【日本と比較】北欧の認知症ケアを徹底解説|介護施設や介護士の働き方とは?

悩む人

北欧の福祉って何が違うの?

悩む人

日本の介護と比べて、どんな働き方なの?

介護おじさん

介護士歴15年以上の筆者が、北欧の認知症ケアの特徴介護施設、介護士の働き方を徹底解説します。

記事のポイント

北欧の介護施設は「家」のような環境づくり
認知症ケアの基本は「できることを奪わない」
介護士の労働環境が日本より良い理由とは?

この記事を読めば、北欧の認知症ケアのポイントがわかります。

日本の介護現場で活かせるヒントを見つけませんか?

介護の知識をアップデートしたい方は、ぜひチェックしてください。

各国の公式サイトはこちら

スウェーデン社会庁:

https://www.socialstyrelsen.se/

デンマーク社会省:

https://www.sm.dk/

フィンランド社会保健省:

https://stm.fi/en/frontpage

ノルウェー保健・ケアサービス省:

https://www.regjeringen.no/en/dep/hod/id421/

随時、情報を追加・更新していきます。

著者のプロフィール

名前:なお(介護おじさん)
年齢:43歳
【資格】

介護福祉士

介護支援専門員

上級心理カウンセラー
☑介護士歴15年目

☑介護施設のリーダー職

☑ブラック企業からホワイト企業に転職

職場で陰湿なイジメを受けた経験あり

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目次

北欧の認知症ケア:基本理念

北欧の認知症ケア:基本理念

北欧の認知症ケアは「人間らしさを大切にする」という考え方が根底にあります。

単なる「介護」ではなく、「その人らしく生きる」ことを目的としているのです。

そのために、以下の3つの理念が大切にされています。

  • パーソン・センタード・ケア(PCC):一人ひとりの個性を尊重する
  • ノーマライゼーション:認知症でも社会の一員として暮らせる仕組み
  • QOL(生活の質)の向上:人生の楽しみを増やす

これらの考え方は、日本の介護にも浸透していますよね。

「認知症だからできない」と決めつけるのではなく、「その人が持っている力を引き出す」 という発想は、忘れたくない視点です。

詳しく見ていきましょう。

① パーソン・センタード・ケア(PCC)

認知症の人を「個人」として尊重する

北欧の認知症ケアで最も重要視されるのが 「パーソン・センタード・ケア(PCC)」 という考え方です。

パーソン・センタード・ケア(PCC)は、「認知症があるから」と画一的なケアをするのではなく、その人の 個性、生活の歴史、価値観を大切にしたケアを提供する というもの。

具体例

エルサさん(仮名):80歳・スウェーデン
エルサさんは、かつて小学校の先生だった。しかし認知症が進行し、現在はグループホームで暮らしている。


介護スタッフはエルサさんが「教育」に情熱を持っていたことを知り、毎朝、スタッフが「今日のレッスンプランを考えましょう」と呼びかける。


エルサさんは黒板(ホワイトボード)に授業のテーマを書くのが日課になり、それによって 「先生だった自分」 を取り戻し、日々の生活に張り合いを感じられるようになった。

ポイント

  • 「元先生だった」という過去を活かしたケア
  • 認知症でも 「できること」にフォーカス する

② ノーマライゼーション

認知症の人も「普通の生活」を送れる社会

北欧では 「ノーマライゼーション」 という概念が重要視されている。

ノーマライゼーションとは、「障がいがある人も、高齢者も、社会の一員として普通の生活を送れるべきだ」という考え方。

具体例

デンマークの「認知症フレンドリータウン」
デンマークには「認知症の人でも普通に暮らせる街づくり」が進んでいる。

たとえば、

  • スーパーの店員が認知症の人の対応方法を学んでいる
  • 交差点には 歩行者がゆっくり渡れるように時間が長めの信号 が設置されている
  • 図書館には認知症の人向けに 昔の写真集や音楽が揃えられた「記憶を刺激するコーナー」 がある

