介護の人手不足が深刻な原因とは?|最新データと現場の実情を解説

介護の人手不足が深刻な原因とは?|最新データと現場の実情を解説

「介護業界は、どうしていつも人手不足なの?」

介護現場で働いていると、新人が入っても人数が増えず、欠勤者が出れば残った職員で対応する。そんな状況に疑問を感じることがありますよね。

結論から言うと、介護の人手不足は、単に「辞める人が多いから」ではありません。

高齢化に伴う介護需要の増加に、採用・人材育成・働きやすい環境づくりが追いついていないことが大きな問題です。

実際に、2026年7月29日に公表された介護労働安定センターの令和7年度「介護労働実態調査」では、65.8%の事業所が従業員の不足を感じていると回答しています。

ぼくも介護福祉士として15年以上働いていますが、人手不足には、求人票の数字だけでは見えない現場の事情があると感じています。

この記事では、最新の公的データと実際の現場経験をもとに、人手不足の5つの原因、今後の見通し、現場でできる対策を解説します。

この記事の結論

  • 介護の人手不足は実際に広く起きているが、施設や職種で深刻さが異なる
  • 原因は需要増加・採用難・待遇・業務負担・新人教育の5つ
  • 離職防止だけでなく、採用と業務改善を同時に進める必要がある
  • 現場の職員だけが我慢して人手不足を埋め続けるべきではない

【筆者紹介】
介護業界15年以上の現役介護士(施設勤務)
※現場経験と公的データ(厚労省など)をもとに執筆しています。
【所持資格】
介護福祉士/ケアマネ/上級心理カウンセラー

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目次

介護の人手不足は本当?最新データで現状を確認

「介護の人手不足は嘘なのでは?」と思う人もいるかもしれません。

実際、人員に余裕のある施設もあれば、求人を出しても応募が集まらない施設もあります。

そのため、すべての職場が同じように人手不足とは言えません。しかし、全国的に見れば、人材確保が大きな課題になっているのは事実です。

65.8%の事業所が従業員不足を感じている

介護労働安定センターの令和7年度「介護労働実態調査」によると、従業員が「大いに不足」「不足」「やや不足」と回答した事業所は合計65.8%でした。

調査項目割合
事業所全体の不足感65.8%
訪問介護員の不足感82.9%
介護職員の不足感69.8%
労働者が「人手が足りない」と回答52.3%

出典:介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」

ここで注意したいのは、65.8%という数字が「必要な職員の65.8%が不足している」という意味ではないことです。

従業員が不足していると回答した事業所の割合であり、職員の不足人数や欠員率を示すものではありません。

また、訪問介護員の不足感は施設の介護職員より高く、サービスの種類によっても状況が異なります。

離職率は12.4%|辞める人だけが原因ではない

介護業界は「離職率が高いから人手不足」というイメージがあります。

しかし、令和7年度の調査では、訪問介護員と介護職員を合わせた採用率は14.6%、離職率は12.4%でした。

離職率は前年度と同じ水準です。採用率は離職率を上回っていますが、それでも従業員不足を感じる事業所は多くあります。

これは、退職者を補充するだけでは、必要な介護人材を十分に確保できないという問題を考えるうえで重要な数字です。

介護職が何人辞めたのかだけでなく、今後どれくらいの人材が必要になるのかにも目を向ける必要があります。

なぜ介護業界は人手不足なのか?5つの原因

原因1|高齢化で必要な介護職員数が増えている

最初の原因は、介護サービスの需要が増えていることです。

厚生労働省が公表した第9期介護保険事業計画に基づく推計では、必要な介護職員数は次のようになっています。

年度介護職員数・必要数
2022年度約215万人(実績)
2026年度約240万人(必要数)
2040年度約272万人(必要数)

