブログは、疲れた心に戻ってこられる避難所であり、次の一歩を踏み出す地図です。
読んだあとに、ほんの少し肩の力が抜けて、
「よし、やってみよう」と思える。
そんな文章をこれからも届けます。
もしあなたが今つらいなら、
ここに悩みを置いていってください。
もしあなたが次の職場を探しているなら、
ここで一緒に準備をしましょう。
ぼくは毎日書き続けます。
あなたの明日が、
今日より少し生きやすくなるように。



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介護職のお悩み【Q&A】



スピーチロックとは?:行動を言葉でしばること



そもそも「スピーチロック」とは何でしょうか?
難しく考える必要はありません。
シンプルに解説します。
「行動を言葉でしばること」=身体拘束と同じくらい注意が必要



スピーチロックとは、言葉によって相手の行動を制限したり、精神的に苦痛を与えたりすることです。
たとえば、「〜しないで」「〜しないとダメ」といった命令口調や、「早くしなさい」といった催促がこれにあたります。
ベッドの柵や抑制帯で体を縛る「身体拘束」は、介護現場で厳しく禁じられています。
スピーチロックは、目に見える形ではないだけで、相手の自由や尊厳を奪うという意味では、身体拘束と同じくらい深刻な問題だとぼくは考えています。
悪気なくても“支配・脅し・誘導”になる理由
声かけをする側に、悪気はまったくない。
むしろ「安全のため」「早く楽にしてあげたい」という善意から出た言葉が、スピーチロックになってしまうケースは本当に多いです。
しかし、受け取る側には、
- 支配「言うことを聞かなければいけない」
- 脅し「〜しないと大変なことになる」
- 誘導「こちらが望む行動をさせようとしている」
に感じられたりすることがあります。
この認識のズレが、スピーチロックの難しいところです。
よくある誤解:「忙しいから仕方ない」「安全のため」
現場では、「忙しくて、つい強い口調になってしまう」「転んだら危ないから、動かないでと言うしかない」といった声をよく聞きます。
気持ちは痛いほどわかります。
でも、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
その一言は、本当に「仕方ない」のでしょうか?
「安全のため」という言葉を、ぼくたちの都合を正当化するために使ってはいないでしょうか?
忙しいからこそ、安全を守りたいからこそ、言葉の選び方が重要になるのです。
スピーチロックの具体例【3選】



実際の場面を想定して、どのように対応が変わるかを見てみましょう。
事例1:せかしてしまう食事介助
- 状況: 食事のペースが遅いGさん。介助者が焦り始める。
- NG発言: 「ほら、次行きますよ。お口開けてください」
- 相手の反応: 焦らされたように感じ、顔をこわばらせて口を閉じてしまう。
- OK言い換え: 「Gさんのペースで大丈夫ですよ。一度お茶を飲みますか?」
- 結果: 一呼吸置くことでGさんも落ち着き、穏やかな表情で食事を再開できた。
忙しいとつい「早く食べて」「頑張って食べて」と言ってしまい、むせ込んでしまいました。
「利用者さんに自分の都合を押しつけていた」と、ハッとする。
深呼吸して「一口ずつで大丈夫ですよ」に言い換えると、表情がゆるみ、スムーズに完食。利用者さんのペースが大事ですね。
本当、反省です。
事例2:帰宅願望への声かけ
- 状況: Hさんが夜中に起きて、「家に帰りたい」と訴えてくる。
- NG発言: 「家には帰れません!」「部屋に戻ってください」
- 相手の反応: 強い口調に驚き、さらに不安が募って興奮してしまう。
- OK言い換え: 「どうかなさいましたか?眠れませんか?温かいお茶でもいかがです?」
- 結果: 不安な気持ちに寄り添ってもらえたと感じ、職員と話すうちに落ち着きを取り戻した。
「今日は帰れません」は火に油でした。
「何が心配ですか?」と話を傾聴したり、一緒にアルバムを見たり。
時間をかけて寄り添うことが、不安を取り除く近道だと実感しました。
「急がば回れ」ですね。
事例3:入浴拒否への圧力発言から、選択肢提示で同意形成
- 状況: Iさんが「今日は風呂に入りたくない」と強く拒否。
- NG発言: 「みんな入るんですから、わがまま言わないでください」
- 相手の反応: 「うるさい!」と声を荒らげ、心を閉ざしてしまう。
- OK言い換え: 「そうですか、入りたくない気分なんですね。でしたら、今日は温かいタオルで体を拭くだけにしませんか?それとも足だけお湯につけますか?」
- 結果: 自分で選べたことで納得し、「足だけなら」と足浴に応じた。結果的に清潔が保たれ、関係性も良好に保てた。
「今日はお風呂に入る日です」と伝えて断固拒否、「お風呂に入る決まりですから」と言って、ブチギレられました。
次回は、「今日は足湯からにしましょう」にすると、数分後に「ちょっとだけね」と浴室へ。足湯で気持ちがよかったのか、そのままの流れで浴槽にも入られました。
足湯で気持ちよさを実感してもらえると、浴槽への抵抗も減りましたよ。
NG声かけ→OK言い換えテンプレ【91選】



