介護の申し送りで何を伝える?|話す順番・コツ・例文10選

介護の申し送りで何を伝える?|話す順番・コツ・例文10選

「申し送りで、何をどこまで伝えればいいかわからない」

「話しているうちに長くなって、結局何が大事なのかわからなくなる……」

介護現場で働き始めたばかりのころは、申し送りを難しく感じる方も多いと思います。

ぼくも新人のころは、「これは伝えるべき?」「記録に書いてあるから言わなくていい?」と迷うことがありました。

結論からいうと、勤務中に起きたことを全部話す必要はありません。

まず優先したいのは、「次の勤務者が知らないと、対応に困る・ケアが変わる・安全に影響する情報」です。

基本は、次の5つの順番で整理すれば十分です。

申し送りの基本5ステップ

  1. 誰のことか
  2. いつ起きたか
  3. 何があったか
  4. どう対応したか
  5. 次の勤務者に何をしてほしいか

迷ったら、「普段と違うこと」「未完了のこと」「次の勤務者の対応が変わること」を優先しましょう。

この記事では、介護業界で15年以上働いてきたぼくの経験も交えながら、申し送りで何を伝えるのか、話す順番、短く伝えるコツ、場面別の例文までわかりやすく解説します。

新人の方は、新人介護士が最初に覚えたい介護の基本5選もあわせて参考にしてください。

【介護の申し送り「5ステップ」図解】

【筆者紹介】
介護業界15年以上の現役介護士(施設勤務)
※現場経験と公的データ(厚労省など)をもとに執筆しています。
【所持資格】
介護福祉士/ケアマネ/上級心理カウンセラー

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目次

介護の申し送りは「次の勤務者が困らないため」の情報共有

申し送りの目的は、自分が勤務中にしたことを全部報告することではありません。

次の勤務者が必要な情報を受け取り、ケアを途切れさせずに続けられることが大切です。

厚生労働省の「情報共有の工夫」でも、利用者さんの状況を把握し、緊急性や重要性を考慮して職員間で共有することの大切さが示されています。

さらに、「どのような情報を、誰に、いつ共有するのか」を整理することもポイントとして挙げられています。

つまり、申し送りで大切なのは情報量ではなく、優先順位です。

申し送りするか迷ったときの判断基準

  • 普段と違う変化があった
  • 事故・ヒヤリハットなど安全に関わる
  • 対応がまだ終わっていない
  • 医師・看護師・上司などから指示が出ている
  • 次の勤務者が知らないと対応が変わる

介護の申し送りで伝える内容7つ

施設によって申し送りのルールは違いますが、主に次のような情報を整理すると抜け漏れを防ぎやすくなります。

伝える内容具体例
体調・状態の変化発熱、痛み、咳、嘔吐、表情、歩行状態など
食事・水分普段より摂取量が少ない、むせがあった、食事を拒否したなど
排泄排便状況、下痢、便秘、尿量や排尿状況の変化など
睡眠・行動夜間覚醒、離床、普段と違う言動など
事故・ヒヤリハット転倒、転落、誤薬、皮膚トラブルなど
本人・家族からの連絡要望、受診予定、外出予定、持ち物など
未完了・次勤務への依頼再確認が必要なこと、指示されている観察・対応など

ここで大切なのは、「変化があった情報」と「次の人が行動するための情報」を優先することです。

反対に、記録ですぐ確認でき、普段と変わらず、次の勤務者の対応にも影響しない情報まで口頭ですべて読み上げると、本当に重要な情報が埋もれてしまいます。

ただし、どこまで口頭で伝えるかは施設のルールを優先してください。

【申し送りで優先して伝える情報の図解】

申し送りの話す順番は「誰→いつ→事実→対応→次の行動」

申し送りが長くなってしまう人は、内容よりも話す順番を決めてしまうのがおすすめです。

ぼくなら、次の5つで整理します。

  1. 誰:○○さん
  2. いつ:15時ごろ
  3. 事実:何があったか
  4. 対応:誰に報告し、何をしたか
  5. 次:次の勤務者に確認・対応してほしいこと

そのまま使える申し送りテンプレート

「○○さん。○時ごろ、○○がありました。○○で対応し、現在は○○です。次の勤務帯では○○をお願いします。」

たとえば、「Aさん、夕食をあまり食べませんでした」だけでは、受け手は状況を判断しにくいですよね。

「Aさん、18時の夕食は主食2割・副食3割でした。普段は8割ほど召し上がる方です。本人から『食欲がない』との発言があり、看護師へ報告済みです。夜勤帯でも食事・水分や体調の変化を確認してください」のようにすると、次に何を確認するのかまで伝わります。

複雑なケースではSBARを使う方法もある

報告を整理する方法として「SBAR」が使われることもあります。

  • S(Situation):今、何が起きているか
  • B(Background):必要な背景情報
  • A(Assessment):観察した状態・変化
  • R(Recommendation):相談したいこと・次に必要な対応

