「また新人が辞めてしまった……」
「丁寧に教えているつもりなのに、なぜ続かないんだろう?」
介護現場でリーダーや新人教育を担当していると、こんな悩みを抱えることがあります。
新人が早く辞めると、
- また採用しなければならない
- 教育担当者の負担が増える
- 残った職員の勤務が厳しくなる
と、現場全体にも影響します。
ただ、新人が辞めたときに、
「最近の新人は根性がない」だけで終わらせてしまうのは、少しもったいないとぼくは思っています。
新人本人の事情で辞めることも、もちろんあります。
一方で、教え方や人間関係、入職前とのギャップなど、職場側が改善できる部分もあります。
ぼく自身、介護職を始めたばかりのころは、資格取得時に学んだ介護と実際の現場の違いにかなり戸惑いました。
現在は介護福祉士として15年以上働き、新人教育やリーダー業務も経験しています。
この記事では、最新の公的データとぼく自身の失敗も交えながら、
「新人が辞める原因を探す」
「職場で変えられることを見つける」
という順番で整理します。
- 新人の早期退職を「本人の根性」だけで説明しない
- 現場とのギャップ・教育・人間関係・仕事量・職場環境を分けて考える
- 新人には全部を一度に教えず「今覚えること」を絞る
- 新人の意見は、既存職員が職場を見直す材料にもなる
- 改善しても合わない場合は、無理に引き止めることが正解とは限らない
【筆者紹介】
介護業界15年以上の現役介護士(施設勤務)
※現場経験と公的データ(厚労省など)をもとに執筆しています。
【所持資格】
介護福祉士/ケアマネ/上級心理カウンセラー
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介護職の新人がすぐ辞める原因は1つではない
介護労働安定センターが2026年7月29日に公表した令和7年度「介護労働実態調査」では、訪問介護員と介護職員を合わせた離職率は12.4%でした。
これは介護職全体の数字であり、新人だけの離職率ではありません。
そのため「新人の○%がすぐ辞める」とは、この調査からは言えません。
一方、直前の仕事が介護関係だった人の退職理由を見ると、「職場の人間関係に問題があったため」が27.3%で最も多く、「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」が21.0%、「他に良い仕事・職場があったため」が17.2%と続いています。
介護労働安定センターも、職場の人間関係について、採用や職場定着を進めるうえで重要なポイントとしています。
数字だけで新人の退職理由を決めつけることはできません。
そこで現場では、
「本人に原因があるのか、教育や職場にも変えられる部分があるのか」
を一つずつ確認する必要があります。
ぼくが特に見直したいのは、次の5つです。
| 原因 | 新人側で起きやすいこと | 職場で確認したいこと |
|---|---|---|
| 現場とのギャップ | 想像以上の忙しさに戸惑う | 入職前に仕事内容を伝えていたか |
| 覚えることが多い | 頭がいっぱいになる | 優先順位を決めて教えているか |
| OJTが人によって違う | 誰を信じればよいか分からない | 教え方をある程度統一しているか |
| 人間関係 | 質問・相談しづらい | 声をかけられる人がいるか |
| 労働条件・職場環境 | 疲労や不満が蓄積する | 残業・休憩・シフトに無理がないか |
ここから詳しく見ていきます。
新人介護士がすぐ辞める5つの原因

原因1.入職前に想像していた介護と現場が違う
新人が最初につまずきやすいのが、理想と現場のギャップです。
ぼく自身、新人のころに強く感じました。
資格を取るときには、
- 本人へ説明する
- 意向を確認する
- 話を傾聴する
- 本人のペースを尊重する
といった介護の基本を学びます。
もちろん、どれも大切です。
ところが現場へ入ると、一人の利用者さんだけを見ているわけにはいきません。
ぼくが新人だったころは、複数の利用者さんを同時に見ながら、ナースコールや介助にも対応しなければなりませんでした。
夜勤に入れば、
「夜だから利用者さんは寝ている」
という新人時代のイメージもすぐに崩れました。
深夜でも眠らない方がいたり、何度もナースコールが鳴ったりします。
利用者さんの話をゆっくり聞きたいと思っていても、別の利用者さんから呼ばれる。
その状況に、ぼくは申し訳なさを感じたことがあります。
これは、
「教科書が間違っている」
という意味ではありません。