ここからは、具体的な場面ごとにNGな声かけと、言い換えのOKテンプレートをご紹介します。
あなたの現場でも、きっと似たような場面があるはずです。
歩行
NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
歩かないで! | ご一緒します。 手すりを使ってゆっくり行きましょう。 |
立たないで座ってて | 立つ前に声をかけてください。 すぐ伺います。 |
動くと危ないからやめて | 動きたいんですね。 安全に立てる準備をします。 |
ベッドから出ないで | 起きたい時は呼んでください。 一緒に起き上がりましょう。 |
杖は面倒だから使わないで | 杖を調整します。 使いやすい高さに合わせましょう。 |
勝手に行動しないで | 行き先を教えてください。 準備して同行します。 |
- NG「危ないから歩かないで」
- OK「危なくないよう一緒に行きましょう。手すりを使いましょう」
- 事例: 夜間、一人で歩き出そうとするFさん。転倒のリスクが高い状態です。
- NGの意図: 転倒事故を防ぎたい。安全を確保したい。
- なぜNGか: 行動そのものを完全に禁止する言葉は、強い束縛感を与えます。なぜ歩きたいのか、その目的(トイレに行きたい、喉が渇いたなど)を無視しています。
- OKのポイント: 行動を止めるのではなく、行動の目的を安全に達成する方法を一緒に考えます。「歩く」という行動を否定せず、「一緒に行く」「手すりを使う」という安全な方法を提案することで、相手の意欲を尊重しつつ、リスクを管理します。
食事



NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
早く口開けて | 準備できたら教えてください。 ゆっくり行きましょう。 |
全部食べないとデザートなし | 少しずつで大丈夫です。 量は一緒に決めましょう。 |
こぼさないで! | テーブルに近づけますね。 私がお手伝いします。 |
残すならもう出しません | 食べやすい形に変えます。 どうすれば食べやすいですか? |
黙って食べて | 味や温度はどうですか? 調整しますね。 |
好き嫌い言わないの | 味や形の希望を教えてください。 変えられます。 |
飲み込めないなら残して | 飲み込みやすく刻みます。 水分は一口ずつにしましょう。 |
早く飲み込んで | 飲み込む準備ができたら合図してください。 待ちますね。 |
- NG「全部食べないとデザートなしですよ」
- OK「ペースはあなたに合わせます。少しずつ一緒に進めましょう」
- 状況: 食事の進みが遅いAさん。介助する職員は次の業務が気になり、焦りを感じています。
- NGの意図: 完食して栄養をとってほしい、早く介助を終えたい。
- なぜNGか: 子どもを叱るような言い方で、罰を与えるような脅しに聞こえます。食事の時間が苦痛になってしまいます。
- OKのポイント: 相手のペースを尊重する姿勢を見せ、寄り添う気持ちを伝えます。「一緒に」という言葉が安心感を与えます。
- NG「早く口を開けてください」
- OK「飲み込みやすい形にします。準備できたら教えてください」
- 状況: 嚥下(えんげ)機能が低下しているBさん。むせるのが怖くて、口を開けるのに時間がかかります。
- NGの意図: テンポよく食事を進めたい。
- なぜNGか: 相手の不安やペースを無視した、一方的な催促です。焦らせることで、かえって誤嚥のリスクを高める可能性もあります。
- OKのポイント: 相手の不安(飲み込みにくさ)に共感し、具体的な対策(飲み込みやすい形)を提示します。そして、タイミングを相手に委ねることで、主体性を取り戻せるよう支援します。
排泄
NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
今行かないならオムツにして | 今行く/少し後に行く、どちらが楽ですか? 付き添います。 |
勝手に行かないで | ご一緒します。 安全に行きましょう。 |
漏らしたら困るでしょ | 気持ちよく過ごせるよう、早めにご案内しますね。 |
トイレはダメ、我慢して | すぐ行きましょう。 近い方をご案内します。 |
何で今なの? | 今が安心ですね。 準備しますのでお待ちください。 |
出ないなら行かないよ | 念のため行きましょう。 途中でやめても大丈夫です。 |
- NG「今行かないならオムツにして」
- OK「今と後、どちらが楽ですか?付き添います」
- 事例: 夜勤中、Cさんからトイレに行きたいとナースコール。しかし、30分前にもトイレに行ったばかりです。
- NGの意図: 何度も対応するのが大変なので、朝までオムツで済ませてほしい。
- なぜNGか: 相手の尊厳を深く傷つける言葉です。「言うことを聞かないなら、恥ずかしい思いをさせる」という脅しに他なりません。
- OKのポイント: 相手の訴えを否定せず、選択肢を提示します。「今」と「後」という選択肢を示すことで、相手に決定権があることを伝えます。「付き添います」の一言で、面倒がっているわけではないというメッセージも伝わります。
入浴・清拭
NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
入らないなら困ります | 今日は手と顔だけにします? 全身は次回にしましょうか。 |
嫌でも入って | 不安な点はどこですか? 温度や時間を調整できますよ。 |
黙って従って | 声かけしながら進めます。 嫌ならすぐ止めますね。 |
早く脱いで | 準備ができたら教えてください。 お手伝いします。 |
逃げないで | ここで待ちます。 安心できるよう一緒に進めましょう。 |
文句言わないで洗わせて | 洗われるが嫌なところはありますか? そこは避けますね。 |
- NG「入らないなら困ります」
- OK「今日は手や顔だけにします?全身は明日に回しましょうか」
- 状況: 入浴を拒否するDさん。職員は入浴計画通りに進めたいと思っています。
- NGの意図: 計画通りに入浴してほしい、清潔を保ってほしい。
- なぜNGか: 「困ります」は職員側の都合の押し付けです。相手を罪悪感でコントロールしようとする言葉です。
- OKのポイント: 「All or Nothing(全部かゼロか)」ではなく、スモールステップを提案します。全身が無理でも、部分的に清潔を保つという代替案を示すことで、相手も受け入れやすくなります。決定権を相手に委ねることで、自己決定を尊重します。
服薬
NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
飲まないと治らないよ! | 水かゼリーを選べます。 どちらで飲みましょう? |
むりやりでも飲んで | 一口ずつ試しましょう。 難しければ形状変更を相談します。 |
質問しないで飲んで | 薬の目的を説明します。 納得できたら進めましょう。 |
今すぐ全部飲んで | 休み休みで大丈夫です。 〇〇さんのペースでいいですよ。 |
飲めないならもう出さない | 飲みやすい工夫を一緒に探しましょう。 方法を選べます。 |
- NG「飲まないと治りませんよ」
- OK「お水・ゼリー・時間、選べます。どうしましょう?」
- 事例: 薬を飲むのを嫌がるEさん。「苦いから嫌だ」と訴えています。
- NGの意図: 病気が悪化しないよう、きちんと薬を飲んでほしい。
- なぜNGか: 正論ですが、相手の「嫌だ」という気持ちを否定し、不安を煽る言い方です。
- OKのポイント: なぜ嫌なのか(苦い、飲みにくいなど)の理由を探りつつ、飲み方を工夫できる選択肢を提示します。水で飲むのか、服薬ゼリーを使うのか、食後すぐか少し待つかなど、小さなことでも自分で選べる状況を作ることで、納得感につながります。
夜間・見守り
NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
起きないで | 目が覚めましたね。 トイレならご一緒します。 |
うろうろしないで | 心配ですね。 廊下のライトを点けて一緒に歩きましょう。 |
声を出さないで | お困りごとは何ですか? 小声でゆっくり伺います。 |
ベッドから出ないこと | 起きたい時は呼んでください。 すぐ伺います。 |
寝ててください | 眠れないですね。 体位や飲み物を変えてみますか? |
転倒が怖くて「部屋に戻ってください」と強めに言ったら不安そうに徘徊が増えました。感情的になると逆効果ですね。
口腔ケア
NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
口開けてって言ってるでしょ | 口を湿らせますね。 準備できたら合図をください。 |
文句言わずに磨かせて | 痛い所はありますか? 弱い力で行きますね。 |
外せるなら入れ歯外して | 外すタイミングはいつが楽ですか? 一緒にやりましょう。 |
動かないでじっとして | 動きたい時は合図をください。 止めますね。 |
体操・レクリエーション
NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
運動をサボらないで | 今日は座ってできる運動からにします? 回数は一緒に決めましょう。 |
できないは通用しない | できる動きから始めます。 私がサポートします。 |
痛くても我慢して | 痛みの範囲で行いましょう。 痛い時はすぐ止めます。 |
みんなと同じだけやって | 体調に合わせて回数を調整します。 無理はしません。 |
皆やるからあなたもやって | 見学/少しだけ参加/別の作業、どれが良いですか? |
途中でやめない | 疲れたら合図ください。 いつでも休めます。 |
静かにして参加して | 賑やかな席が苦手なら静かな席を用意します。 どうしますか? |
帰宅願望
NG声かけ | OK言い換え |
---|---|
帰るって言わないで | 帰りたいお気持ち、わかります。 今その理由を教えてください。 |
ここがあなたの家です | お家が心配なんですね。 どんなことが気になっていますか?一緒に確認しましょう。 |
無理です、帰れません | すぐに動くのは難しいです。 代わりに今できることを一緒に決めましょう。 |
家はもうありません | 大切なお家のこと、気になりますよね。ご家族に連絡して様子を聞きますか? |
諦めてください | そのお気持ちは大事です。 今日できること/明日できることを一緒に整理しましょう。 |
ベッドに戻って | 少し歩きましょう。 落ち着いたら帰る段取りを考えましょう。 |
勝手に出ないで | ご一緒します。 安全に準備してから行きましょう。 |
歩かないで | 外に行きたいですね。 まずは廊下を一緒に歩いて気持ちを整えましょう。 |
今はダメ | 今は難しい時間です。 ◯時にもう一度相談するのはどうですか?予定をメモします。 |
もう夜だから寝て | 外が暗くて足元が不安です。 朝一番で準備します。朝に一緒に進めましょう。 |
うるさい、やめて | 不安でしたね。 お茶を飲みながらお家のことを聞かせてください。 |
関係ない話はしないで | 大切なお話です。 家のどの点が一番心配ですか? 順番に解決しましょう。 |
送迎はありません | 移動の方法を一緒に考えましょう。 ご家族やタクシーへの連絡も選べます。 |
お金がないでしょ | 費用の心配がありますね。 準備の仕方を一緒に確認しましょう。 |
鍵もないでしょ | 鍵のことが気になりますね。 手元の持ち物を一緒に確認しましょう。 |
ここに住むって決めたよね | 今は帰りたいお気持ちが強いのですね。 今日の安心につながることを一緒に選びましょう。 |
そんなこと言わないで | 率直に言ってくださってありがとうございます。 どうすれば安心できますか? |
家族は来ません | ご家族に相談してみましょうか? 今お電話できる時間を一緒に決めます。 |
ダメ、職員の決まりです | 安全面の決まりがあります。 できる範囲で最善の方法を一緒に考えますね。 |
とにかく戻ってください | まずは座って落ち着きましょう。 その後の段取りを一緒に立てます。 |
もうその話は終わり | 大切なことなので続けましょう。 帰ったら何をしたいですか? |
家は遠いから無理 | 距離の問題がありますね。 今日は連絡や準備、明日は移動、という順にしてみますか? |
迷惑だからやめて | 不安なお気持ちがあるのですね。 私が付き添います。安心できる方法を探しましょう。 |
現実を見てください | お気持ちに寄り添いたいです。 その気持ちが少し楽になる方法を一緒に考えましょう。 |
鍵を隠します | 安全のため職員が管理しますね。 必要な時は一緒に確認しましょう。 |
出入り口に近づかないで | 玄関が気になりますね。 窓際で外の様子を一緒に見ましょう。 |
仕事があるわけないでしょ | お仕事が気がかりなのですね。 予定を書き出して整理しましょう。 |
ペットの心配はやめて | ペットが心配ですね。ご家族に様子を確認してみますか? |
今すぐ出ますよ | 出発の前に必要な準備を一緒に確認しましょう。 落ち着いて進めましょう。 |
何度も言わせないで | 何度でも大丈夫です。 安心できるまで一緒に考えます。 |
嘘を言わないで | そう感じておられるのですね。 その理由を教えてください。 解決策を探します。 |
外は危ないから無理 | 安全が心配ですね。日中の明るい時間に職員と一緒に行く案はどうですか? |
今忙しいから後で | ◯分後に伺います。 必ず来るので、このカードに時間を書いておきますね。 |
ここから出られません | 外出の手順があります。 手順に沿って進めればできます。 一緒に確認しましょう。 |
話をそらさないで | 大切な話です。 家に着いたら最初に何をしたいか教えてください。 |
今日中は無理です | 今日は準備、明日移動、など段取りを一緒に作りましょう。 カレンダーに書きます。 |
さっさと戻って | 座って一息つきましょう。 お水にしますか、お茶にしますか? |
どうせ忘れるでしょ | 大事な予定なのでここにメモします。 私も一緒に覚えておきますね。 |
連絡はしません | 誰に連絡すると安心できますか? 一緒に電話しましょう。 |
話しても無駄 | 話してくださってありがとうございます。 少しずつ進めましょう。 |
玄関は閉めます | 安全のため施錠しています。 出るときは私が付き添いますね。 |
必要ないから座って | 立ちたいのですね。 安全に立てるよう準備します。 一緒に立ちましょう。 |
泣かないで | 涙が出るほど心配だったのですね。そばにいます。 ゆっくりお話ししましょう。 |
しつこいです | 大事なことだから繰り返しになりますね。 私も覚えておきます。 一緒に計画しましょう。 |
判断に迷ったときのチェック方法:心の中で3つの自問自答



