介護現場では、利用者さんから「暴言」や「暴力」に悩むことがあります。
突然の怒号や手を振り払われるような行為に、心が折れそうになりますよね。
「なんでこんな仕事を選んでしまったんだろう」と悲しくなっていませんか?
利用者さんの行動に恐怖や不満を感じる瞬間は、
どの職員にも訪れるもの。
しかし、利用者さんの行動には必ず理由があります。
- 認知症による混乱
- 環境のストレス
- 心の中にある不安や寂しさ
こうした心理を理解して対応すれば、状況を改善できます。
この記事では、介護の現場でよくある暴言・暴力と、対応策をわかりやすく解説します。
今日から使えるヒントが見つかるはずです。
ぜひ最後まで読んで、スキルをアップデートしませんか?
随時、情報を追加・更新していきます。
記事を書いた人
名前:なお(介護おじさん)
年齢:42歳
資格:介護福祉士、介護支援専門員
☑介護士歴14年目
☑介護施設のリーダー職
☑ブラック企業からホワイト企業に転職
☑介護職の悩みを解決する情報を発信中
筆者の詳しい経歴はこちら
・スーパーの精肉担当(超ブラック企業)
毎日6時~21時までの長時間労働で体力の限界
・本屋の店長(普通の企業)
面接など職員の採用にかかわるが会社倒産
・ITの会社で営業(超ブラック企業)
きついノルマ・飛び込みの営業で精神消耗
・CADオペレーター(ブラック企業)
休みなし、こき使われまくりで精神崩壊
・福祉用具専門相談員(ブラック企業)
上司のパワハラがエグすぎて精神の限界
・介護士(ホワイト企業) ☚今ここ
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介護職のお悩み【Q&A】
介護現場における利用者さんからの暴言・暴力の実態
介護現場での暴言・暴力は、さまざまな要因が絡み合う複雑な問題です。
介護士が利用者さんに暴言を浴びせたり、暴力を振るうと「高齢者虐待」で逮捕されます。そしてニュースになるでしょう。
しかし、利用者さんが介護士に暴言を浴びせても、暴力を振るっても、セクハラしても……
「認知症だから仕方がない」
「うまくかわさない職員が悪い」
そんな理由をつけて、うやむやにされるのです。
介護現場の闇ですよね。
関連記事はこちら 【介護職の悩み】利用者さんが偉そうなときどうする?|対処法を解説
では、具体的にどのような暴言・暴力があるのかを見ていきましょう。
利用者さんからの暴言
バカ!何も分かってない!
暴言の背景
- 認知症や記憶障害が進行すると、自分がどのような場所にいるのかや、目の前の人が誰なのかを認識できない。
- 自分が置かれている状況に不安や混乱を感じ、その感情が暴言として表れる。
- 職員の説明が利用者に伝わらない場合、「理解していない」と誤解され、感情的になる。
具体的な対応策
- 共感を示す:
- 「わかってないと感じたんですね」と利用者の気持ちを受け止める。
- こちらの非を認める形で会話を始めると、相手の警戒心が和らぐ。
- 具体的に説明する:
- 「今から薬をお持ちしますね」など、利用者が分かりやすいように短く明確な言葉を使う。
- 状況に応じて視覚的な説明(ジェスチャーや指差し)を加える。
- 声と表情の工夫:
- 穏やかなトーンでゆっくり話し、安心感を与える。
- 職員が笑顔で対応することで、相手の緊張を和らげる。
触るな!気持ち悪い!
暴言の背景
- 排泄介助や入浴介助など、利用者の身体に直接触れる場面では、羞恥心や屈辱感が引き金となる。
- 認知症が進んだ状態では、触られることで「攻撃されている」と誤解し、反射的に防衛的な態度を取る。
具体的な対応策
- 事前の声掛け:
- 「これからお手伝いしますね」「ここにタオルをかけますよ」と事前に動作を説明する。
- プライバシーの確保:
- 必ずカーテンやドアを閉め、利用者が周囲から見られる不安を減らす。
- 必要最小限の介助を心がけ、できる部分は利用者自身に任せる。
- 利用者のペースに合わせる:
- 介助のスピードを調整し、無理に進めず利用者さんが落ち着く時間を待つ。
うるさい!お前の声なんか聞きたくない!