基本を守りながら、複数の利用者さんへ対応する現場独特の難しさがある
ということです。
新人には、そのギャップを知る時間が必要です。
「こんなの介護じゃない」
「自分には向いていない」
と本人が判断する前に、
「最初は全部できなくて大丈夫」
「今日はここまでできれば十分」
と到達地点を具体的に示した方が、仕事を整理しやすくなります。
新人自身が介護の基本を整理したい場合は、介護の基本5選|新人介護士が最初に覚えたい姿勢・声かけ・安全の考え方も参考にしてください。
原因2.覚えることが多すぎて頭がいっぱいになる
介護現場には、想像以上に「その職場でしか分からない情報」があります。
たとえば、
- 利用者さんの名前
- 居室
- 食事形態
- 排泄介助
- 移乗方法
- 入浴方法
- 記録方法
- ナースコール
- 物品の場所
- シフトごとの業務
などです。
施設によっては、さらに細かなルールがあります。
ぼくが同じ法人のデイサービスで働いたときも大変でした。
利用者さんは曜日によって変わります。
顔と名前だけではありません。
飲み物も、
- ブラックコーヒー
- 砂糖少なめ
- 砂糖とクリープ
- クリープだけ
- コーヒーではなく玄米茶
など、人によって違いました。
慣れるまでは、先輩や利用者さんから指摘されることもありました。
ベテランには当たり前でも、新人には大量の新情報です。
だからこそ、
「覚えられない=やる気がない」
とは限りません。



原因3.OJTで「全部教える」ことが新人を混乱させる
新人教育というと、
「なるべく丁寧に、たくさん教えなければ」
と思いがちです。
ぼくもそうでした。
以前、細かなことをよく質問してくれる新人を担当したことがあります。
使用している洗剤やおむつのメーカーなどについて聞かれ、そのたびにぼくは答えていました。
質問してくれているのだから、全部教えた方が親切だと思っていたからです。
ところが振り返ると、業務への影響が小さい情報まで覚えようとして、肝心の業務の流れや利用者さんへの対応が頭に入りにくくなっていたのです。
そこで、
「今は覚えなくてもいい」
と伝えるべきだったと反省しました。
新人教育では、
「何を教えるか」
だけでなく、
「今は何を教えないか」
も大切です。
新人教育は3段階くらいに分ける
たとえば、こんな分け方です。
最優先|安全に関わること
- 緊急時の連絡
- 転倒リスク
- 誤薬防止
- 一人で行ってはいけない介助
- 利用者さんごとの重要な注意点
次に覚える|毎日の業務
- 1日の流れ
- 記録
- 申し送り
- 排泄・食事・移乗など頻度の高い介助
後からでよい|細かな施設情報
- 使用物品のメーカー
- 低頻度の作業
- 細かなローカルルール
もちろん施設によって優先順位は変わります。
大切なのは、全部を同じ重要度で教えないことです。
新人本人にも、
「今週はこの3つができればOK」
と伝えておくと、自分の成長を確認しやすくなります。



原因4.先輩によって言うことが違い、質問しにくくなる
新人にとって困るのが、「昨日の先輩と今日の先輩で言っていることが違う」状態です。
介護は利用者さんの状態に合わせて対応を変えるため、すべての手順を完全に同じにすることはできません。
一方で、
Aさんは「こうして」
Bさんは「それは違う」
Cさんは「普通はこうでしょ」
となれば、新人は混乱します。
やがて、
「質問したら怒られるかもしれない」
「もう黙っておこう」
となってしまいます。
「新人が質問しない=一人でできるようになった」とは限りません。
聞くのを諦めている可能性もあります。
対応方法に違いがあるなら、
「この利用者さんは基本的にこの方法。ただし○○のときだけ変える」
のように、違う理由まで共有した方が理解しやすくなります。
介護方法に迷ったときの判断順序は、介護の基本5選でも詳しくまとめています。
原因5.仕事より人間関係で消耗している
介護はチームで働く仕事です。
だからこそ、人間関係が悪い職場では新人の負担も大きくなります。
令和7年度「介護労働実態調査」では、直前の仕事が介護関係だった人の退職理由として「職場の人間関係に問題があったため」が27.3%で最も多くなっています。これは新人限定の数字ではありませんが、職場定着を考えるうえで無視しにくい結果です。
特に確認したいのは、
- 質問すると嫌な顔をされる
- 人前で強く叱られる
- 職員同士の悪口が多い
- 新人だけ雑用を押しつけられる
- 分からないことを聞ける人がいない
といった状態です。
仕事が難しくても、
「この人になら聞ける」
と思える相手が一人いるだけで違います。
