「介護リーダーに必要な能力って何だろう?」
「自分より経験豊富なスタッフをまとめられるか不安……」
介護リーダーやユニットリーダーになると、利用者さんの介助だけでなく、スタッフの指導や業務の調整、事故防止など、求められる仕事が増えます。
結論からいうと、介護リーダーに必要な能力は、大きく分けて3つです。
介護リーダーに必要な3つの能力
- 介護の知識・技術:根拠を持って判断し、チームのケアを支える力
- マネジメント力:人員や業務を調整し、安全に現場を回す力
- コミュニケーション能力:スタッフの意見を聞き、チームを同じ方向へ導く力
ぼくは介護業界で15年以上働き、ユニットリーダーとして現場の仕事や新人教育にも関わってきました。
最初からリーダーとして十分な知識や経験があったわけではありません。むしろ、わからないことばかりで苦労した時期もあります。
この記事では、現場経験と公的資料をもとに、3つの能力の具体的な中身から、スタッフへの伝え方、仕事の優先順位、能力を伸ばす方法まで解説します。
今すぐ全部できる必要はありません。今日から一つずつ取り組めるように、具体例を交えて紹介していきます。
【筆者紹介】
介護業界15年以上の現役介護士(施設勤務)
※現場経験と公的データ(厚労省など)をもとに執筆しています。
【所持資格】
介護福祉士/ケアマネ/上級心理カウンセラー
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介護リーダーに求められる3つの能力とは?

介護リーダーに必要なのは、単に自分の介助技術が優れていることではありません。
自分が直接介助をしていない場面でも、スタッフが適切に判断できるように支えることが大切です。
厚生労働省の資料でも、介護職のチームリーダーに求められる能力として、専門的なケアの実践に加え、チームの方向性をまとめる力、人材の教育・指導、職員の適性に応じた業務分担などが示されています。
参考:厚生労働省「介護職のグループにおけるリーダーについて」
3つの能力を現場の仕事に置き換えると、次のようになります。
| 必要な能力 | 現場で行うこと |
|---|---|
| 介護の知識・技術 | 介助方法の確認、ケアの統一、新人指導 |
| マネジメント力 | 業務分担、シフト調整、事故防止、情報管理 |
| コミュニケーション能力 | 相談対応、申し送り、多職種連携、意見調整 |
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
能力①:介護の知識・技術|根拠を持って判断する力
介護リーダーには、利用者さんの状態を理解し、適切なケアを判断するための知識と技術が必要です。
ただし、すべてのスタッフより知識や技術が優れている必要はありません。
スタッフによって経験年数も得意分野も違います。大切なのは、自分の知識だけに頼らず、チーム全体の力を生かすことです。
介護制度やケアの知識を更新する
リーダーとして、次のような知識を身につけておきたいところです。
- 利用者さんの尊厳や自立支援を踏まえた介護
- 認知症のある方への適切な対応
- 移乗・排泄・食事などの基本的な介助技術
- 事故防止や感染対策に関する知識
- 介護保険制度や施設の運営基準
- 福祉用具やICT機器の活用方法
介護保険制度や介護報酬、運営基準などは見直しが行われます。以前覚えた情報が、現在もそのまま使えるとは限りません。
わからないことがあれば、施設の管理者や専門職に確認し、必要に応じて厚生労働省などの公式資料を調べましょう。
なお、介護職が医療上の判断を独断で行うことは避け、体調変化やケア上の懸念は看護師など適切な専門職に相談することが大切です。
自分の介助方法を正解として押しつけない
スタッフに介護技術を教えるときは、「自分が昔からこうしている」という理由だけで指導しないようにしましょう。
たとえば、移乗介助なら、利用者さんの身体機能やその日の状態、福祉用具の適合、介助者の安全などを確認する必要があります。
同じ利用者さんでも、その日の状態によって適切な対応が変わることがあります。
施設で定めた手順やケア計画を基本としながら、状態の変化があればチームで見直す。これが重要です。
介助技術を学び直したい方は、正しい介助方法を学ぶための記事も参考にしてください。
わからないことを素直に聞ける