暴言の背景
- 集団生活のストレスや他者との交流が負担になる場合があります。
- 認知症の一部症状として、周囲の音や話し声に過敏になり、感情をコントロールできなくなることがあります。
- 職員が何気なく声をかけた際に、それがタイミングやトーンによって刺激となり、拒絶的な暴言につながることもあります。
具体的な対応策
- 環境調整:
- 利用者さんが過ごすスペースの音量や騒音を確認し、できるだけ静かな環境を提供する。
- 集団生活が負担になっている場合は、個別対応を検討する。
- 接近方法の見直し:
- 利用者さんの正面からゆっくり近づき、目を合わせてから話しかける。
- 声かけのタイミングや内容を工夫し、必要以上に干渉しない。
- 話を短くする:
- 長い説明や説得を避け、簡潔な言葉で要点を伝える。
- 「すぐに済ませますね」など、安心感を与える言葉を添える。
お前なんか信用できるか!
暴言の背景
- 利用者さんが、新しい環境や人に対して強い不信感を抱いている場合に起きやすい。
- 認知症の影響で、過去の体験と現在の出来事が混同され、職員を「見知らぬ人」「危険な人」と認識することがあります。
- 自分のペースを崩されると、それが不信感を増幅させる原因にもなります。
具体的な対応策
- 信頼関係の構築:
- 日常会話を増やし、利用者さんが好きな話題や趣味について触れる。
- 利用者さんの名前を呼び、「○○さん、いつもありがとうございます」と感謝の言葉を伝える。
- ルーチンの確立:
- 決まった職員が対応することで、利用者さんが安心感を持ちやすくなる。
- 日々のスケジュールを予測可能にし、不安を減らす。
- 対応の一貫性:
- 職員間で利用者さんへの対応を統一し、信頼を損なう言動や誤解を防ぐ。
ここから出て行け!
暴言の背景
- 特に新しい施設に入所したばかりの利用者さんに多く見られます。
- 環境の変化に対する適応が難しく、「自分の家ではない」と感じることでストレスが生じ、攻撃的な言葉で職員や他の利用者さんを排除しようとする。
- 記憶の混乱により、「ここは自分の居場所ではない」と誤認してしまうことも原因です。
具体的な対応策
- 利用者の感情に寄り添う:
- 「そう思われるのですね。ここでゆっくりしてみませんか?」と否定せず共感を示す。
- 安全な環境を整える:
- 扉や窓の開閉に注意し、利用者さんが施設外へ出ようとしないよう配慮する。
- 外出への強い希望がある場合は、安全な範囲で庭などの散歩を取り入れる。
- 環境に慣れるサポート:
- 写真や思い出の品を部屋に置くことで、利用者が安心できる空間を作る。
- 家族との定期的な面会を取り入れ、心理的な安定を促す。
家族からの暴言
何でこんな簡単なこともできなの!
暴言の背景
- 家族が施設に対して過剰な期待を持っている場合に起きやすい。
- 介護の現場では限られた職員数で複数の利用者に対応しているが、その現実を家族が理解していないことが原因。
- 家族自身が介護疲れや罪悪感を抱えている場合、そのストレスが職員への攻撃的な態度として表れる。
具体的な対応策
- 事実を冷静に説明する:
- 「こういった介護の場面では時間がかかる場合があります」と具体例を挙げながら説明する。
- 職員の取り組みや努力を具体的に示し、「現在も改善を検討しています」と前向きな姿勢を見せる。
- 共感を示す:
- 「ご心配の気持ちはよく分かります。改善できる点があればしっかり対応させていただきます」と伝える。
- 改善策を共有:
- 話を聞いた後に「お話を踏まえて、どのように対応できるか施設内で検討します」と具体的なアクションプランを提示する。
ちゃんと見てるのか?放置してるんじゃないか!