反対に、介護そのものは好きでも、人間関係だけで辞めたくなることがあります。
人間関係の問題が大きい場合は、介護職の人間関係がつらい原因7選と対処法も参考にしてください。
「最近の新人はすぐ辞める」で終わらせない
新人が辞めると、
「昔はもっと厳しかった」
「自分たちの新人時代は耐えた」
と言いたくなることもあると思います。
ぼくも15年以上介護現場で働いてきたので、その感覚がまったく分からないわけではありません。
ただ、
自分たちが耐えたことと、今の新人にも耐えさせることは別です。
新人のころだからこそ見えるものもあります。
ぼくは現在、新人の声をできるだけ聞くようにしています。
介護職を長く続けていると、自分たちには当たり前になっていることが増えるからです。
たとえば、
「なぜこの業務をするんですか?」
「どうしてこの方法なんですか?」
と聞かれたとき、
「昔からそうだから」
しか答えられないなら、業務そのものを見直す機会かもしれません。
新人の疑問は、教育上の問題だけでなく、職場改善のヒントにもなります。
新人が定着しやすくなる5つの対策



新人の退職を完全になくすことはできません。
どれだけ環境を整えても、仕事が合わない場合や、家庭事情など職場では変えられない理由もあります。
それでも、職場側ができることはあります。
1.最初に「今覚えること」を3つ程度へ絞る
初日から大量のマニュアルを渡して、「分からなければ聞いて」だけでは、新人はどこから覚えればいいのか迷います。
そこで、
「今週はこの3つ」
「一人でできるようになるのはここまで」
など、短い期間の目標を決めます。
できたら次へ進む。
この繰り返しの方が、成長を実感しやすくなります。
2.安全に関わることと、後回しにできることを分ける
新人教育では、すべてを同じ強さで注意しないことも大切です。
安全に関わることは、その場で伝える必要があります。
一方、
「備品の並べ方」
「先輩独自の細かなやり方」
まで同じ強さで注意されたら、何が本当に重要なのか分からなくなります。
「これは事故につながるから重要」
「これは後で覚えれば大丈夫」
と理由も一緒に伝えてください。
3.質問できる人を明確にする
「誰にでも聞いていいよ」
は、一見親切です。
でも新人からすると、
「結局、誰に聞けばいいの?」
となることがあります。
教育担当者がいるなら、
「基本は○○さんへ」
「○○さんが休みなら△△さんへ」
と決めておく方が質問しやすくなります。
4.短い面談を定期的にする
大げさな面談でなくて構いません。
たとえば、
- 今困っていること
- 教わっていないこと
- 一人で不安な業務
- 人によって言われることが違う業務
を10分程度確認します。
「何か困っている?」
だけでは、
「大丈夫です」
で終わることがあります。
「一人でやるのがまだ不安な介助はある?」のように具体的に聞く方が話しやすくなりますよ。
5.本人の努力だけで解決できない問題は職場側で直す
新人が困っていることを聞いて、「もっと頑張って」ですべて返してしまうと、面談の意味がありません。
たとえば、
- 教える人によって介助方法が違う
- 休憩が取れない
- 特定の先輩から強く当たられる
- 聞いていない業務を突然任される
といった問題は、本人だけでは解決しにくいものです。
職場側で調整できるなら、調整する。
ここは曖昧にしない方がいいとぼくは思います。
新人が辞めたいと言ったら、無理に引き止めればいいわけではない
新人から、
「辞めたいです」
と言われたとき、まず理由を聞くことは大切です。
ただし、
何が何でも引き止めることが正解とは限りません。
たとえば、
「一つの介助が怖い」
なら、再教育や同行で改善できるかもしれません。
「教えてもらえない」
なら、OJT担当を変える方法もあります。
一方、
「介護そのものが自分には合わなかった」
「家庭との両立が難しい」
など、本人の価値観や生活に関わる理由もあります。
そんなときまで、
「せっかく入ったんだから」
「もう少し我慢して」
と押し続ける必要はないと思っています。
本人と職場の双方が、
何なら変えられるのか。何は変えられないのか。
を分けて考える方が現実的です。
新人本人が「辞めたい」と感じてこの記事を読んでいるなら
ここまで教育担当者向けに書いてきましたが、新人介護士さん本人が検索しているかもしれません。
仕事を始めたばかりなのに、
「もう辞めたい」
と思うと、
「自分は根性がないのかな」
と悩むことがあります。
でも、まず分けて考えてみてください。
もう少し様子を見てもよいケース