とっさの場面で「この言い方でいいのかな?」と迷うこともあると思います。
そんな時は、心の中でこの3つを自問自答してみてください。
①その一言は“相手の選択肢”を奪っていないか?
「〜しなさい」「〜はダメ」のように、イエス/ノー以外の答えを許さない言葉になっていないか、振り返ってみましょう。
相手に小さな選択肢(「お茶にしますか?お水にしますか?」など)を提示できているかどうかが、一つの目安になります。
車椅子から立ち上がりかけて危ない時、反射的に「ダメ!」と言ってしまった。
利用者さんが驚いた拍子によろけて、逆に危なかったです。
②“早く・言うことを聞かせるため”だけの言葉になっていないか?
その言葉の目的が、ぼくたち職員の都合(効率化、時間短縮)だけになっていないか?
胸に手を当てて考えてみましょう。
相手のためではなく、自分のための言葉は、スピーチロックになりやすい危険なサインです。
③“相手の気持ち・体調・不安”を先に確かめたか?
行動を促したり、止めたりする前に、「どうしましたか?」「おつらいですか?」といった、相手の状態を気遣う一言を挟めているでしょうか。
相手を気遣うワンクッションがあるだけで、言葉の受け取られ方は全く変わってきます。
なぜ起こる?スピーチロックの原因【3選】



