介護現場で、利用者さんが何度もおむつを外してしまう。
気づいたときには衣類やシーツが尿で汚れていて、交換や清掃に追われる……。
夜勤中に繰り返されると、対応する介護士にとっても大きな負担になりますよね。
しかし、おむつ外しへの対策は、おむつを外せないようにすることではなく、外したくなる理由を探して、その原因を減らすことが基本です。
ぼくは15年以上、介護現場で働いています。実際に、夜間のおむつ外しが続いた利用者さんに対して、排泄の確認回数を増やしても改善せず、日中の過ごし方を見直したことで回数が減った経験があります。
この記事では、おむつ外しの原因と5つの対策、実際の改善事例、身体拘束になり得るNG対応まで解説します。
この記事の結論|おむつ外しを減らす5つの方法
- 皮膚のかゆみ・蒸れ・痛みなどの不快感を確認する
- おむつや尿とりパッドの種類・サイズを見直す
- 排泄パターンを把握してトイレ誘導を調整する
- 日中の活動と夜間の睡眠環境を整える
- 本人の気持ちに合わせた声かけとチーム対応を行う
おむつを外してしまう5つの原因
まず確認したいのは、「なぜ外したのか」です。
認知症の利用者さんに多い悩みとして取り上げられますが、認知症だから外すと決めつけてはいけません。皮膚の不快感や排泄の意思、衣類への違和感など、複数の要因が考えられます。
| 考えられる原因 | 確認すること |
|---|---|
| 蒸れ・かゆみ・痛み | 皮膚の赤み、湿り、発疹、圧迫 |
| 尿意・便意 | 排泄時刻、失禁の状況、便秘 |
| おむつへの違和感 | サイズ、厚み、ずれ、食い込み |
| 眠れない・落ち着かない | 睡眠状況、日中の活動、環境 |
| 不安・羞恥心・習慣 | 本人の言葉、表情、生活歴 |
たとえば、濡れたパッドが不快で外す人もいれば、トイレに行こうとして下着を脱ぐ感覚で外している人もいるかもしれません。
大切なのは、本人の行動だけを見るのではなく、外す前後の状況まで観察することです。
おむつ外しを減らす5つの対策

ここからは、介護現場で取り組みやすい対策を順番に紹介します。
1.皮膚のかゆみ・蒸れ・痛みを確認する
最初に確認したいのは、おむつの中の不快感です。
パッドが濡れていたり、皮膚が蒸れていたりすると、利用者さんが気になって触る可能性があります。強いかゆみや痛みがあれば、外そうとする理由にもなり得ます。
不快感の確認ポイント
- 陰部や臀部に赤み・ただれ・発疹がないか
- おむつやパッドが濡れたままになっていないか
- ゴムやギャザーが食い込んでいないか
- 交換や清拭の際に痛がる様子がないか
皮膚に異常があれば、看護師へ報告して必要なケアを相談しましょう。清潔保持だけでなく、交換時の摩擦や強いこすり洗いにも注意が必要です。
また、おむつ外しが急に増えた場合は、皮膚トラブルだけでなく、痛み、便秘、排尿時の異常、体調変化なども確認します。発熱や排尿時痛、急な意識・行動の変化などがあれば、看護師や医師へ速やかに相談してください。
2.おむつや尿とりパッドを本人に合わせて見直す
おむつが合っていないことも、不快感の原因になります。
たとえば、吸収量が多いという理由だけで厚手のパッドを使用すると、ごわつきや違和感につながることがあります。一方、吸収量が不足すれば、濡れや漏れが起こりやすくなります。
次のポイントを見直してみましょう。
おむつの見直しポイント
- 体型に合ったサイズを選んでいるか
- パッドが重なって厚くなりすぎていないか
- しわやずれ、ギャザーの折れ込みがないか
- 本人の尿量と交換間隔に吸収量が合っているか
- 本人の動作能力に適したパンツ型・テープ型を選んでいるか
ただし、外されにくくするためにテープを必要以上にきつく留めるのは避けましょう。痛みや皮膚トラブルにつながるおそれがあります。装着方法は製品の説明に従い、本人の状態に合わせて調整してください。
紙おむつの種類や、パンツ型・テープ型・尿とりパッドの使い分けについては、高齢者用紙おむつの選び方で詳しく解説しています。
3.排泄パターンに合わせてトイレ誘導を調整する
「おむつを外した」という行動の背景に、尿意や便意がある可能性も考えましょう。
本人がトイレに行きたいと思っていても、うまく言葉で伝えられないことがあります。また、おむつを外すことが、本人なりの排泄行動になっている場合もあります。
そのため、まずは排尿・排便の時刻と、おむつ外しが起きた時刻を照らし合わせることが大切です。
たとえば、毎晩ほぼ同じ時間帯に起きるのであれば、その時間の前に本人の様子を確認し、安全にトイレへ行ける方には声をかける方法が考えられます。