ただし、毎回SBARで申し送りしなければいけないわけではありません。

まずは「誰→いつ→事実→対応→次の行動」の5つを覚え、情報が多いケースや緊急性のある報告を整理するときにSBARを使うくらいでいいと思います。

わかりやすい申し送りにする5つのコツ

1.結論から伝える

最初に「何の話なのか」を伝えます。

「Aさんの食事量についてです」「Bさんの転倒についてです」と先に言えば、聞く側も話のポイントをつかみやすくなります。

長い前置きから始めるより、結論→必要な詳細の順番がおすすめです。

2.「感じたこと」ではなく「見た事実」を伝える

申し送りでは、事実と自分の解釈を分けます。

伝わりにくい表現事実を伝える表現
なんとなく元気がない昼食時、普段より会話が少なく、食事は2割だった
認知症がひどくなった16時以降、「家に帰る」と玄関へ3回向かった
機嫌が悪い声をかけた際、「今は話したくない」と発言された
歩行が危ない立ち上がり時にふらつきがあり、職員が支えた

原因や診断を介護士が決めつけるのではなく、「何を見たのか」を共有するのが基本です。

3.「いつもとの違い」を入れる

申し送りは、普段の状態と比べると一気にわかりやすくなります。

たとえば「夕食3割」だけでは、それが多いのか少ないのかわかりません。

「普段は8割ほど食べる方ですが、今日は3割だった」と伝えれば、変化がすぐに伝わります。

4.対応済みか、まだ対応が必要かを伝える

申し送りで抜けやすいのが「その後どうなったか」です。

「発熱がありました」で終わるのではなく、誰に報告したのか、どのような指示が出ているのか、次の勤務者に何を確認してほしいのかまで伝えます。

注意

服薬、発熱、転倒後の観察など、医療的な判断を介護士が自己判断で決めるのは避けましょう。医師・看護師の指示や施設の手順がある場合は、指示された内容を正確に申し送ることが大切です。

5.口頭だけに頼らず記録にも残す

重要な情報を口頭で伝えて終わりにすると、「言った・聞いていない」になりやすくなります。

緊急性の高い情報は必要な相手へ速やかに報告し、必要な内容は施設のルールに沿って記録にも残しましょう。

詳しい書き方は、介護記録の書き方と例文で解説しています。

ぼくの現場で改善したこと

ぼくの職場では以前、利用者さんの容態変化や連絡事項を紙の業務日報に手書きし、さらにパソコンの介護記録にも入力していました。

同じ内容を二重で記録していたため、業務を見直して紙の日報を廃止。ぼくの職場では、その後も連絡漏れなどのトラブルなく経過しています。

大切なのは「書類を増やすこと」ではなく、必要な情報が、必要な人へ確実に届く仕組みをつくることだと感じています。

厚生労働省も、ICTの活用によって転記作業を減らし、報告・申し送りの効率化や情報共有のタイムラグ解消につなげる考え方を紹介しています。

介護の申し送りで避けたいNG例

申し送りでは、次のような伝え方に注意しましょう。

NG例改善例
「Aさん、なんか元気ないです」「Aさん、昼食2割。普段より会話が少なく、13時から居室で休まれています」
「Bさん、また転びました」「Bさん、14時10分に居室内で床に座っているところを確認。看護師・上司へ報告し、施設手順に沿って対応済みです」
「Cさん、わがままで入浴拒否です」「Cさん、『今日は入りたくない』との発言あり。時間を空けて再度声をかけましたが希望は変わらず、本日は入浴していません」
「薬を飲んでいないので、あとで飲ませてください」「夕食後薬が未服用です。看護師へ報告済みで、今後の対応は○○との指示を受けています」

特に「元気がない」「機嫌が悪い」「わがまま」などの主観だけで終わらせないことがポイントです。

無料で使える「言い換え」ツール

介護現場で使える申し送り例文10選

ここからは、介護現場でよくある場面を想定した例文を紹介します。

数値や対応方法はあくまで例です。実際には、利用者さんの状態、施設ルール、医師・看護師などからの指示に合わせて変更してください。

【申し送りのNG例・OK例比較図】

1.発熱・体調変化

「Aさん、15時に体温37.8℃。普段は36℃台です。咳もみられたため看護師へ報告し、指示を受けています。夜勤帯でも指示内容に沿って状態の確認をお願いします。」

2.食事量が少なかった

「Bさん、夕食は主食2割・副食3割でした。普段は8割ほど召し上がります。本人から『食欲がない』との発言がありました。水分摂取量と体調の変化もあわせて確認をお願いします。」

3.排泄状態に変化があった

「Cさん、9時と14時に軟便がありました。本日2回です。普段と違うため記録し、看護師にも報告しています。以降の排便状況を確認してください。」

4.転倒・転落があった

「Dさん、14時10分に居室内の床に座っているところを発見しました。すぐに看護師と上司へ報告し、施設の事故対応手順に沿って対応しています。以降は指示内容に沿った確認をお願いします。」