ポイント

  • 施設内に閉じ込めず、社会の一員として生活できる環境づくり
  • 認知症を「特別視」せず、みんなが共に生きる社会 を目指す

③ QOL(生活の質)の向上

その人が「幸せ」を感じる瞬間を増やす

北欧の認知症ケアでは、「生きる意味」や「幸せを感じる時間」を重視する。

単に健康管理をするのではなく、日常生活の中で本人が喜びを感じることを増やす ことが目的。

具体例

ノルウェーの「ミュージックケア」
ノルウェーでは、認知症ケアに 「音楽療法」 を積極的に取り入れている。

  • 介護施設では、入居者が 若い頃に好きだった音楽を流す
  • 音楽を聴くことで記憶がよみがえり、感情が豊かになったり、落ち着いたりする
  • 特に重度の認知症の人でも、歌詞を覚えていて、一緒に口ずさむことが多い
具体例

マリアさん(仮名):85歳・ノルウェー
マリアさんはほとんど言葉を話さなくなっていたが、ある日、スタッフが昔のラジオで流行っていた「マリアさんが若い頃に好きだった曲」を流した。


すると、マリアさんは急に笑顔になり、歌い始めた。家族も驚き、「こんなに楽しそうな母を見るのは久しぶり」と涙を流した。

ポイント

  • 音楽やアートで 「感情」や「記憶」を呼び起こす
  • 医療的なケアだけでなく、「人生の楽しみ」も大切にする

各国の認知症ケアモデル

各国の認知症ケアモデル

北欧では、国ごとに特色ある認知症ケアモデルが確立されています。

北欧の認知症ケアの特徴は、「その人がその人らしく生きられること」を重視している点です。

認知症になっても、安心して暮らせる環境づくりが進んでいます。

日本でも「音楽療法」や「見守りシステム」を取り入れていますよね。

各国の取り組みを詳しく見ていきましょう。

特徴具体例
スウェーデン小規模グループホームで個人を尊重生活の中で「できること」を続ける支援
デンマーク地域ぐるみの認知症ケアスーパーの店員が認知症対応を学ぶ
フィンランドテクノロジーと自然を活かすデジタル見守り+森林セラピー
ノルウェー医療と福祉が一体化音楽療法で認知症の進行を遅らせる

1. スウェーデン:グループホーム型ケアの先進国

家庭的な環境で、自立した生活をサポートする

スウェーデンでは、認知症の方が「できるだけ普通の生活を送る」ことを目指し、グループホーム型のケアが一般的です。

グループホームは、5〜10人程度の小規模なユニット で運営され、利用者が自宅のように暮らせる環境が整えられています。

具体例オーサさん(仮名):78歳のケース

オーサさんは認知症を発症し、短期記憶が衰えたため、一人暮らしが難しくなりました。

しかし、グループホームに入居してからは、毎朝キッチンでコーヒーを淹れ、庭で新聞を読む習慣を取り戻すことができました。
スタッフは、オーサさんが若い頃、カフェで働いていたことを知り、「朝のコーヒー準備」を日課としてサポートしたのです。

すると、オーサさんは「自分が誰かの役に立っている」と感じ、明るい表情が増えていきました。

ポイント

  • 小規模な家庭的環境で、個人の役割を大切にする
  • 認知症があっても、「できること」を続けられるようサポート

2. デンマーク:地域密着型のケアと「尊厳」の考え方

認知症になっても「その人らしく」生きることを重視

デンマークでは、「認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続ける」ことを重視しています。

介護施設ではなく、地域全体がサポートする仕組みが整っているのが特徴です。

デンマークのある小さな町では、スーパーや銀行の店員が「認知症対応トレーニング」を受けており、認知症の方が安心して日常生活を送れるようになっています。

具体例:認知症フレンドリーな街づくり

たとえば、カールさん(仮名):82歳が買い物中に財布を落としたとき、店員はすぐに気づき、ゆっくりとした口調で「カールさん、お財布を忘れていますよ」と声をかけました。

このような細やかな配慮があることで、認知症の方もストレスなく買い物ができるのです。

ポイント

  • 施設に頼るのではなく、地域全体で認知症の方を支える
  • 「困ったときに助けてもらえる環境」があることで、自立した生活が可能に

3. フィンランド:テクノロジーと自然を活かした認知症ケア

ITと自然療法を組み合わせた革新的なアプローチ

フィンランドでは、最新のテクノロジーと自然を活かしたケア が特徴です。

特に、デジタルツールを使った遠隔ケア や、森や湖を活かしたセラピー が進んでいます。

具体例①:デジタル見守りシステム

一人暮らしのエリナさん(仮名):80歳は、夜中に家を出て迷子になることが増えていました。

そこで、家のドアに「センサー付き見守りシステム」を導入。

見守りシステムは、ドアが夜間に開くと自動的に家族や介護スタッフに通知が届く仕組みになっており、万が一のときでもすぐに対応できるようになっています。

フィンランドでは、認知症の方が「森の中で散歩をする」プログラムが導入されています。

具体例②:森の中での認知症ケア(グリーンケア)