暴言の背景
- 利用者さんの衣服が汚れていたり、小さなケガをしているのを家族が見つけると、不安や怒りが増幅し、暴言となる。
- 施設内での生活の詳細を知らないことで、職員が手を抜いていると誤解される。
- 家族が過去の施設や介護サービスで不満を感じた経験があり、それが現在の施設にも反映される場合。
具体的な対応策
- 状況を丁寧に説明する:
- 「○○さんは今日、こんな風に過ごされていました。状況を見守りつつ、定期的に声かけを行っています」と具体的に報告する。
- 観察結果を見える化:
- ケア記録や写真(必要に応じて家族の同意を得る)を用いて、日常の様子を家族に共有する。
- 「○○さんがこのように動かれることが多いので、ケガが防ぎにくい場合もあります」と起こりうるリスクについても説明する。
- 定期的な面談の実施:
- 家族に安心してもらえるよう、ケア計画や方針について定期的に話し合う場を設ける。
うちの親をちゃんと扱えないなら辞めちまえ!
暴言の背景
- 家族にとって親は大切な存在であり、職員の対応が冷たく感じられると強く反発する。
- 自分が直接介護できない負い目から、職員に対して過剰に「親を守る責任」を押し付ける傾向。
- 職員の態度や言葉遣いが誤解を生むこともある。
具体的な対応策
- 迅速に謝罪し、安心感を与える:
- 「至らない点があったかもしれません。申し訳ございません。詳しい状況をお聞かせください」と誠意を示す。
- 解決策を提示:
- 職員間で問題点を共有し、「今後、○○に注意して対応いたします」と具体的な改善内容を伝える。
- 感情のケア:
- 家族の不安や怒りに寄り添い、「お母様の大切な存在を私たちも丁寧にサポートしたいと思っています」と家族の立場に共感する言葉を添える。
こんな施設に入れたのは間違いだった!
暴言の背景
- 施設のサービスや環境が家族の期待と異なる場合、失望感が暴言として現れる。
- 家族が施設に入所させることへの罪悪感を抱えており、それを施設に責任転嫁するケース。
- 入所後に利用者さんの症状が進行したり、予期せぬトラブルが起きた場合、家族が施設のせいだと考える。
具体的な対応策
- 家族の期待を聞き取る:
- 「どのような部分でご期待に沿えなかったのか、教えていただけますか?」と、家族が求める理想像を確認する。
- 施設の特徴を再度説明:
- 「当施設では、○○を大切にしているため、優先順位を○○にしています」と施設の方針を明確に伝える。
- 柔軟な改善を提案:
- 家族が望むケアが可能であれば、方針を一部調整し、個別ケアプランを見直す。
- 不可の場合は、適切なサポートや代替案を提示する。
金だけ取って何もしないのか!
暴言の背景
- 介護費用が家族にとって負担になっており、費用対効果に不満を抱くことが原因。
- 施設のサービス内容や、利用者さんに提供されるケアの具体性が家族に伝わっていない場合。
- 他の家族や知人の施設利用体験と比較し、「自分の親は十分なケアを受けていない」と感じる。
具体的な対応策
- 費用の内訳を説明:
- 「この費用には○○サービスや、○○の利用料金が含まれています」と、家族が理解できるよう詳細に説明する。
- ケアの具体例を示す:
- 利用者さんの日常ケアの内容を具体的に報告し、「○○さんのために、このような対応を行っています」と伝える。
- 定期的な成果の共有:
- ケアの成果や、利用者さんの健康状態の変化などの情報を共有し、家族に対して透明性を高める。
他の利用者さんへの暴言
あんた、邪魔よ!
暴言の背景
- 車椅子や歩行補助器を使っている利用者さんが狭い通路で他の利用者さんと鉢合わせすると、不自由さや苛立ちが増幅され、暴言として現れる。
- 利用者さんが自分のペースを乱されたと感じたときに、攻撃的な言葉で相手を責めてしまう。
具体的な対応策
- 環境の見直し:
- 通路や共有スペースを広く保ち、利用者さんがスムーズに移動できるよう配置を工夫する。
- 事前の声掛け:
- 職員が周囲の状況を確認し、「ここを通りましょうね」と穏やかに誘導する。
- 利用者間の距離感の確保:
- 物理的に距離を保つことで、トラブルの発生を減らす。
お前、うるさいんだよ!