出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

2022年度から2040年度までに、約57万人多くの介護職員が必要になる計算です。

なお、これは2022年度の実績に対する将来の必要人数の増加分です。「現在57万人が欠員になっている」という意味ではありません。

今いる職員が全員辞めずに働き続けても、介護需要が増えれば新たな人材が必要になります。

つまり介護業界は、退職者の補充と、介護需要の増加に対応する人材確保を同時に進めなければならないのです。

原因2|介護職へ入ってくる人を十分に確保できない

人手不足の原因には、採用の難しさもあります。

ぼくの職場でも、ハローワークや求人媒体に募集を出しているのに、思うように応募が集まらない時期がありました。

人が足りないから募集を続ける。しかし長期間募集していると、求職者から「いつも募集しているけれど、職場環境に問題があるのかな」と警戒される可能性もあります。

もちろん、求人を長く出しているからといってブラックな職場とは限りません。事業拡大や退職補充など、募集する事情はさまざまです。

ただ、慢性的に人が足りないと、採用活動に十分な時間を割くことも難しくなります。

結果として、採用できないから忙しくなる、忙しいから採用や教育が難しくなるという悪循環が生まれます。

原因3|仕事内容に対して給料・待遇が見合わないと感じる

介護職の給料や待遇も、人材確保を考えるうえで外せない問題です。

令和7年度介護労働実態調査で、介護労働者が抱える労働条件や仕事の負担についての悩みを見ると、次の回答がありました。

  • 人手が足りない:52.3%
  • 仕事内容のわりに賃金が低い:38.1%
  • 昇給がない・少ない:29.9%

これは、介護職全員が低賃金だという意味ではありません。しかし、仕事の内容や責任に対して、待遇が見合っていないと感じる人が一定数いることは分かります。

ぼくの職場では、介護福祉士の資格手当は月1万8,000円です。ただし資格手当や昇給制度は職場ごとに違います。

同じ資格や経験を持っていても、勤務先によって待遇に差が出ることがあります。

賃金だけで人手不足の原因を説明することはできませんが、責任の大きさに見合った待遇と、長く働き続けられる労働条件は必要だと思います。

原因4|人手不足が職員の身体的・精神的負担を増やす

人手が足りなくなると、利用者さん一人ひとりに必要な介助が減るわけではありません。

食事、排泄、入浴、服薬、見守り、ナースコール対応などを、少ない人数で行うことになります。

現場で経験したこと

ぼくが新人だったころ、一人で18名の利用者さんに対応する難しさを感じました。

夜勤では、スタッフ2人で約50名の利用者さんに対応することもあります。

利用者さんの話をゆっくり聞きたいと思っていても、別の方から呼ばれたり、センサーが鳴ったりすると、その場を離れなければなりません。

もっと丁寧に関わりたいのに、時間が足りない。そう感じることがあります。

こうした状態が続くと、介護の仕事そのものが嫌いになったわけではなくても、働き続けることがつらくなる可能性があります。

人が足りないから負担が増え、負担が大きいから人が定着しにくい。これも人手不足を長引かせる原因です。

原因5|新人教育の時間を確保できず、定着しにくい

人手不足の職場ほど、新人を育てる時間の確保が難しくなります。

本当は人が足りないからこそ、入職した新人に長く働いてほしい。しかし、忙しさから「今日は先輩についてきて」「見て覚えて」となってしまう職場もあります。

新人が覚えるべきことを整理せずに、何でも一度に教えてしまうのも問題です。

新人教育での反省

以前、使用する洗剤やおむつのメーカーなど、細かなことまで質問する新人がいました。

ぼくは聞かれたことに答えていましたが、振り返ると、最初に覚えてもらうべきだったのは業務の流れや利用者さんへの基本的な対応でした。

「それは今は覚えなくても大丈夫」と伝え、学ぶ内容に優先順位をつけるべきだったと反省しています。

新人教育では、知識をたくさん教えることだけが大切なのではありません。

新人が今必要なことを、安心して順番に覚えられる仕組みが必要です。

新人がすぐ辞めてしまう原因や教育の考え方は、介護職の新人がすぐ辞める原因と離職防止策で詳しく解説しています。

人手不足が続くと介護現場はどうなる?