これは、ぼく自身がリーダーになったときに学んだことです。
現場で経験したこと
ぼくは入社1年目にユニットリーダーになりました。
当時のぼくはホームヘルパー2級で、部下となった先輩は介護福祉士。知識も経験も先輩のほうが豊富でした。
それでも先輩から「リーダー、どうしますか?」と判断を求められます。
わからないことが多く、出勤前や帰宅後、休憩中にも勉強しました。そして、知らないことは知ったかぶりせず、「相談なんですけど」「確認なんですけど」と周囲に聞くようにしました。
最初はリーダーになったことを後悔しましたが、今では成長するきっかけになったと感じています。
リーダーだからといって、何でも知っている必要はありません。
ただし、わからないまま判断を進めないことは大切です。
自分で調べ、必要な人に確認し、得た知識をチームへ共有する。この積み重ねがリーダーの判断力につながります。
能力②:マネジメント力|スタッフと業務を調整する力
介護リーダーのマネジメントとは、難しい経営理論を覚えることではありません。
利用者さんの安全を守りながら、スタッフが無理なく働けるように業務を整えることです。
主に、人員配置・仕事の優先順位・帳票管理・事故防止・新人教育などが関係します。



スタッフの経験と業務量を考えて仕事を分担する
シフトや業務分担を考えるときは、単に人数がそろっていればよいわけではありません。
スタッフの経験、対応できる介助、当日の利用者さんの状態、必要な業務量などを確認します。
たとえば、入浴介助が多い日に経験の浅いスタッフばかりが集中すれば、フォローできる職員への負担が大きくなります。
そのようなときは、管理者やシフト担当者と相談し、必要な支援体制を整えましょう。
元記事で紹介していたシフト作成時の確認項目も重要です。
シフト・業務分担の確認項目
- 早番・日勤・遅番・夜勤の必要人数がそろっているか
- 各勤務帯に必要な経験・対応能力を持つ職員がいるか
- 希望休や勤務条件に間違いがないか
- 勤務時間や休憩などの労務管理に問題がないか
- 特定のスタッフに負担が集中していないか
- 欠勤や急な対応が発生したときの相談先が決まっているか
なお、シフト作成や人員配置の最終的な権限は施設によって異なります。リーダーが独断で変更せず、施設の決裁や報告のルールに従ってください。
仕事の優先順位を判断する
介護現場では、予定していた業務がそのまま進まないことも珍しくありません。
ナースコール、排泄介助、体調不良、転倒などが重なることもあります。
そんなときに必要なのが、業務の優先順位を判断する力です。
| 優先度 | 対応の考え方 |
|---|---|
| 最優先 | 生命や安全に関わる異常・事故への対応、応援要請 |
| 優先 | 安全上放置できない介助や状態確認 |
| 調整可能 | 時間を変更できる通常業務や準備 |
| 後回し可能 | 緊急性の低い整理整頓や一部の事務作業 |
これは優先順位を考えるための一例であり、実際の判断は利用者さんの状態や施設の緊急時対応手順に従います。
一人で対応できないときは、早めに応援を求めることも重要な判断です。
すべての業務を自分で引き受けるのではなく、チーム全体で対応できるように調整しましょう。
記録・帳票を適切に管理する
リーダーは、介護記録や報告書などの管理に関わることもあります。
- 介護記録・業務日報
- 事故報告書・ヒヤリハット報告書
- バイタルチェック表・健康観察記録
- 研修報告書・OJT記録
- 会議・委員会の議事録
- 家族や多職種との連絡記録
大切なのは、書類を作ること自体ではありません。
必要な情報が、必要なスタッフに正しく伝わることです。
利用者さんの個人情報を扱うため、閲覧範囲や保管方法についても施設のルールを守りましょう。
委員会の資料作りに困っている場合は、無料の委員会議題作成ツールも活用できます。
事故防止は個人の注意力だけに頼らない
介護リーダーには、事故を防ぐための環境づくりも求められます。
転倒リスクがある利用者さんに対しては、本人の状態や生活習慣、周囲の環境、職員の対応体制などを確認します。
必要に応じて看護師やリハビリ専門職、ケアマネジャーなどと相談し、適切な支援を検討しましょう。
事故やヒヤリハットが起きたときに「次から気をつけて」で終わらせないことが大切です。