マルクさん(仮名):77歳は、施設に入所したばかりの頃、落ち着きがなく不安そうな様子でした。

しかし、週に数回、森の中を散歩することで、リラックスできるようになり、夜もぐっすり眠れるようになったのです。

ポイント

  • デジタル技術を活用して安全な環境を作る
  • 自然を活かしたセラピーで、心の安定をサポート

4. ノルウェー:医療と福祉の一体型支援

「医療」と「福祉」を統合し、認知症の進行を遅らせる

ノルウェーでは、医療と福祉が一体化 しているため、認知症ケアがスムーズに行われます。

認知症の進行を遅らせるための「アクティブ・ケア」も重視されています。

アクティブ・ケアとは、楽しみながら活動を促すケアのこと。日本でいえば「レクリエーション」ですね。

具体例:音楽療法とリハビリ

アンドレアスさん(仮名):79歳は、認知症が進行し、話すことが少なくなりました。

そこで、スタッフはアンドレアスさんが若い頃に好きだった音楽を流し、一緒に手拍子をしたり、簡単なダンスを取り入れたりしました。


すると、数週間後には、アンドレアスさんが音楽に合わせて口ずさむようになり、表情が豊かになっていったのです。

ポイント

  • 医療と福祉が一体化し、切れ目のないケアを提供
  • 音楽療法やリハビリを取り入れ、認知症の進行を遅らせる

北欧の認知症ケア施設の特徴

北欧の認知症ケア施設の特徴

北欧の認知症ケア施設は、単に「介護する場所」ではなく、認知症の方が自分らしく、できる限り自立した生活を送れる環境 を整えているのが特徴です。

介護おじさん

日本でいえば「グループホーム」のようなイメージです。

ここでは、特に重要な3つのポイントを具体例を交えながら解説していきます。

認知症ケア施設の特徴

特徴具体的な工夫効果
家庭的な環境を再現施設ではなく「家」のような空間を作る入居者が「ここで暮らせる」と感じる
小規模・ユニットケア5〜10人単位で生活し、決まったスタッフが対応個別ケアがしやすく、入居者が安心できる
自然や動物を活用ガーデンセラピー・動物セラピーを導入認知症の進行を和らげ、感情を活性化させる

1. 家庭的な環境を再現し、自立を促す施設設計

大きな病院のような施設ではなく、普通の「家」に近づける

北欧では、認知症ケア施設を「病院」や「老人ホーム」としてではなく、普通の家庭のような空間 にすることを重視しています。

家庭のような空間にすることで、入居者が「施設に入れられた」と感じることなく、安心して生活できるようになるのです。

スウェーデンの多くの認知症ケア施設は、5〜10人の少人数ユニット で構成されています。施設内には、共同のキッチンやリビングルームがあり、入居者はスタッフと一緒に料理をしたり、洗濯をしたりしながら暮らします。

具体例:スウェーデンのグループホーム

エルサさん(仮名):82歳
エルサさんは、認知症の進行により一人暮らしが難しくなったため、グループホームに入居しました。

最初は「ここで本当に暮らせるの?」と不安そうでしたが、スタッフが「一緒にお昼ごはんを作りましょう」と誘い、食事作りに参加するうちに、「自分も家の一員なんだ」と実感するようになったのです。

ポイント

  • 施設ではなく「家」のような空間を作る
  • 認知症があっても、「日常生活の役割」を持ち続けることで自立を促す

2. 小規模・ユニットケアで個別対応を重視

施設を「小さなコミュニティ」にすることで、個々のニーズに合わせたケアを実現

北欧では、大規模な施設よりも、小規模なユニットケア を導入することで、入居者一人ひとりに合った支援を行うことを重視しています。

デンマークのあるケアホームでは、1ユニットに6人まで しか入居できません。

スタッフも決まったメンバーが対応し、入居者と家族のような関係を築きます。

具体例:デンマークの「ケアホーム」

オラフさん(仮名):79歳
オラフさんは認知症の影響で、夜になると不安になり落ち着かなくなる「夕暮れ症候群」の症状がありました。

大きな施設ではスタッフの対応が難しいですが、このケアホームでは、夜間も決まったスタッフが「オラフさん専用の安心ルーティン」 を実施。

オラフさんが好きな音楽を流し、一緒に温かいお茶を飲むことで、安心して夜を過ごせるようになりました。

ポイント

  • 小規模ユニットにすることで、一人ひとりに合ったケアができる
  • 「同じスタッフが担当する」ことで、入居者が安心感を持ちやすい

3. 自然を活用したセラピー(ガーデンセラピー・動物セラピー)