人手不足の影響は、単に「仕事が忙しくなる」だけではありません。

職員一人あたりの業務が増える

欠員が出ても、利用者さんの生活は毎日続きます。必要な介助を残った職員で分担するため、業務負担が増えます。

残業や休日出勤による対応が続けば、疲労やストレスがたまりやすくなります。

利用者さんとの関わりに十分な時間を取れなくなる

介護は食事や排泄などの介助を終わらせるだけの仕事ではありません。

利用者さんの話を聞き、表情の変化に気づき、本人の希望を確認する時間も大切です。

しかし、人手不足で余裕がなくなると、時間内に必要な業務を終えることが優先されやすくなります。

業務の遅れや見守りの不足が安全面のリスクにつながらないよう、現場の工夫だけでなく、適切な配置や組織的な対応も欠かせません。

新人教育や職場改善が後回しになる

目の前の業務を回すことで精一杯になると、教育や改善のための時間が取りにくくなります。

しかし、業務改善を後回しにするほど、忙しい状態が変わりにくくなることもあります。

だからこそ、人手不足のときほど、仕事の優先順位や無駄な業務を見直すことが大切です。

介護の人手不足を解消する5つの対策

介護業界の人手不足を解消するには、採用だけでは不十分です。

新しい人材を確保すること、今いる職員が働き続けられること、必要な業務を効率よく行うこと。この3つを組み合わせる必要があります。

介護の人手不足を解消する方向

1|給与・休日・勤務条件を改善する

給与の改善は、人材確保の重要な方法です。

ただし、給料だけでなく、休みやすさや勤務時間の柔軟性も大切です。

改善したい勤務条件の例

  • 給与・資格手当・夜勤手当
  • 希望休や有給休暇の取得
  • 残業や休日出勤の負担
  • 夜勤回数や勤務時間の調整

令和7年度の介護労働実態調査でも、採用に効果があった取り組みとして賃金水準の向上が、定着に効果があった取り組みとして休暇や勤務日時を調整しやすい職場づくりなどが挙げられています。

2|少人数で無理を続けない勤務体制をつくる

職員が必要な時間帯は、一日の中でも異なります。

たとえば、起床介助や朝食、夕食から就寝介助までの時間帯は、業務が集中しやすくなります。

ぼくの勤務先でも、忙しい時間帯に短時間パートを配置したり、施設長やケアマネジャー、看護師などが役割の範囲内で現場を支援したりする工夫を行ってきました。

すべての施設で同じ方法が使えるわけではありませんが、必要な時間帯に必要な職員を配置するという考え方は大切です。

3|新人が安心して働ける教育体制を整える

新人教育を、その日に一緒に働いた先輩任せにすると、教える内容にばらつきが出やすくなります。

業務の流れ、利用者さんへの対応、一人で判断してよい範囲などを段階的に整理しましょう。

また、分からないことやミスを相談しやすい環境も必要です。

ぼくがリーダーとして心がけていること

スタッフが安心して働けるように、いつも上機嫌でいること、ミスを責めないこと、相手を尊重することを意識しています。

忙しいときほど、質問や相談をしにくい雰囲気をつくらないことが大切だと思います。

4|ICTは導入することより負担が減ることを重視する

介護記録や職員間の連絡などには、ICTを活用できる部分があります。

ただし、機械を導入したからといって、必ず仕事が楽になるわけではありません。

インカム導入で感じたこと

ぼくの職場では、他フロアの職員や看護師と連絡を取りやすくするためにインカムを導入したことがあります。

連絡しやすくなった一方、充電や管理、装着の手間が増えたり、実際には使う場面が少なかったりという問題もありました。

結果として、ぼくの職場ではインカムがないほうが楽だという結論になりました。

この経験から、ぼくは「便利そうだから導入する」のではなく、今の業務のどこに無駄があり、導入後にどの負担が減るのかを考えることが大切だと思っています。

5|新しい仕事を増やす前に、不要な業務を減らす

人手不足の対策として、ぼくが特に大切だと思っているのが「何をしないか」を考えることです。

業務改善では新しい取り組みを増やしがちですが、それによって職員の仕事が増えてしまっては意味がありません。

ぼくの職場で実施した業務改善

以前は、利用者さんの容態変化や連絡事項を紙の日報に手書きし、さらにパソコンの介護記録にも入力していました。

重複していた紙の日報を廃止したところ、その後も連絡漏れなどのトラブルなく経過しました。

また、安全面や本人の状態を確認したうえで、車椅子を自走できる利用者さんには自分で移動していただくように変更しました。

テーブル拭きやチラシでのゴミ箱作りなども、本人が希望し、無理なくできる場合は役割として取り組んでいただいています。

これは、人手不足だから利用者さんに仕事を任せるという意味ではありません。

本人の能力や希望を尊重しながら、職員が代わりにやりすぎていることはないかを見直す考え方です。

利用者さんの自立支援と職員の負担軽減を両立できる業務改善を目指したいですね。

業務改善の進め方は、介護施設の業務改善とPDCA・OODAの活用方法でも紹介しています。

介護の人手不足は今後どうなる?2040年に向けた課題

厚生労働省の推計では、2040年度に必要な介護職員数は約272万人です。

今後も人材確保は重要な課題ですが、将来の必要人数が増えるからといって、すべての地域や施設で同じ速度で人手不足が深刻化するとは限りません。

地域の人口動向、介護サービスの種類、採用・定着の状況、業務改善の進み方によっても影響は異なります。

だからこそ、業界全体では処遇改善、人材育成、定着支援、介護テクノロジーなどを組み合わせる必要があります。

人手不足の職場で働く介護職はどうすればいい?