ただし、決まった時間に全員を一律に起こす必要はありません。睡眠を妨げたり、夜間の転倒リスクが高まったりする可能性もあるため、本人の希望、身体状況、排泄パターンを踏まえて検討します。
トイレ誘導を拒否された場合も、無理に連れて行くのではなく、「お手洗いに行きますか?」「今はこのまま休みますか?」と選択できる形で声をかけましょう。
4.日中の活動と夜間の睡眠を見直す
おむつ外しは、排泄や皮膚の問題だけとは限りません。夜間に眠れないことや、生活リズムの乱れが関係している可能性もあります。
ここで、ぼくが実際に経験した事例を紹介します。
現場で経験したこと|夜間のおむつ外しが減った事例
アルツハイマー型認知症のある90代の男性利用者さんが、夜間にテープ止めのおむつを外してしまうことがありました。
衣類やラバーシーツが汚れてしまうため、最初は排尿後の不快感が原因ではないかと考えました。
そこで、夜間のパッド確認を2回から4回に増やしてみました。しかし、それでもおむつ外しによる汚染は続きました。
その後、看護師、ケアマネジャー、相談員、担当医と相談し、夜間に熟睡できていないことが関係しているのではないかと考えました。
日中はできるだけベッドから離れて生活し、体操やレクリエーションにも参加していただくようにしました。
すると、以前は週2〜3回あった夜間のおむつ外しによる汚染が、月1〜2回に減りました。
ゼロになったわけではありません。それでも、確認回数を増やすだけでは変わらなかった状況に、改善が見られた事例です。
この事例からぼくが学んだのは、目の前の行動だけを止めようとしても、原因に合っていなければ改善しないことがあるということです。
もちろん、日中の活動を増やせば必ず改善するという意味ではありません。今回も、夜間の睡眠状態が原因だったと医学的に確定したわけではありません。
活動量の調整は、本人の体力、持病、疲労、転倒リスクなどを踏まえて、無理なく行う必要があります。
日中の過ごし方、昼寝の時間、夜間の騒音や照明なども含め、チームで見直してみましょう。
5.本人の気持ちに合わせて声をかける
おむつを触っている利用者さんを見つけたとき、「外しちゃだめですよ」と注意したくなる場面もあると思います。
しかし、本人には何か理由があるかもしれません。まずは不快感や排泄の希望を確認することが先です。
たとえば、次のように声をかけてみます。
「どこか気持ち悪いところはありませんか?」
「お手洗いに行きたいですか?」
「お洋服が気になりますか?一緒に確認しましょうか」
大切なのは、言葉をかけること自体ではなく、本人の反応に合わせて対応を変えることです。
説明が長いと混乱する方には短く伝える。触れられることが苦手な方には、何をするのか説明してから介助する。本人が嫌がる場合は、その理由も確認します。
本人が好きな活動や安心できる物を取り入れることが役立つ場合もあります。ただし、気をそらすだけで排泄や痛みのサインを見逃さないようにしましょう。
利用者さんとの関わり方を見直したい方は、ユマニチュードの4つの柱と実践方法も参考にしてください。
おむつ外しを発見したときの対応手順
おむつ外しを予防することも大切ですが、実際に起きたときの対応も重要です。
衣類やシーツが汚れていても、慌てて叱ったり、本人の手を払いのけたりしないようにしましょう。
発見したときの5ステップ
- 本人の安全を確認し、転倒・転落や体調の変化がないか見る
- 落ち着いた声で話しかけ、プライバシーを確保する
- 皮膚や排泄物の状態を確認し、必要な清潔ケアを行う
- 衣類や寝具を整え、安心して過ごせる状態にする
- 発生時刻と状況を記録し、必要に応じて看護師やチームへ報告する
皮膚の損傷、出血、強い痛み、発熱などがあれば、通常のおむつ交換だけで済ませず、施設の報告手順に従って看護師や医師へ相談します。
また、夜間に何度も起こる場合は、対応した職員だけで抱え込まないことも大切です。
おむつ外し対策で注意したい身体拘束



おむつ外しへの対策で、特に注意したいのが身体拘束です。
厚生労働省の「身体拘束廃止・防止の手引き」では、脱衣やおむつ外しを制限するために介護衣(つなぎ服)を着せる行為が、身体拘束に該当する行為の具体例として示されています。
注意|「外せない工夫」が身体拘束になることがあります
おむつを外せないようにする目的で、つなぎ服、背中側で留める衣類、手指の動きを制限するミトンなどを安易に使用してはいけません。
パジャマや腹巻きなどの一般的な衣類でも、使用目的や実際の状態によっては、本人の脱衣・おむつへのアクセスを制限することにつながります。
「衣類だから身体拘束ではない」とは判断できません。本人の行動の自由を制限していないかを確認する必要があります。