スピーチロックは、決して意地悪な職員だから起こすわけではありません。
その背景には、介護現場が抱える構造的な問題が隠されています。
人手不足・時間圧・慣れによる“効率優先”
最大の原因は、慢性的な人手不足と、常に時間に追われる業務です。
一人ひとりに丁寧に関わる時間的・精神的な余裕がなく、どうしても効率を優先した「作業」になってしまいがちです。
また、日々の業務に慣れてくると、無意識のうちに声かけがパターン化し、相手の反応を見なくなってしまうこともあります。
ルールが曖昧/新人教育がおろそか
施設として「スピーチロックをなくそう」という明確な方針や、具体的な声かけのルールが曖昧な場合、職員個人の判断に委ねられてしまいます。
また、新人教育がマニュアル化されておらず、先輩のやり方を見よう見まねで覚える「口伝い」の教育だと、不適切な声かけがそのまま引き継がれてしまうリスクがあります。
家族への説明不足(安全と尊厳のバランス)
ご家族から「安全第一でお願いします。危ない時は厳しく言ってください」と言われることもあります。
しかし、その言葉通りに強い口調で行動を制限することが、本当の意味でご本人のためになるかといえば、そうではありません。
安全を守ることと、その人らしい生活を送る尊厳を守ることのバランスについて、日頃からご家族と丁寧にコミュニケーションをとり、施設の考え方を説明しておくことが重要です。
関連記事はこちら
現場で実行!“ゼロに近づける”仕組みづくり