5.服薬できなかった

「Eさん、夕食後薬の服用を拒否され未服用です。看護師へ報告し、○○との指示を受けています。自己判断で対応せず、指示内容を確認してください。」

6.入浴を拒否された

「Fさん、入浴前に『今日は入りたくない』との発言がありました。時間を空けて再度お声がけしましたが希望は変わらず、本日は入浴していません。次回の入浴時に改めて本人の希望を確認してください。」

7.帰宅願望など普段と違う行動があった

「Gさん、16時ごろから『家に帰る』と話され、玄関へ3回向かわれました。居室へ無理に誘導せず、お話を聞きながら一緒にホールへ移動すると落ち着かれています。夕方以降の様子を確認してください。」

8.家族から要望があった

「Hさんの長女様から、次回受診の日程について確認したいと連絡がありました。担当職員へ共有済みですが、まだ返答できていません。担当者から連絡をお願いします。」

9.夜間に眠れていなかった

「Iさん、1時から3時30分ごろまで覚醒され、居室とホールを行き来されていました。3時30分以降は入床されています。日中の眠気や体調も確認してください。」

10.大きな変化がなかった

「Jさん、本日は特記事項ありません。食事・排泄・活動の様子も普段と大きな変化はありませんでした。」

「特変なし」で済ませてよい範囲は施設によって異なるため、決められた確認事項や申し送り項目がある場合は、そちらを優先してください。

新人介護士は「全部覚えて話そう」としなくていい

新人のころは、利用者さんの情報も施設のルールもまだ頭に入りきっていません。

その状態で「完璧に申し送ろう」とすると、余計に頭が真っ白になることがあります。

まずは、勤務中に気になったことをメモして、申し送り前に次の3つへ絞ってみてください。

  • 普段と違ったこと
  • 対応が終わっていないこと
  • 次の人にしてほしいこと

これだけでも、かなり整理しやすくなります。

それでも「これは申し送るべき?」と迷ったら、先輩へ確認すれば大丈夫です。

ぼくは、わからないことを確認できるのも介護士に必要なスキルだと思っています。介護職に必要な力を整理したい方は、介護士に必要なスキル10選も参考にしてください。

申し送りは、新人だけの問題ではありません

「こんなことを聞いたら怒られるかも」「ミスを報告したら責められる」と感じる職場では、大事な情報ほど言い出しにくくなります。

ぼく自身、リーダーとして働くときは、ミスを頭ごなしに責めず、まず話を聞くことを心がけています。

情報共有は、伝える側の技術だけでなく、報告・相談しやすい職場の雰囲気も大切です。

介護の申し送りでよくある質問

申し送りは何分くらいで終わらせればいいですか?

施設の利用者数や申し送り方法によって違うため、一律の時間はありません。

時間を短くすることだけを目的にせず、重要な情報が抜けないことを優先しましょう。そのうえで、普段と変わらない情報を簡潔にし、記録で確認できる内容との重複を減らすと短縮しやすくなります。

「特変なし」だけでも大丈夫ですか?

施設のルールによります。「特変なし」とだけ伝えるのではなく、何を確認したうえで変化がなかったのかが必要なケースもあります。

最低限共有する項目が決められている場合は、そのルールに従ってください。

SBARを必ず使ったほうがいいですか?

必須ではありません。

まずは「誰→いつ→何があった→どう対応した→次に何をしてほしい」を押さえれば十分です。情報が多いケースや報告内容を整理したい場合に、SBARを補助的に使うとよいでしょう。

申し送りと介護記録は同じですか?

役割は少し違います。

申し送りは、次の勤務者などへ必要な情報を引き継ぐこと。介護記録は、利用者さんの状態や行ったケアを継続的に残すものです。

同じ内容が含まれることもありますが、むやみに二重入力を増やすのではなく、施設内で「何を・どこに・誰へ共有するか」を整理しておくことが大切です。

自分で判断できない情報はどうすればいいですか?

自己判断せず、先輩・リーダー・看護師など適切な職員へ確認してください。

とくに利用者さんの体調変化や服薬、転倒後の対応などは、「たぶん大丈夫」で済ませないことが大切です。

まとめ|申し送りは「次の人が何をすればいいか」まで伝える

介護の申し送りで大切なのは、たくさん話すことではありません。

「次の勤務者が知らないと困る情報」を、短く・具体的に渡すことです。

迷ったら、次の5つに戻ってください。

  1. 誰のことか
  2. いつ起きたか
  3. 何があったか
  4. どう対応したか
  5. 次に何をしてほしいか

最初から完璧にできなくても大丈夫です。

次の勤務では、まずひとつの申し送りだけでも、この5つの順番で話してみてください。型を繰り返しているうちに、必要な情報を選ぶ感覚も身についてきます。

申し送りとセットで介護記録の書き方も整理しておくと、さらに情報共有がラクになります。

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この記事を書いた人

【介護業界15年以上】
資格:介護福祉士、介護支援専門員、上級心理カウンセラー
施設のリーダーで採用から教育に関わる
現役介護士ならではの「体験談」や「介護現場の声」を発信しています。
「ブラック企業」から「ホワイト企業」に転職した経験を活かし、転職に失敗しない方法も紹介しています。

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