自然を活用したセラピー(ガーデンセラピー・動物セラピー)

緑や動物とのふれあいを通じて、認知症の進行を和らげる

北欧では、自然との触れ合いが認知症ケアに効果的であると考えられています。

そのため、多くの施設に庭園(ガーデン) があり、散歩やガーデニングを楽しめるようになっています。

さらに、動物と触れ合う「アニマルセラピー」 も導入されているのです。

フィンランドの認知症ケア施設では、入居者が庭で野菜や花を育てる プログラムがあります。

介護おじさん

日本でも「家庭菜園」をしている施設がありますよね。

具体例①:フィンランドの「ガーデンセラピー」

マリさん(仮名):85歳

マリさんは、もともと農家の娘。

認知症が進み、家族の名前を思い出せなくなることが増えました。

ですが、施設の庭で「トマトの世話」をするようになると、「ああ、昔、家でもやっていたわ」と笑顔が増え、会話も少しずつ増えていったのです。


ノルウェーでは、認知症ケア施設に犬や猫を飼い、入居者が自由に触れ合えるようにしている ところもあります。

介護おじさん

日本でも「セラピードッグ」という、犬と触れ合うケアがあります。

具体例②:ノルウェーの「動物セラピー」

ハンスさん(仮名):87歳
ハンスさんは認知症が進み、ほとんど会話をしなくなっていました。

しかし、施設で飼われている犬の「ノア」と触れ合ううちに、表情が和らぎ、少しずつ「よしよし」「かわいいね」と言葉が出るようになったのです。

スタッフは「ノアのおかげでハンスさんがリラックスできる」と驚きました。

ポイント

  • ガーデニングや動物とのふれあいが、認知症の進行を遅らせる
  • 昔の記憶を呼び起こすことで、会話や感情が活性化する

介護士の役割と働き方

介護士の役割と働き方

北欧の介護士(ケアワーカー)は、日本の介護職と比べて、「介護」だけでなく「生活のパートナー」としての役割 を担っています。

単に身体介助をするのではなく、認知症の方が 「自分らしく暮らせるようにサポートする」 のが基本的な考え方です。

日本でも「自分らしく暮らせる」ように支援するのが基本的な考えですが、実際は人員不足で「職員の都合」で業務を進めることも……

ここでは、北欧の介護士の役割や働き方について、具体例を交えながら解説していきます。

北欧の介護士の役割・働き方

特徴具体的な工夫メリット
生活のサポーターできることは本人に任せる自立心を保つ
対話を重視まず信頼関係を築く精神的な安定につながる
労働環境に余裕がある1人あたりの担当人数を減らす介護士の負担が少なく、質の高いケアができる
専門職として評価高い給与・手厚い研修制度介護士が誇りを持って働ける

1. 介護士は「生活のサポーター」

できることは本人に任せ、できないことだけ支援する

北欧の介護士は、「手厚く介護する」よりも 「本人ができることを尊重し、最小限のサポートをする」 という考え方を持っています。

認知症があっても、その人の 「できる力」を引き出す ことが大切だと考えられているからです。

日本でも、「自己決定」を尊重して、できる限り本人のできることはやっていただきます。

ですが、時間に追われ「そんな余裕はない!」というのが現状です。

介護士が服を用意して、着替えを手伝い「早く終わらせる」ことを優先していませんか?