- 覚えることが多くて混乱している
- 介助にまだ自信がない
- 新しい環境に慣れていない
- 特定の業務だけ苦手
こうした問題なら、経験や教育で変わる可能性があります。
一方、
職場環境を見直した方がよいケース
- 質問しても教えてもらえない
- 人格を否定するような叱責が続く
- サービス残業が常態化している
- 休憩がほとんど取れない
- 相談しても改善されない
など、個人の努力だけでは変えにくい問題もあります。
介護業界にも職場による違いがあります。
ぼく自身、働く環境が大きく違う職場を経験してきました。
職場環境については、介護業界のホワイト企業とは?現役介護士が実体験と見分け方を解説も参考にしてください。
もし、
「今すぐ転職するつもりはない。でも他の職場も見てみたい」
という段階なら、転職を決める前に求人条件だけ比較する方法もあります。
介護職におすすめの転職エージェント5社比較では、職場環境や残業などを確認する方法もまとめています。
転職するかどうかは、その後で決めれば十分です。
新人教育チェックリスト
新人が辞めそうになってから慌てるより、普段から次を確認してみてください。
教育
- □ 今週覚えてほしいことが明確になっている
- □ 安全に関わる業務を優先している
- □ 一度に情報を詰め込みすぎていない
- □ 教える職員によって説明が大きく変わっていない
人間関係
- □ 新人が質問できる担当者がいる
- □ 人前で必要以上に叱責していない
- □ 新人だけが孤立していない
- □ 職員同士の悪口が常態化していない
職場環境
- □ 休憩を取れている
- □ 無理な独り立ちを求めていない
- □ 新人の意見を聞く機会がある
- □ 困りごとを伝えた後に改善策を検討している
全部できている必要はありません。
一つでも、
「ここは直せそう」
という項目があれば、そこから始めれば十分です。
FAQ|介護職の新人がすぐ辞めるときによくある疑問
新人が1か月や3か月で辞めるのは珍しいですか?
介護職全体の離職率については公的調査がありますが、「入職1か月以内」「3か月以内」の新人だけを対象にした全国共通の離職率として、今回確認した令和7年度介護労働実態調査では示されていません。
そのため「新人は3か月以内に○%辞める」といった数字は、根拠を確認せず使わない方が安全です。
教えてもすぐ忘れる新人にはどう対応すればよいですか?
最初に「覚える優先順位」を確認してみてください。
ぼく自身、質問されたことをすべて教えてしまい、新人に必要以上の情報を与えていたと反省した経験があります。
安全に関わること、毎日使うこと、後でよいことに分けると整理しやすくなります。
新人を叱ってはいけませんか?
危険な介助など、その場で止めなければならないことは明確に伝える必要があります。
ただし、
「なんでこんなことも分からないの?」
ではなく、
「ここは転倒につながるので、この方法で確認してください」
のように、人ではなく行動と理由を伝える方が修正しやすくなります。
新人が辞めたいと言ったら引き止めるべきですか?
まず理由を確認します。
教育や人間関係など、職場側で変えられる問題なら改善案を提示できます。
一方、本人の価値観や家庭事情など職場では変えられない理由まで無理に引き止める必要はないでしょう。
まとめ|新人がすぐ辞めるなら「本人」と「職場」を分けて考える
介護職の新人がすぐ辞める理由は、一つではありません。
- 想像していた介護とのギャップ
- 覚えることの多さ
- OJTの問題
- 人間関係
- 労働条件や職場環境
などが重なる場合があります。
もちろん、すべてを職場の責任にする必要もありません。
本人の事情や適性で辞める場合もあります。
ただ、
「最近の新人はすぐ辞めるから仕方がない」
で終わらせる前に、
「職場側で変えられることはなかったか?」
を一度だけ確認してみてください。
ぼく自身、新人教育を経験して、「丁寧に全部教えることが、必ずしも親切ではない」と気づきました。
今なら、
「今日はここまで覚えれば大丈夫」
と、新人が迷わない範囲を作ることを優先します。
まず明日、新人と10分だけ話してみてください。
聞くことは2つで十分です。
「今、一番困っていることは何?」
「一人でやるのがまだ不安な仕事は何?」
そこから、新人教育を見直すヒントが見つかるかもしれません。
知りたい情報がすぐに見つかる
「辞める」か「我慢」の二択じゃない。
心を守りながら働きませんか?
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