ここからは、今まさに人手不足の職場で働いている人に伝えたいことです。

業界全体の人手不足は、一人の介護職だけでは解決できません。

そのため、「自分たちで改善できること」「管理者や法人が対応すべきこと」「自分では変えにくいこと」を分けて考えてみてください。

自分たちで改善できること

二重記録や非効率な役割分担、申し送り方法などは、現場から改善案を出せる場合があります。

ただし、必要な見守りや安全確認まで削ってはいけません。利用者さんの安全と尊厳を守れる方法を考えることが前提です。

管理者・法人に対応してもらうこと

慢性的な欠員や人員配置、採用、夜勤人数、残業などは、現場の職員だけで解決することが難しい問題です。

「忙しいです」と伝えるだけでなく、欠員が発生した日、残業時間、対応が集中する時間帯など、具体的な状況を整理して相談する方法があります。

相談した結果、どのような改善策が検討され、いつまでに何をするのかも確認しておきたいところです。

改善されない場合は他の職場と比較する

人手不足だからという理由だけで、すぐに退職を決める必要はありません。

一方で、何度相談しても改善されず、残業や休日出勤を職員の我慢で埋め続けている場合は、他の職場の働き方を知ることも選択肢です。

他の職場と比較したい項目

  • 日勤・夜勤の職員配置
  • 年間休日・希望休の取りやすさ
  • 残業時間と残業代の支払い
  • 欠員が出たときの対応
  • 新人教育や職員へのフォロー体制

すぐに転職するつもりがなくても、条件を比較すれば、今の職場を客観的に見る判断材料になります。

職場環境を見極めるポイントは、介護業界のホワイトな職場の特徴と見分け方も参考にしてください。

ぼくが大切にしている考え方

人手不足が続くと、「介護職だから仕方ない」「自分が頑張るしかない」と考えてしまうことがあります。

でも、利用者さんに尊厳があるように、介護職にも尊厳があります。

人が足りないことを理由に、現場の職員が無制限に我慢し続ける状態を当たり前にしたくありません。

介護の人手不足に関するよくある質問

介護の人手不足は嘘ですか?

嘘ではありません。令和7年度介護労働実態調査では、65.8%の事業所が従業員不足を感じていると回答しています。

ただし、すべての施設が同じ状況ではありません。地域・サービス・職種によって人手不足の程度は異なります。

介護の人手不足で最も大きな原因は何ですか?

一つには絞れません。介護需要の増加、採用難、待遇、仕事の負担、新人教育などが重なっています。

離職率だけに注目すると、必要な職員数そのものが増えているという問題を見落とす可能性があります。

介護職は人手不足なのに、採用されないこともありますか?

あります。業界全体で人手不足でも、個々の事業所には採用人数、勤務時間、資格、経験、地域などの条件があります。

人手不足だから必ず採用される、希望の条件で働けるとは限りません。

介護の人手不足は2040年まで続きますか?

厚生労働省は2040年度に約272万人の介護職員が必要になると推計しています。

ただし、これは将来の必要人数の推計であり、実際の不足人数を確定したものではありません。人材確保や業務改善の進み方によって状況は変わります。

人手不足の職場は辞めたほうがいいですか?

人手不足という理由だけで判断する必要はありません。

大切なのは、職場が採用や業務改善に取り組んでいるか、職員の負担を放置していないかという点です。

改善されない問題が続く場合は、職場内で相談するだけでなく、他の働き方や職場の条件を比較してみることもできます。

まとめ|介護の人手不足を現場の頑張りだけで解決しない

介護業界の人手不足には、主に5つの原因があります。

  1. 高齢化による介護需要の増加
  2. 介護職の採用の難しさ
  3. 賃金・待遇への不満
  4. 少人数勤務による業務負担
  5. 新人教育と定着の難しさ

人手不足を解決するには、採用と定着だけでなく、業務改善も必要です。

ぼくは15年以上介護現場で働いてきましたが、「人がいないから仕方ない」と、職員が我慢し続ける状態は望ましくないと考えています。

利用者さんを大切にすることと、介護職が安心して働けることは、どちらも必要です。

改善できることは改善する。自分たちでは対応できないことは管理者に相談する。それでも変わらないなら、別の職場の働き方を知る。

人手不足の問題を一人で背負わず、できることから状況を整理していきましょう。

参考資料

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この記事を書いた人

【介護業界15年以上】
資格:介護福祉士、介護支援専門員、上級心理カウンセラー
施設のリーダーで採用から教育に関わる
現役介護士ならではの「体験談」や「介護現場の声」を発信しています。
「ブラック企業」から「ホワイト企業」に転職した経験を活かし、転職に失敗しない方法も紹介しています。

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