個人の努力だけに頼らず、チームでスピーチロックを防ぐための具体的な仕組みづくりをご紹介します。
チェックリスト(毎日1分)
業務開始前や終業前の1分間、かんたんなチェックリストで振り返る時間を作ります。
- ①声かけ前に状態確認: 行動を促す前に、相手の表情や体調を確認したか?
- ②選択肢を示す: 一方的な指示ではなく、2つ以上の選択肢を提示できたか?
- ③最後は感謝で終える: 介助が終わった後、「ご協力ありがとうございます」と感謝を伝えたか?
声かけテンプレをスタッフルームに掲示
この記事で紹介したような「NG→OK言い換え」のテンプレートを場面別にまとめ、スタッフルームの目立つ場所に掲示します。
いつでも誰でも見られるようにすることで、チーム全体の共通言語になります。
関連記事はこちら



ヒヤリハットの“言い回し版”を収集→月1振り返り
転倒などの事故につながりかけた「ヒヤリハット」と同じように、「つい強い言い方をしてしまい、相手を不快にさせてしまったかもしれない」という“言葉のヒヤリハット”を匿名で収集します。
月に一度、チームでその事例を振り返り、「こんな時、どう言えばよかったか」をみんなで考える場を設けます。
新人OJT:先輩が“OK言い換え”を実演する
新人が現場に入った際、先輩職員が意識してOKな声かけを実践し、「なぜ今、こういう言い方をしたのか」を解説します。
良い見本を具体的に示すことが、何よりの教育になりますよ。
関連記事はこちら
よくある質問(Q&A)
最後に、現場でよく聞かれる質問にお答えします。
- 忙しいときはどうしても強い言い方になります…対策は?
-
お気持ちはよく分かります。だからこそ、考えなくても口から出るように「テンプレ化」するのが有効です。
何か言う前に「お茶にしますか?お水にしますか?」のように、まず選択肢を提示する癖をつける。そして、先ほどの「3問チェック」を心の中で一瞬でも行う習慣をつけることで、“言い換えの癖”が身についてきます。
- 家族から「厳しく言って」と言われたら?
-
まずはご家族の「安全を願う気持ち」に共感を示した上で、施設のケア方針を丁寧に説明します。
「厳しく言うことで、かえってご本人が不安になり、予期せぬ行動につながる可能性もあります。私達は、ご本人が安心して動けるような声かけを基本として、安全を守っていきたいと考えています」と伝え、厳しさではない方法でのアプローチを提案します。
- どこからがスピーチロック?線引きは?
-
判断基準は「その言葉が、相手の選択肢を奪っていないか」「恐怖や罪悪感で相手を動かそうとしていないか」という点です。
もし「これってスピーチロックかな?」と迷ったら、それはもうイエローカードかもしれません。一人で抱え込まず、すぐにチームの他のスタッフと「この言い方、どう思う?」と共有することが大切です。
- 新人教育でまず教えることは?
-
まず、NG/OKが一覧になったカードを渡して視覚的に覚えてもらいます。次に「3問チェック」を教えて、自分で考えるクセをつけてもらいます。そして最も効果的なのが、OJTで先輩がOKな声かけを実践して見せることです。動画で撮影して、いつでも見返せるようにするのも良い方法です。
まとめ
- スピーチロックは、言葉で相手の行動をしばること。たとえば「〜しないで!」などの言い方。
- 介護現場では、職員の都合を優先しがち。転倒防止のため「立たないで」と言ったり・入浴を強くすすめるなど…気をつけたいですね。
- コツは言い換え。「あなたのペースで大丈夫」「どちらにしますか?」など、相手の気持ちに寄り添い、選べる言葉にするとgood。
【言い換え表】はこちら
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
スピーチロックは、誰にでも起こりうる、とても身近な問題です。
ぼく自身も、これまでのキャリアの中で、反省すべき声かけをしてしまった経験は数え切れません。
大切なのは、「スピーチロックをしてしまう自分はダメな職員だ」と責めることではなく、「もしかしたら、今の言い方は良くなかったかな?」と気づき、振り返り、次の一言を少しだけ変えてみようと試みることです。
NGを覚えるより、OKの引き出しを一つずつ増やしていく。
個人の頑張りだけでなく、チームの仕組みで支え合う。
この記事が、あなたの現場の“言葉”を、もっと温かいものに変えるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
あなたの介護を、心から応援しています。
=== 追伸 ===
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
あなただけに「介護士の悩み」をピンポイントで解決する方法を紹介します。
介護転職に失敗しないコツはこちら
https://kaigo-ozisan.com/lp/recruitment-agent/
あなたの悩みをピンポイントで解決
介護士の悩み・疑問【Q&A】
悩みを解決してスッキリしませんか?
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