ぼくが介護業界で13年間働いて感じる、人手不足の原因と対策ついて解説します。
介護現場で働いていて、肌で感じる人手不足の2つの原因は次のとおりです。
- 介護職員の募集や定着が難しい
- 介護職員初任者研修の講習と現場のギャップ
人手不足の対策として労働環境の改善が挙げられます。具体的には次のとおりです。
- 業務改善
- 人員配置の見直し
- 職場内のストレス対策
- 職場文化の改善
- 研修の充実
- 業務の一部を外部に委託
- 新人が働きやすい環境作り
- ICT化
超高齢化社会が進んでおり、介護の需要は年々増加しています。
しかし、十分な介護職員が確保できていないのが現状です。
公益財団法人介護労働安定センターによると、介護事業所全体において62.6%もの施設が人手不足を感じていて、深刻な状況にあることがわかります。
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記事を書いた人
名前:なお(介護おじさん)
年齢:42歳
資格:介護福祉士、介護支援専門員
☑介護士歴14年目
☑介護施設のリーダー職
☑ブラック企業からホワイト企業に転職
☑介護職の悩みを解決する情報を発信中
筆者の詳しい経歴はこちら
・スーパーの精肉担当(超ブラック企業)
毎日6時~21時までの長時間労働で体力の限界
・本屋の店長(普通の企業)
面接など職員の採用にかかわるが会社倒産
・ITの会社で営業(超ブラック企業)
きついノルマ・飛び込みの営業で精神消耗
・CADオペレーター(ブラック企業)
休みなし、こき使われまくりで精神崩壊
・福祉用具専門相談員(ブラック企業)
上司のパワハラがエグすぎて精神の限界
・介護士(ホワイト企業) ☚今ここ
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介護職のお悩み【Q&A】
人手不足の原因について
介護職員の募集や定着の難しさ
人手不足が深刻な問題となっている背景には、介護職員の募集や定着が難しいことが挙げられます。
介護職員の仕事は身体的・精神的な負担が大きく、労働環境の悪さや低賃金なイメージがありますよね。
3K(きつい、汚い、給料安い)とか、それに「危険」を加えて4Kなんて言われがち。
危険な理由は、クラスターが発生するなど介護職員も感染症にかかる危険があるからです。
最初から敬遠される業界ですから、募集をかけてもなかなか応募がありません。
ぼくが勤めている介護施設ではハローワークの他に求人誌やネットでも求人を出していますが、ほぼ空振り。
人が欲しいから求人を出すのに、ずっと求人を出していると「いつも募集している会社」のレッテルが張られてしまい、労働環境が悪いのではないかと敬遠されます。
ですので、僕の職場は法人内の人事異動で人員を補充したり、職員の知り合いが紹介で入社するパターンが多いです。
大きな法人だと職員が多いので、人事異動で調整できますが、小さな事業所だと死活問題で倒産に追い込まれる事業所もあります。
株式会社東京商工リサーチの調査では、介護事業所の倒産は2022年が過去最多で143件(前年比76.5%)となりました。
とくに訪問介護は人手不足の深刻化が大きく影響しています。
出典: 東京商工リサーチ
介護職員初任者研修の講習と現場のギャップ
介護職員初任者研修の資格を取得して、いざ現場に入ると驚かれます。
介護職員初任者研修の講習では教えられない「現実」を知ることになるからです。
就職してから「こんなの聞いてないよ~」
- ひとりの利用者さんにゆっくり対応できない
- 利用者さんは拒否のオンパレード
- 利用者さんからの暴言、暴力、セクハラ
そして、「自分には合わなかった」「これ以上続けられない」と退職してしまいます。
ぼくも初めての現場では驚きの連続でした。
18名の利用者さんのうち、転倒のリスクが高い利用者さんが6名。
センサーマットの対応に追われる日々。
利用者さんとの会話の途中でもセンサーが鳴れば「すみません、呼ばれたので失礼します」とダッシュします。
わかってくれる利用者さんならいいのですが…「話の途中で他の対応するとは、けしからん!」と怒られることもしばしば。現実は厳しい。
服薬介助をするとき…
「そんな薬飲んだことがない」
「あんたが飲みなさい」
口を閉じで断固拒否…。
新人にはハードルが高すぎる。どう対応するか教科書に載っていません…。
奥の手「美人になる薬ですよ」
「もともと美人だから飲まない!」
お願いです。薬を飲んでください…。
突然、後ろから抱きつかれて胸を触られる。振り返ると男性の利用者さん。
利用者さんから「なんだテメー男じゃねーか!」と逆ギレされる。
ここは無法地帯か?