暴言の背景
- 大きな声で話す利用者に対して、別の利用者さんがその音に過敏に反応し、暴言を吐く。
- 認知症の影響で感覚過敏や音へのストレスが増している場合もある。
具体的な対応策
- 音量を管理する:
- 集団で過ごすスペースでは、利用者さんが過ごしやすい音環境を整える(テレビの音量調整や会話のトーン指導など)。
- 個別スペースの活用:
- 音に敏感な利用者さんには、比較的静かな場所で過ごせるよう配慮する。
- 職員の介入:
- 「○○さん、少しお静かにお願いできますか」と、状況に応じて優しく声かけし、場の雰囲気を和らげる。
ここは俺の場所だ!
暴言の背景
- 食堂やリビングなどの共有スペースで、自分の席が他の利用者さんに使われたと感じた際に、縄張り意識が強く表れる。
- 認知症の症状が進行することで、自分の所有物や居場所へのこだわりが強くなる場合も。
具体的な対応策
- 席の固定化:
- 利用者さんごとに決まった席を設け、名前札や個別の目印を用意する。
- 職員が先導する:
- 共有スペースに入る際、「○○さん、こちらにお座りください」とスムーズに誘導。
- トラブル時の対応:
- 暴言が出た場合、まずは落ち着いた声で「こちらにどうぞ」と相手を別の場所に誘導し、冷静な環境を保つ。
あんたのせいでこうなった!
暴言の背景
- 何らかの不快な状況(転倒、ケガ、小さなミスなど)を経験した利用者さんが、その原因を近くにいる別の利用者さんに責任転嫁する。
- 記憶や状況判断の混乱により、自分の失敗を他人のせいにしやすい状態になっている。
具体的な対応策
- 即時のクールダウン:
- 「大丈夫ですよ。○○さんのせいではありません。落ち着いてください」と利用者さんの気持ちをなだめる。
- 職員が状況を整理する:
- 利用者同士に「今の状況はこうだったと思います」と事実を丁寧に説明し、誤解を解く。
- 観察と記録:
- 似た場面で同様のトラブルが発生しないよう、利用者さんの行動傾向を記録し、次回以降の予防に役立てる。
なんであんたがここにいるんだ!
暴言の背景
- 他の利用者さんの存在自体に不満を持つ場合や、自分の空間が侵害されたと感じることが原因。
- 認知症の進行により、他者との距離感が取りにくくなることで、攻撃的な言葉が出ることも。
具体的な対応策
- 相手を遠ざける:
- 「こちらに移動しましょう」と片方の利用者さんを別の場所に案内する。
- 日々の信頼関係の構築:
- 利用者さん同士が互いに受け入れやすい関係を築けるよう、職員が間に入って日常的に会話や活動をサポートする。
- 適切な配置の工夫:
- 日常的にトラブルが起きやすい利用者さん同士は、活動時間や部屋割りなどで距離を取る。
利用者さんからの暴力
以下は、介護施設でよくある「利用者からの暴力」の具体例とその背景を5つ挙げ、さらに具体的な対応策を詳しく解説したものです。
「手を振り払われる、叩かれる」
暴力の背景
- 排泄介助や着替え介助の際、利用者さんが羞恥心や屈辱感を抱き、触られることに反発する。
- 認知症の進行により、介助が「攻撃」と誤解され、防衛的な反応が暴力として表れる。
具体的な対応策
- 事前の声掛け:
- 「これからお手伝いしますね」「少しだけ触れますよ」と事前に動作を説明することで、不安を軽減。
- プライバシーを確保:
- カーテンや扉を閉め、周囲の視線を遮ることで羞恥心を軽減する。
- 手早く丁寧に作業する:
- 作業を効率よく進め、利用者さんが不快に感じる時間を短縮する。
- 反応を観察する:
- 手を振り払う兆候が見られたら一度手を止め、利用者さんが落ち着くまで待つ。
「拳を振り上げられる、物を投げられる」
暴力の背景
- 突発的なストレスや不快感、環境の変化により感情が爆発することがある。
- 認知症や心理的混乱が原因で、感情を抑えられず暴力的な行動に繋がる。
具体的な対応策
- 安全な距離を取る:
- 拳や物が届かない位置まで下がり、利用者さんが落ち着くのを待つ。
- 職員間での協力:
- 複数の職員で対応し、危険な状況を迅速に収拾する。
- 利用者の感情に寄り添う:
- 「驚かせてしまいましたか?ごめんなさい」と利用者さんの気持ちを受け止め、安心感を与える。
- トリガーを特定する:
- なぜ怒りが爆発したのかを振り返り、同じ状況を回避できるように対策を考える。
「爪を立てられる、引っかかれる」
暴力の背景
- 身体に触れる行為が「攻撃」と誤解され、利用者が反射的に暴力で抵抗する。
- 突然の接触や大きな動きに驚いて、防衛行動を取る場合もある。
具体的な対応策
- 触れる前に必ず説明する:
- 「これから腕を支えますね」と利用者さんに確認しながら作業を進める。
- 動きを予測する:
- 利用者さんが手を挙げる、緊張した表情を見せるなど、攻撃の前兆を察知して距離を取る。
- 専用の用具を活用する:
- 介助用のベルトや器具を使用し、直接的な接触を減らす。
- ケア計画の見直し:
- 繰り返し起こる場合は、ケア方法を再検討し、利用者さんが安心できる対応を探る。
「杖や物を振り回される」
暴力の背景
- 利用者さんが強い不安や怒りを感じ、手元にある物を使って防御や攻撃をしようとする。
- 施設の環境や職員の行動が、利用者さんに「危険」と認識される場合に発生。
具体的な対応策
- 危険物を遠ざける:
- 杖や硬い物が手の届く範囲にある場合は、事前に安全な場所に移す。
- 安全な距離を取る:
- 振り回される物が当たらない位置まで離れ、利用者さんが落ち着くのを待つ。
- 声かけで落ち着かせる:
- 「安心してください。何もしませんよ」と穏やかに声をかけ、利用者さんの気持ちを鎮める。
- 対応を共有する:
- 職員間でこの利用者さんへの対応法を共有し、一貫性のあるケアを行う。
「頭や体を叩かれる」
暴力の背景
- 利用者さんが怒りや不満を抑えられず、直接的な暴力として表現する。
- 認知症の症状により、相手が誰かわからなくなり、攻撃の対象になる場合もある。
具体的な対応策
- 冷静に受け止める:
- 「どうしましたか?」と落ち着いた声で尋ね、怒りの原因を探る。
- 反撃しない:
- 職員が感情的に反応すると、利用者さんの攻撃性がさらに強まるため、冷静さを保つ。
- 安全な姿勢を取る:
- 利用者さんの手が届かないよう少し後ろに下がり、威圧感を与えない姿勢を心がける。
- 原因を記録する:
- 暴力が起きた状況やタイミングを詳細に記録し、改善策の検討材料とする。
利用者さん同士の暴力
「座席をめぐるトラブル」
【具体例】
食堂で「ここは俺の席だ!」と怒鳴り、隣の利用者さんを突き飛ばす。
暴力の背景
利用者さんの多くは、認知症や環境の変化により「自分の場所」へのこだわりが強くなり、座席や空間を守ろうとする心理が働きます。
縄張り意識や集団生活へのストレスがトラブルの引き金となることも。
具体的な対応策
- 席を固定化する:
- 利用者ごとに固定の席を設け、名前札や目印を配置。
- 決まった席があることで安心感を与える。
- 事前の声掛け:
- トラブルが起きやすい場面では、職員が先回りして「こちらが○○さんの席ですね」と誘導する。
- トラブル時の冷静な対処:
- 暴力が発生した場合、まずは安全確保を優先し、加害者を別の場所へ誘導。
- 被害者には怪我がないか確認し、安心感を与える言葉をかける。
「物を取り合うトラブル」
【具体例】
テレビのリモコンや共有の雑誌を取り合い、手を振り払ったり、相手の手を叩く。
暴力の背景
認知症の影響で、他人の物や共有物を「自分の所有物」と認識することがあります。
また、譲ることへの理解が難しく、物理的な衝突に発展する。
具体的な対応策
- 共有物の利用ルールを明確化:
- リモコンや雑誌の使用時間を決め、「○○さんの番が終わったら次は○○さんに渡します」と声かけを行う。