スウェーデンの介護士の関わり方を見てみましょう。

具体例:スウェーデンの介護士の関わり方

エルサさん(仮名):82歳
エルサさんは認知症があり、朝の着替えをスムーズにできないことが増えてきました。

  • まず、「今日はどんな服を着たいですか?」 とエルサさんに聞きます。
  • エルサさんが迷っている場合、「昨日は青いワンピースを着ていましたね。今日は違う色にしてみますか?」 と優しく提案します。
  • 服を選んだ後も、できるだけ 「自分で着る」 ように促し、困ったときだけ手を貸します。

ポイント

  • 介護士がすべてやるのではなく、本人の意思決定を尊重する
  • できることを減らさないことで、自立心を保つ

2. 介護士は「コミュニケーションの専門家」

認知症の方との対話を大切にし、安心感を提供する

北欧の介護士は、身体介助以上に 「心のケア」 を重視します。

特に、認知症の方は 「知らない人」に対して警戒心を持つことがある ため、介護士は入居者と深い信頼関係を築くことを大切にしているのです。

具体例:デンマークの「会話の時間」

オラフさん(仮名)79歳
オラフさんは認知症が進み、新しい環境に馴染めず不安な様子でした。

日本では、食事や入浴のサポートが優先されることが多いですが、デンマークでは 「安心してもらうこと」 を最優先にします。

  • 介護士は、まずオラフさんと 30分ほど世間話をする時間を作りました。
  • 「オラフさん、若い頃はどんな仕事をしていたんですか?」と聞くと、少しずつ表情が和らぎ、昔の話をしてくれました。
  • こうした対話を毎日続けるうちに、オラフさんは介護士に心を開き、落ち着いた表情で過ごせるようになりました。

ポイント

  • 介護士は 「作業」ではなく「対話」 を大切にする
  • 「信頼関係を築くこと」 がケアの第一歩

3. 介護士の労働環境は「ゆとり」がある

人手不足にならないよう、余裕のある人員配置

北欧では、介護士1人あたりの担当人数が少なく、ゆとりのある働き方ができるようになっています。

たとえば、スウェーデンでは介護士1人が3〜4人の入居者を担当 するのが一般的ですが、日本では 1人で5〜10人を担当することも少なくありません。

日本のワンオペ夜勤だと、一人の介護士が利用者さん20名を対応することも……

北欧の介護士の働き方

  • 1日の勤務時間は 8時間以内 で、残業はほとんどなし。
  • 週に1日は「研修日」 があり、介護士が新しいケア技術を学べる時間が確保されている。
  • 夜勤は 「仮眠をしっかり取れるシフト」 が組まれており、長時間労働にならない。
具体例:フィンランドの労働環境

エマさん(仮名)【35歳・介護士
エマさんは以前、日本の介護施設で働いていましたが、忙しすぎて 「利用者とゆっくり話す時間がなかった」 と感じていました。

フィンランドに移住後、介護士として働くようになり、1日のスケジュールに 「1人の入居者とじっくり向き合う時間」 があることに驚いたのです。

ポイント

  • 1人の介護士に負担が集中しないように 「人員配置」を工夫する
  • 研修時間を確保し、介護士のスキル向上を支援する

4. 介護士の給与と待遇は「専門職」として評価される

介護士の仕事は「専門職」として社会的に認められている

北欧では、介護士は 医療職と同じくらい専門性が高い仕事 として評価されており、給与や待遇も日本と比べて高く設定されています。

スウェーデンの給与事情

  • 介護士の平均年収は400万円〜500万円(日本は360万円程度)
  • 国家資格を取得すると、さらに給与がアップ
  • 夜勤手当や休日手当もしっかり支給される
具体例