何が起きたのか、どのような条件が重なったのか、次に何を変えるのかをチームで確認します。
事故が起きた職員を責めるだけでは、報告や相談がしにくくなるおそれがあります。事実を確認し、再発防止につながる仕組みを考えましょう。
新人教育では「今、何を覚えるべきか」を整理する
新人教育もマネジメントの重要な仕事です。
新人職員が覚えることは多く、最初からすべてを理解するのは難しいものです。
まずは安全確認、利用者さんへの対応、報告・連絡・相談、基本的な業務の流れなど、優先順位をつけて教えていきます。
業務手順を説明したあとも、実際にできるか確認し、必要なフォローを行いましょう。
新人教育の具体的な進め方は、無料のOJT新人研修ツールでも確認できます。
能力③:コミュニケーション能力|スタッフの力を引き出す
介護リーダーは、スタッフへの指示や相談対応、多職種との情報共有など、さまざまな場面でコミュニケーションを取ります。
ただ、話が上手である必要はありません。
相手の話を聞き、必要なことをわかりやすく伝える力が大切です。
指示は「何を・いつまでに・なぜ」を伝える
忙しい介護現場では、指示が曖昧だと仕事の抜け漏れにつながります。
たとえば「あとで記録をお願い」と伝えるだけでは、いつまでに、何を記録するのかがわかりません。
次のように伝えると具体的です。
「申し送りまでに、Aさんの今日の食事量と水分量を記録してもらえますか?午後の状態を確認するために必要なんです」
指示を出したあとは、相手が対応できるか、ほかの業務と重なっていないかも確認します。
注意や指導では人格を否定しない
リーダーになると、スタッフに改善を求めなければならない場面があります。
そんなときは、感情的に叱るのではなく、事実と改善してほしい行動を伝えましょう。
たとえば、申し送りに必要な情報が抜けていた場合です。
避けたい伝え方:「いつも報告ができていない。もっとちゃんとして」
改善した伝え方:「今日の申し送りでAさんの状態変化が伝わっていなかったので、次回から記録と口頭の両方で共有してもらえますか?」
何が問題だったのかを明確にすれば、相手も改善する行動を理解しやすくなります。
ただし、利用者さんの安全に直結する重大な問題は、柔らかい言い回しだけで済ませてはいけません。必要な対応を明確に指示し、管理者への報告や所定の手順に従ってください。
スタッフが相談しやすい雰囲気をつくる
リーダーの表情や態度も、職場の雰囲気に影響します。
スタッフが相談したときに、毎回不機嫌な態度を取られたり、頭ごなしに否定されたりすれば、次から相談しづらくなるでしょう。
ミスを隠さず報告できる職場にするためにも、まず話を聞く姿勢が必要です。
ぼくが大切にしている考え方
ぼくがユニットリーダーとして心がけているのは、スタッフが安心して意見やミスを話せる雰囲気づくりです。
そのために、いつも上機嫌でいること、ミスを責めないこと、相手を尊重することを大切にしています。
やさしく接することと、必要な指導をしないことは別です。言うべきことは伝えながら、相手の人格を否定しないリーダーでありたいと考えています。
利用者さんやスタッフの話を聞くときは、傾聴のコツを解説した記事も参考になります。
多職種と情報を共有してチームで判断する
介護リーダーが連携するのは、介護スタッフだけではありません。
- 施設長・管理者
- ケアマネジャー
- 生活相談員
- 看護師
- リハビリ専門職
- 介護スタッフ
職種によって専門性や立場が異なるため、意見が一致しない場合もあります。
そのようなときは、誰の意見を通すかではなく、利用者さんの希望や状態、ケア計画、安全性を確認しながら話し合いましょう。
会議で意見を集めたいときは、会議でアイデアを出すコツも参考にしてください。
介護リーダーの3つの能力を伸ばす方法
必要な能力を理解できても、すぐにすべてを実践するのは難しいものです。
そこでおすすめしたいのが、今の仕事に小さな改善を取り入れることです。
まずは1日の業務を把握する
誰がどの仕事を担当しているのか、忙しい時間帯はいつか、フォローが必要な職員はいるかを確認します。
自分の仕事だけでなく、チーム全体の仕事を見る習慣をつけましょう。
次にスタッフの意見を一つ聞く
「今の仕事で困っていることはありますか?」と聞いてみてください。
最初から大きな会議を開く必要はありません。