- 個別の物を用意する:
- リモコンや雑誌など、個別に提供できるものは利用者さんごとに準備。
- 冷静に仲裁する:
- トラブルが起きた場合、職員が「次はこちらをどうぞ」と別の物や活動を提案し、注意を逸らす。
「言い争いから手が出る」
【具体例】
食事中や会話中に言い合いがエスカレートし、相手を叩いたり掴みかかる。
暴力の背景
利用者さんの聴力や認知機能の低下により、相手の言葉や意図を誤解することがあります。
また、感情のコントロールが難しい場合、言い争いが暴力に発展することも。
具体的な対応策
- 職員の早期介入:
- 言い争いが始まった段階で「どうしましたか?」と割って入り、冷静さを促す。
- 席や距離を調整する:
- トラブルが頻発する利用者さん同士を離れた席に配置し、物理的な距離を保つ。
- 後のフォローアップ:
- トラブルが発生した場合、双方に「さっきは驚かせてしまいましたね」と声をかけ、安心感を与える。
「移動中の衝突」
【具体例】
狭い廊下で車椅子を使う利用者さんと、歩行補助器を使う利用者さんが衝突し、片方が相手を押し返す。
暴力の背景
移動の際に互いの速度やタイミングが合わず、接触事故が起きる。身体的な不自由さへの苛立ちも重なる場合がある。
具体的な対応策
- 移動ルートの明確化:
- 廊下や移動ルートを整理し、すれ違いが起きにくいような配置にする。
- 職員のサポート:
- 職員が付き添い、互いの移動をスムーズに誘導する。
- 「少しお待ちくださいね」と声かけを行い、安全なタイミングで移動させる。
- 物理的な安全確保:
- 狭いスペースでは家具や備品を整理し、余裕のある通路を確保する。
「食べ物の取り合い」
【具体例】
隣の利用者さんの皿から食べ物を取ろうとして、手を叩かれたり怒鳴られる。
暴力の背景
認知症の症状として、他人の食べ物を自分の物と勘違いすることがある。また、食事のペースや量の違いから不満が生じる。
具体的な対応策
- 個別トレーの利用:
- 利用者さんごとに食器を明確に分け、混乱を防ぐ。
- 職員の見守り強化:
- 食事中に職員が近くで見守り、必要に応じて声かけや誘導を行う。
- 距離の調整:
- 食事中にトラブルが発生しやすい場合、席の間隔を広げるか、個別の食事スペースを設ける。
暴言・暴力が生じやすい場面【5選】
1. 排泄介助中
【具体例】
排泄介助中に「触るな!放っておいてくれ!」と怒鳴り、職員の手を叩く。
暴言・暴力の背景
排泄介助は利用者にとって特に羞恥心や屈辱感を抱きやすい場面です。
認知症が進行している場合、介助を「攻撃」と誤解し、防衛的な態度に出ることがあります。
また、身体に触れられること自体が刺激となり、暴力につながる場合もあります。
具体的な対応策
- 事前の説明と声かけ:
- 「これからお手伝いしますね」「少し冷たいかもしれませんが大丈夫ですよ」と具体的に伝え、利用者が状況を理解できるようにする。
- 羞恥心を軽減する環境づくり:
- カーテンや扉を閉めてプライバシーを確保する。
- ペースを尊重する:
- 利用者が拒否反応を示した場合は、一度作業を中断し、落ち着いてから再開する。
- 自立を促す:
- 利用者ができる部分は自分で行えるように誘導し、介助を最小限に抑える。
2. 入浴介助中
【具体例】
浴槽に入ることを嫌がり、「冷たい!触るな!」と叫んで手を振り払う。
暴言・暴力の背景
入浴は体温や湿度の変化が大きいため、利用者が不快感を覚えやすい場面です。さらに、服を脱ぐ行為に強い羞恥心を感じる場合もあります。認知症の影響で状況が理解できず、不安感が暴言や暴力につながることがあります。
具体的な対応策
- 声掛けで安心感を与える:
- 「今から温かいお湯に入りますね。少しずつ進めます」と、動作を事前に説明。
- 温度や湿度を調整する:
- 湯温や室温を快適に保ち、寒さや暑さを感じさせない環境を整える。