リンダさん(仮名)【42歳・介護士】
リンダさんは、スウェーデンで介護士として働いています。

彼女は「介護の仕事は、単なる労働ではなく、専門的なスキルが求められる仕事だ と認められている」と話します。

日本のように「きつい仕事」と思われることは少なく、誇りを持って働ける環境 なのです。

ポイント

  • 給与が高く、社会的評価も高い
  • スキルアップの機会が豊富で、キャリアパスが明確

北欧型ケアと日本の現状比較

日本の介護の問題点の図解

北欧の認知症ケアは、「本人の尊厳を大切にし、自立を促す」ことを基本としています。

日本の介護も、建前では「尊厳を大切にする」「自立を支援する」という理念です。

しかし、実際は、

  • 転倒防止ため、歩ける方でも車椅子を使用
  • 利用者さんのペースよりも職員の都合を優先

日本では「安全管理」と「効率的なケア」が優先される傾向があります。

なぜなら、掲げる理念は立派だけど、人員体制が整っていないから。

転倒して骨折でもしたら、家族から何を言われるかわかりません。

裁判になり、損害賠償する事例もあります。

理念を掲げるのはカンタンなんですよね。

研修をして、「はい、やってください」と言われても「そんな余裕はない……」って感じです。

人員配置と業務の量を考えると無理ゲー。

介護おじさん

とはいえ、できない理由を探してばかりでは改善しないので、日々、やるべきことをコツコツとやるしかありません。一緒に頑張っていきましょう。

北欧型ケアの考え方が日本でどのように活かせるのか、具体例を交えて解説していきます。

北欧と日本の比較

比較項目日本北欧
施設の環境管理型(病院のような作り)生活型(家庭のような環境)
介護士の負担1人で多くの利用者を担当少人数担当で余裕がある
認知症ケア行動を制限しがち本人のペースに合わせる

北欧の認知症ケアは「本人らしく生きること」を最優先に考えています。日本の介護現場にも、この考え方を少しずつ取り入れることで、より良いケアが実現できるのではないでしょうか?

1. 施設のあり方:病院のような日本 vs. 家のような北欧

日本は「管理型」、北欧は「生活型」

日本の介護施設は、感染症対策や転倒防止を重視し、「安全第一」 の運営がされています。

そのため、病院のような環境になりがちです。

一方、北欧では「普通の暮らしを続けられる環境づくり」が重視され、施設が「家」のような作り になっています。

日本と北欧の施設のあり方比較

具体例:スウェーデンのグループホーム vs. 日本の特養

佐藤さん(85歳)(日本の特別養護老人ホームに入所)

  • 食事は決まった時間に全員一斉に提供される。
  • 転倒防止のため、歩行器や車椅子の使用を推奨され、「危ないからやめましょう」 と制限されることが多い。
  • 大人数のため、職員が個別に話す時間がほとんどない

エリックさん(87歳)(スウェーデンのグループホームに入所)

  • 朝食の時間は自由。自分のペースで好きなものを食べる。
  • 転倒防止よりも、「自分で歩ける能力を維持する」 ことを重視。スタッフが見守りながら歩く機会を確保する。
  • 少人数制(5〜10人) のため、スタッフとの会話が多く、個別のケアが可能。

ポイント

  • 日本:安全優先で管理型。効率的だが、「本人の意思」が尊重されにくい
  • 北欧:生活重視で自立支援型。個々のライフスタイルに合わせたケア が可能。

2. 介護士の働き方:多忙な日本 vs. 余裕のある北欧

日本は「マンパワー頼み」、北欧は「システムで支える」

日本の介護現場は、人手不足が深刻で、1人の介護士が 5〜10人の入居者を担当 することが一般的です。そのため、業務が「作業化」しやすく、入居者とじっくり向き合う時間が取れない ことが課題です。

一方、北欧では介護士1人あたり3〜4人 のケアを担当する仕組みになっており、ゆとりを持ったケア が可能になっています。

日本と北欧の介護士の業務負担の比較

具体例:日本の介護士 vs. フィンランドの介護士

鈴木さん(日本の介護士・特養勤務)

  • 朝の時間は大忙し。10人分の食事介助、トイレ誘導、着替えを1時間以内に終わらせなければならない
  • 「ゆっくり話す時間を作りたいけど、次の業務に追われてできない…」
  • 人手不足のため、夜勤は1人で30人の利用者を担当

マリアさん(フィンランドの介護士・グループホーム勤務)

  • 担当は3人。1人ずつ時間をかけて朝食を準備し、一緒に会話しながら食事をする。
  • 介護士が負担を感じないよう、夜勤時は2人体制 が基本。
  • 週に1日は研修日 があり、最新のケア技術を学ぶ時間が確保されている。

ポイント

  • 日本:介護士1人に対する負担が大きく、時間的余裕がない
  • 北欧:手厚い人員配置により、介護士がストレスなく働ける

3. 認知症のケア方法:「制限」する日本 vs. 「寄り添う」北欧

日本は「危険回避」、北欧は「その人のペースを大切にする」

日本では、認知症の方の行動を制限しがちです。

たとえば、徘徊(独り歩き)は「危険」とされ、行動を制限されることも。

一方、北欧では「徘徊」は「本人が何かを求めているサイン」と考えます。

そのため、自由に歩ける環境を作ることで、不安を減らす というアプローチを取ります。

日本は「危険回避」、北欧は「その人のペースを大切にする」図解

具体例:認知症の方の歩行サポート

日本の介護施設

  • 廊下を歩き回ることが増えたため、「転倒の危険がある」として、座っている時間が増えていった
  • 落ち着かず、不安が強くなり、夜も眠れなくなる。

ノルウェーのケア施設

  • 「歩くのが好き」と分かったため、庭に出られる環境を作り、スタッフが付き添いながら一緒に散歩をする
  • 歩いた後は気持ちが落ち着き、夜もぐっすり眠れるようになった。