身体的拘束等は原則として禁止されています。緊急やむを得ない場合に該当するかを判断する際も、切迫性・非代替性・一時性の3要件と適正な手続きが重要です。
本人や家族が同意したという理由だけで、身体拘束が認められるわけではありません。施設・事業所として代替方法を検討し、必要な手続き、記録、継続的な見直しを行う必要があります。
おむつ外しが続く場合でも、まずは不快感、排泄、睡眠、生活環境などの原因をチームで検討しましょう。
参考:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和7年3月・PDF)
改善しないときは記録を残してチームで原因を探す
対策を試しても改善しない場合は、同じ対応を繰り返す前に、記録を振り返ってみましょう。
「またおむつを外していた」という記録だけでは、次に何を変えればよいのか判断しにくいためです。
記録する際は、本人の行動だけでなく、外す前の状態や対応後の変化も残すと検討しやすくなります。
| 記録項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 日時 | 何時ごろ起きたか |
| 直前の様子 | 覚醒、そわそわ、尿意の訴えなど |
| おむつの状態 | 濡れ、ずれ、汚れ、サイズ |
| 身体の状態 | 皮膚、痛み、体調の変化 |
| 対応 | 交換、声かけ、排泄支援など |
| その後 | 反応や再発の有無 |
この記録をもとに、看護師、介護士、ケアマネジャーなどの関係職種で情報を共有します。
ぼくが経験した事例でも、夜間の確認回数を増やすだけでは改善せず、複数の職種で相談したことが、別の対策を考えるきっかけになりました。
一人の職員の工夫に頼るのではなく、効果を確認しながらケアを見直すことが大切です。
おむつ外しに関するよくある質問
認知症の方がおむつを外すのは仕方がないことですか?
認知症の影響が関係している可能性はありますが、それだけで原因を決めつけることはできません。皮膚の不快感、尿意・便意、製品の違和感、睡眠の問題など、改善できる要因が隠れている場合もあります。
夜間に何度もおむつを外す場合は、確認回数を増やした方がよいですか?
排泄の状況によっては確認間隔の調整が必要ですが、回数を増やせば必ず改善するわけではありません。頻回な確認が睡眠を妨げる場合もあるため、尿量、皮膚状態、睡眠状況などを踏まえて個別に検討しましょう。
おむつを外さないように、腹巻きやロンパースを使ってもよいですか?
通常の防寒・衣類調整としての使用と、脱衣やおむつ外しを制限するための使用は区別する必要があります。本人が外せない状態を作ることを目的とする場合は、身体拘束に該当し得ます。介護士個人の判断で取り入れず、施設の身体拘束廃止・防止の方針と公的な手引きに沿って検討してください。
おむつを外す本人を注意してはいけませんか?
危険がある場合は安全確保が優先ですが、叱ったり問い詰めたりする対応は避けましょう。「どうして外したのですか?」と責めるより、「気持ち悪かったですか?」「お手洗いに行きますか?」と、理由を確認できる声かけを意識します。
まとめ|おむつ外しを止める前に、外したくなる理由を探そう
おむつ外しが繰り返されると、介護士の負担は大きくなります。夜間の尿汚染や便汚染が続けば、気持ちに余裕がなくなることもあるでしょう。
それでも、本人の行動を制限することが最初の解決策になってはいけません。
大切なのは、次の5つです。
- 皮膚や身体の不快感を確認する
- おむつの種類・サイズ・吸収量を見直す
- 排泄パターンに合った支援を行う
- 日中活動と夜間の睡眠状況を確認する
- 本人の意思を尊重し、チームで対応する
ぼくが経験した利用者さんも、確認回数を増やすだけでは改善しませんでした。だからこそ、方法を変える前に「原因は何だろう?」と考えることが大切だと感じています。
まずは次の勤務で、おむつ外しが起きた時間と、その前の状態を一つ記録してみてください。
小さな気づきが、その人に合ったケアを見つける第一歩になります。
なお、紙おむつや尿とりパッドが本人に合っているか迷った場合は、高齢者用紙おむつの選び方|パンツ・テープ・尿とりパッドの違いも参考にしてください。
参考資料
厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和7年3月)
大王製紙・アテント「認知症でおむつ外しが起こる理由は?対策と対応時に気をつけること」
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