普段の業務のなかで意見を聞き、必要に応じて管理者と相談するだけでも改善のきっかけになります。
小さな業務改善を試して振り返る
たとえば、申し送りの項目が多すぎる、備品の場所がわかりにくい、担当が曖昧な仕事があるといった問題です。
チームで改善策を決めたら、小さく試してみましょう。
実施後は、仕事がやりやすくなったか、利用者さんへのケアや安全性に問題がないかを確認します。
厚生労働省も、現場の課題を見える化し、改善策を検討・実行・振り返る取組を紹介しています。
何から改善すればよいかわからない場合は、介護現場の生産性向上案を考える無料ツールもあります。
リーダーとして自分を振り返るチェックリスト
日々の仕事を振り返るためのチェック項目をまとめました。
介護リーダーのセルフチェック
- □ わからないことを調べたり相談したりできる
- □ 利用者さんの状態に応じてケアを見直している
- □ スタッフの経験や業務負担を把握している
- □ 安全を優先して仕事の順番を判断している
- □ 必要な情報をチームに共有している
- □ スタッフの意見や相談を聞いている
- □ ミスを責めるだけでなく原因と対策を考えている
- □ 自分一人で仕事を抱え込まないようにしている
チェックが少なくても、リーダーに向いていないという意味ではありません。
今の自分が改善できそうなことを、一つ見つけるために使ってください。
介護リーダー・ユニットリーダーのよくある質問
介護リーダーとユニットリーダーは何が違いますか?
役職の名称や担当範囲は施設によって異なります。
ぼくの勤務先では、介護リーダーが施設全体の介護職をまとめ、ユニットリーダーが担当ユニットのスタッフや業務をまとめる体制です。
ただし、この役職構成がすべての施設に共通するわけではありません。ユニットリーダーに関する研修や配置上の要件についても、施設種別や適用される基準を確認する必要があります。
役割の詳しい説明は、介護リーダー・ユニットリーダーの役割を解説した記事をご覧ください。
介護技術が一番優れていなくてもリーダーになれますか?
なれます。介護技術だけでなく、チームをまとめる力や職員を支援する力も重要です。
自分より経験豊富なスタッフがいる場合は、その人の専門性を尊重しながら、協力してケアを進めましょう。
リーダーになったばかりで何をすればよいかわかりません
まずは自分の担当範囲と権限を管理者に確認しましょう。
そのうえで、日々の業務の流れ、スタッフの困りごと、利用者さんの状態を把握するところから始めてください。
最初から大きく職場を変えようとする必要はありません。
リーダーに向いていないと感じたらどうすればよいですか?
能力不足と決めつける前に、何が負担になっているのか整理しましょう。
業務量、人間関係、責任の重さ、教育体制の不足など、原因によって対策が異なります。
管理者へ相談しても改善が難しい場合は、役割の見直しや異動などを相談する方法もあります。
詳しくは、介護リーダーを辞めたいときの対処法を参考にしてください。
まとめ|理想の介護リーダーは最初から完璧ではない
介護リーダーやユニットリーダーに必要な能力は、次の3つです。
- 介護の知識・技術:利用者さんに合ったケアを考え、必要な知識を学び続ける
- マネジメント力:スタッフと業務を調整し、安全な職場環境をつくる
- コミュニケーション能力:相手を尊重しながら、チームで課題を解決する
最初から3つの能力がすべて備わっている人はいません。
ぼく自身、経験豊富な先輩に判断を求められて、どうすればよいかわからず苦労した時期がありました。
それでも、わからないことを聞き、勉強し、周囲の力を借りながら少しずつ仕事を覚えてきました。
リーダーだからといって、全部一人で抱え込む必要はありません。
自分一人が頑張るのではなく、みんなが力を発揮できる環境をつくること。
ぼくは、それが理想の介護リーダーに近づく一つの道だと思っています。
まずは今日、一緒に働くスタッフに「困っていることはありますか?」と聞いてみてください。
その小さな一歩から始めていきましょう。
なお、リーダーになることを迷っている方は、介護リーダーの打診を断る方法も参考にしてください。役職を引き受けるかどうかは、自分の生活や働き方も考えて判断してよいのです。
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