ポイント

  • 日本:リスク回避を優先するため、本人の自由が制限されやすい
  • 北欧:「本人の欲求」を理解し、自由に行動できる環境を整える

4. 日本でも北欧型ケアを導入するには?

すぐに実践できる3つのヒント

北欧型ケアは、日本の介護現場にも活かせる部分があります。すぐに取り入れられるポイントを3つ紹介します。

欧州型ケアのポイントの図解
  1. 「できること」を大切にする
  2. 生活の中に「自然」を取り入れる
  3. 介護士の働きやすさを考える

① 「できること」を大切にする

  • 介護士が全てやるのではなく、本人の意思や能力を尊重する
  • 「自分でできること」は続けられるようにサポートする(例:食事の選択、簡単な家事)。

② 生活の中に「自然」を取り入れる

  • 散歩や庭いじりなど、外で過ごす時間を増やす
  • 植物や動物と触れ合う機会を作る(例:ガーデンセラピー、動物セラピー)。

③ 介護士の働きやすさを考える

  • 1人あたりの担当人数を減らし、時間的な余裕を作る工夫 をする。
  • 定期的な研修で最新の認知症ケアを学ぶ機会を増やす。

まとめ

今回は「北欧の認知症ケア」について解説しました。

おさらいすると次のとおり。

北欧の認知症ケア:基本理念

  • パーソン・センタード・ケア(PCC):一人ひとりの個性を尊重する
  • ノーマライゼーション:認知症でも社会の一員として暮らせる仕組み
  • QOL(生活の質)の向上:人生の楽しみを増やす

各国の取り組み

特徴具体例
スウェーデン小規模グループホームで個人を尊重生活の中で「できること」を続ける支援
デンマーク地域ぐるみの認知症ケアスーパーの店員が認知症対応を学ぶ
フィンランドテクノロジーと自然を活かすデジタル見守り+森林セラピー
ノルウェー医療と福祉が一体化音楽療法で認知症の進行を遅らせる

認知症ケア施設の特徴

特徴具体的な工夫効果
家庭的な環境を再現施設ではなく「家」のような空間を作る入居者が「ここで暮らせる」と感じる
小規模・ユニットケア5〜10人単位で生活し、決まったスタッフが対応個別ケアがしやすく、入居者が安心できる
自然や動物を活用ガーデンセラピー・動物セラピーを導入認知症の進行を和らげ、感情を活性化させる

北欧の介護士の役割・働き方

特徴具体的な工夫メリット
生活のサポーターできることは本人に任せる自立心を保つ
対話を重視まず信頼関係を築く精神的な安定につながる
労働環境に余裕がある1人あたりの担当人数を減らす介護士の負担が少なく、質の高いケアができる
専門職として評価高い給与・手厚い研修制度介護士が誇りを持って働ける

北欧と日本の比較

比較項目日本北欧
施設の環境管理型(病院のような作り)生活型(家庭のような環境)
介護士の負担1人で多くの利用者を担当少人数担当で余裕がある
認知症ケア行動を制限しがち本人のペースに合わせる

日本も北欧のような認知症ケアを取り入れて、頑張っているんですけど、正直まだまだです。

ぼくも日本の介護士として15年以上働いています。

声を大にして言いたい。

  • もっと手厚いケアをしたいけれど、人がいない!
  • 給料が低いから、介護業界に人が来ない!
  • もっと給料と人を増やして!

と、ネガティブなことを言っていてもダメですね。反省です。

できることをコツコツとやっていきましょう。

勉強熱心な、あなたみたいな介護士が一人でも増えますように。

では、また。

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この記事を書いた人

【介護業界15年目】
資格:介護福祉士、介護支援専門員、上級心理カウンセラー
施設のリーダー 採用から教育に関わる
モットー:やさしい介護
転職回数:5回

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