外でやると逮捕されますよ…。
人手不足の影響について
介護サービスの質が低下する
人手不足によって介護サービスの質が低下します。
なぜなら、ひとりの職員で18名の利用者さんの対応をするため、効率重視のケアになってしまうからです。
転倒事故を防ぐので精一杯になりケアの質が低下すると、利用者さんからの苦情にも繋がります。
- ナースコールで呼んでもすぐに来ない
- ゆっくり話を聞いてくれない
- 自立に近い人の対応が後回しになり不公平だ
利用者さんからの苦情も痛いほどわかります。しかし、転倒防止が最優先になってしまうのです。
介護職員のストレス増加
人手不足の職場ではストレスを感じながら働くことになります。
- ひとりの職員に対する業務量増加
- 転倒させてはいけないプレッシャー
- 利用者さんからの苦情
- 鳴りやまないナースコール
ストレス増加による影響
介護職員が過重労働やストレスに悩まされている場合、利用者さんやその家族も不安を感じることになります。
なぜなら、介護職員のストレスから高齢者虐待に発展するケースがあるからです。
最初は不適切な対応から始まり、どんどんエスカレートしてくものです。「ちょっとくらい」から始まり、気がつけばり利用者さんの生命にかかわる重大な事件に発展してしまいます。
あなたも、高齢者虐待で職員が逮捕されるニュースを見たことがあるでしょう。
ニュースを見るたびに心が痛くなります。
職員による高齢者虐待の相談や通報が増加しているのが現状です。
出典:厚生労働省「令和 3 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果
介護業界における人手不足の問題は、社会全体に影響を及ぼしているのです。
どんな理由があっても高齢者虐待は許されません。
労働環境が悪い職場にしがみつく理由はなんでしょうか?
逮捕されて人生が終わるだけです。
「井の中の蛙大海を知らず」
探せば条件のよいあなたにピッタリの職場に出会えます。
探すのが面倒だと思うかもしれませんが、行動しなければ状況は変わりません。
重い腰を上げるべきです。
我慢し続けるか、行動して笑顔で働くかはあなた次第。
人材が定着するための対策について
介護職員の労働環境改善に向けた取り組み
人手不足を解消するためには、介護職員の労働環境改善や、働き方の多様化などの取り組みが必要です。
ぼくの施設で取り組んでいる具体的な取り組みを紹介します。
業務改善や人員配置の見直し
介護職員の負担軽減のため、業務改善や人員配置の見直しを進めています。
忙しい起床介助から朝食後(7時~9時)、夕食から就寝介助(18時~20時)の時間帯は職員を増やしました。
- 2時間だけ働けるパートさんを雇う
- 施設長、ケアマネ、生活相談員、看護師も現場をフォローする
職場内のストレス対策や職場文化の改善
サービス残業をする文化を撲滅するために、定時にアラームをセットしています。
アラームがなると退勤する職員に対して「お疲れさま」「仕事あがってね」と声かけをして、帰りやすい雰囲気を作ることにしました。
今まで残業が多かったユニットリーダーこそ定時に帰り、他のスタッフも帰りやすい環境を作っています。
定時で帰れないときでも精神的な負担が増えないように、退勤時間から5分を過ぎると1分単位で残業代が出るようになりました。(今までは15分を過ぎなければ残業代が出なかったです)
研修の充実
介護職員のスキルアップを促進するため、社内研修だけでなく病院が主催するような外部研修にも積極的に参加できる環境を作っています。
会社から強制的に参加させられるのではなく、研修の案内を見て自分が参加したい研修に自由に参加できます。
外部研修に参加しても給料が出るので、積極的に参加する職員が増えました。
業務の一部を外部に委託
今まで介護職員がしていた「居室清掃」「お風呂掃除」を外部に委託しています。
介護職員は利用者さんの対応に集中できるようになり、負担が軽減しました。
新人育成の強化
新人のOJT(実際の業務を行いながらの研修)にかける時間を1週間から1ヵ月に伸ばしました。
より手厚くサポートすることで、早期退職を防げるようになりました。
募集してもなかなか応募がないので、ようやく来た人を辞めさせないことが大切ですね。
ICT化
介護サービスの効率化のためにICT化による人手不足の解消策も注目されています。ぼくの職場でも手書きだった記録類がパソコンでの入力になり、どんどん効率化されています。
介護業界全体でもICT化の流れは進んでいくでしょう。
ChatGPTのようなAIで介護プランやシフト表を作成する未来がすぐそこに見えます。
まとめ
ぼくが感じる介護業界の人手不足の原因と、対策方法は次のとおりです。
人手不足の原因
- 介護職員の募集や定着が難しい
- 介護職員初任者研修の講習と現場のギャップ
人手不足の対策
- 業務改善
- 人員配置の見直し
- 職場内のストレス対策
- 職場文化の改善
- 研修の充実
- 業務の一部を外部に委託
- 新人が働きやすい環境作り
- ICT化
求人を出してもなかなか応募がないので、入社した人が辞めない環境作りが重要ですね。
みんなが働きやすいように、どんどん業務を改善していきましょう。
介護士はこれからの日本を支える仕事です。
一緒に働く仲間を待っています。
日本を支えてやりましょう。
では、また。
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