- 羞恥心を軽減する:
- タオルを活用して体を隠しながら作業を進める。
- 入浴タイミングを調整:
- 機嫌が良い時間帯や体調が良いタイミングを見計らって対応する。
3. 食事中
【具体例】
提供された食事に不満を抱き、「こんなの食えない!」と叫んで食器を叩きつける。
暴言・暴力の背景
食事は利用者にとって楽しみでもありますが、食材や調理法が好みに合わないと強い不満を抱くことがあります。また、噛む力や飲み込む力が衰えている場合、食事が苦痛となり、その感情が暴言や暴力として表れることもあります。
具体的な対応策
- 利用者の嗜好を把握する:
- 家族や本人に好みを聞き取り、食事に反映させる。
- 一口ずつ勧める:
- 「これなら食べやすいかもしれません」と声掛けをしながら、少量ずつ試してもらう。
- 柔らかさや温度を調整する:
- 食材の硬さや温度を適切に調整し、利用者が食べやすい状態にする。
- 代替案を用意する:
- 食事を受け付けない場合は、スープやゼリーなど簡単に食べられるものを用意する。
4. 就寝前や起床時
【具体例】
起床を促した際に「勝手に起こすな!」と怒鳴り、布団を蹴飛ばす。
暴言・暴力の背景
利用者が自分の生活リズムを乱されることに強い抵抗を感じる場合があります。特に認知症が進行している場合、朝や夜の区別がつかなくなることも原因の一つです。また、眠りが浅く、些細なことで機嫌を損ねることがあります。
具体的な対応策
- ゆっくりと声掛けを行う:
- 起床時は「おはようございます。ゆっくり起きましょうね」と、優しく声を掛ける。
- 無理に起こさない:
- 無理に布団を剥がしたり、強引に起こそうとしない。
- 利用者のペースに合わせる:
- 起床時間や就寝時間を可能な限り本人のペースに合わせる。
- 部屋の環境を整える:
- 朝はカーテンを開けて自然光を入れ、夜は照明を暗くするなど、生活リズムを整える環境を作る。
5. 他者との接触時
【具体例】
廊下ですれ違う際に「邪魔だ!」と怒鳴り、相手を押しのける。
暴言・暴力の背景
狭いスペースでの接触や、他者の行動が自分のペースを乱したと感じることで、ストレスを感じやすい場面です。認知症の進行による空間認知の低下が原因で、すれ違い時の距離感を適切に取れないこともあります。
具体的な対応策
- 廊下の整理と配置の工夫:
- 通路を広く保ち、すれ違いがスムーズにできるようにする。
- 職員の付き添い:
- トラブルが起きやすい利用者には職員が付き添い、安全に誘導する。
- 個別対応の検討:
- どうしても衝突が避けられない場合は、別々の時間帯に移動や行動を行うよう調整する。
- 利用者の心理状態を観察する:
- ストレスや苛立ちが溜まっている様子が見られたら、事前に落ち着かせる対応を取る。
まとめ
今回は「利用者さんからの暴言・暴力」について解説しました。
暴言・暴力の背景には、
- 認知症による混乱
- 不安
- 環境ストレス
- 身体的な不快感
など、さまざまな要因が隠れています。
利用者さん自身が、自分の感情や状況をうまく伝えられないために、暴言や暴力という形で表現していることもあるのです。
対応策としては、利用者さんの心理状態に寄り添った声かけや、トラブルを未然に防ぐ環境整備が重要です。
たとえば、
- 事前の説明で不安を和らげる
- 個々の嗜好や身体状態に合わせたケアを行う
- 職員間で情報を共有して一貫性のある対応をする
といった工夫が効果的です。
あなたが日々直面する困難には理由があり、改善のための手段があります。
一つひとつの工夫が、利用者さんとの信頼関係を築き、現状を変える第一歩。
ぜひ諦めずに、より良いケアを目指して進んでください。
一緒に頑張っていきましょう。
あなたを応援しています。
では、また。
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