「またナースコール……」
「なんで自分ばかり動いているんだろう」
「もうイライラしたくない」
介護の仕事をしていると、利用者さんへの対応、時間に追われる業務、動いてくれない同僚など、いくつもの負担が同時に重なることがあります。
イライラするからといって、「介護職に向いていない」「自分は心が狭い」と決めつける必要はありません。
大切なのは、怒りを無理に押さえ込むことではなく、「何にイライラしているのか」を切り分けることです。
介護現場で15年以上働いているぼくも、利用者さんの対応そのものより、「時間がない」「自分ばかり動いている」「相談しても変わらない」といった状況が重なったときに、強くイライラしてきました。
この記事では、介護職がイライラする原因を5つに整理し、その場で怒りをぶつけないための対処法と、同じイライラを繰り返さないための根本対策を解説します。
- 介護職のイライラは、性格だけでなく「時間・業務量・利用者対応・人間関係・疲労」が重なって起きる
- 怒りが強いときは、まず安全を優先し、必要なら他の職員へ交代をお願いする
- イライラが毎日続くなら、感情のコントロールだけでなく業務分担や職場環境を見直す
なお、介護職の悩みを全体から整理したい方は、介護職の悩み9選|原因・対処法と辞める判断基準もあわせて読んでみてください。
【筆者紹介】
介護業界15年以上の現役介護士(施設勤務)
※現場経験と公的データ(厚労省など)をもとに執筆しています。
【所持資格】
介護福祉士/ケアマネ/上級心理カウンセラー
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介護職がイライラするのは「性格が悪いから」ではない
介護現場では、予定どおりに仕事が進まないことが珍しくありません。
- 食事介助中にナースコールが重なる
- 急な欠勤で人数が足りない
- 他の職員の仕事まで自分がフォローする
- 利用者さんから同じ訴えが何度も続く
- 苦手な職員と一緒に勤務する
ひとつだけなら対応できても、2つ、3つと重なると余裕がなくなります。
そのため、「怒らないようにしよう」と我慢するだけでは、根本的な解決にならないことがあります。
「自分で変えられること」と「自分一人では変えられないこと」を分けるのが、イライラを減らす第一歩です。
たとえば声のかけ方は自分で変えられます。しかし、慢性的な人手不足や偏った業務分担は、一人で頑張るだけでは解決できません。
ここを全部「自分のメンタルの問題」にしてしまわないことが大切です。

介護職がイライラする5つの原因
ぼくが介護現場で感じてきたイライラは、大きく5つに分けられます。
| 原因 | よくある状況 |
|---|---|
| 時間に追われる | ナースコール・排泄・食事などが重なる |
| 業務量が偏る | 自分ばかり動いていると感じる |
| 利用者対応 | 繰り返す訴え、拒否、暴言などが続く |
| 職員との人間関係 | 苦手な人、態度、仕事の押し付け |
| 疲労・余裕のなさ | 夜勤、欠勤カバー、慣れない勤務など |
原因1:人手不足や突発対応で時間に追われる
介護の仕事は、自分だけでは時間をコントロールできません。
「10時までに入浴を終わらせたい」と思っていても、転倒リスクの高い利用者さんへの対応、排泄介助、電話、家族対応などが入れば予定は崩れます。
問題なのは、予定が崩れることそのものより、崩れた予定を何とか取り戻そうとして、自分だけで仕事を抱えることです。
時間が足りないときほど、「全部予定どおり」ではなく、「今いちばん優先することは何か」に切り替えたほうが現実的です。
原因2:自分ばかり動いていて業務量が偏る
個人的に、かなりイライラしたのが仕事量の偏りです。
以前、ナースコールが鳴っても先輩が対応せず、ぼくだけ廊下を走っていた時期がありました。
忙しい時間帯でも先輩は利用者さんと談笑していて、感覚としては「二人分の仕事を一人でしている」状態です。
先輩なので言いにくく、「我慢しよう」と思っていましたが、モヤモヤは消えませんでした。
今振り返ると、単にぼくが怒りっぽかったのではなく、業務負担の偏りと「先輩だから言いにくい」という関係性が重なっていたのだと思います。
同じように仕事を押し付けられている方は、介護職で仕事を押し付けられるときの対処法も参考にしてください。
原因3:利用者さんへの対応が何度も重なる
介護職であっても、利用者さんへの対応でイライラすることはあります。
- 何度説明しても同じ訴えを繰り返される
- 帰宅願望が強く何度も立ち上がる
- 介助を拒否される
- ナースコールが何度も続く
- 暴言や威圧的な言動を受ける
もちろん、認知症や体調、痛み、不安、環境などが背景にある場合は、それを考えたケアが必要です。
一方で、「理由があるから介護職は何をされても平気」という話ではありません。
利用者さんへ怒りをぶつけそうになる場面に特化して対処法を知りたい方は、介護士が利用者さんにキレそうになる理由と対策をご覧ください。
原因4:同僚・先輩・上司との人間関係
仕事そのものより、人間関係でイライラしているケースもあります。
- 挨拶をしても無視される
- 人によって態度を変える
- 自分のミスだけ強く責められる
- 仕事を頼んでも動いてくれない
昔のぼくは、相手の態度が悪いと「自分が何かしたのかな」と考え続けていました。
でも、相手そのものを変えるのは難しいです。
業務上必要な報告・連絡・相談はする。でも、それ以上は距離を取る。これも自分を守る方法のひとつです。
人間関係そのものがつらい方は、介護職の人間関係がつらい原因と対処法で、もう少し詳しく整理しています。
原因5:疲労がたまり、心に余裕がなくなっている
夜勤や連勤、急な欠勤カバー、慣れていない部署への応援などが続くと、単純に疲れます。
ぼくも、急に別ユニットへ応援に入ったときは、利用者さんの情報が分からない、備品の場所も分からない、近くに質問できる職員もいないという状況でかなり消耗しました。
こうした状況まで「自分の気持ちの持ちよう」で解決しようとすると、さらにしんどくなります。
休んでもイライラが抜けないなら、怒りを抑える方法より「なぜ余裕がないのか」を見直してください。



イライラした瞬間にやる4つの対処法
イライラしている最中に、根本原因まで考えるのは難しいです。
まずは事故や不適切な対応につながらないよう、その場を安全に乗り切ることを優先します。
1.最初に「安全」を確認する
怒りが強くなったときに最優先するのは、利用者さんと自分、周囲の安全です。
介助中なら無理に会話を続けず、転倒などの危険がない状態をつくります。
自分でも「このまま対応すると強い言い方をしてしまいそう」と感じたら、可能であれば他の職員に交代をお願いしましょう。
2.「何にイライラしているか」を一言で言語化する
「イライラする」だけでは、原因が見えません。
- 時間がない
- 自分ばかり動いている
- 同じ対応を何度もして疲れた
- 相手の言い方に傷ついた
このように、怒りの奥にある具体的な困りごとへ変換します。
原因が分かれば、「今は介助を優先しよう」「あとでリーダーに相談しよう」と次の行動を決めやすくなります。
3.必要ならその場を離れる・交代する
利用者さんの対応中にイライラが強くなったとき、無理にそのまま対応し続ける必要はありません。
安全を確保したうえで、
「少し対応を代わってもらえますか」
と伝えて構いません。
ごまかしたり、嘘をついて離れるより、チームに状況を共有して交代するほうが安全です。
4.愚痴ではなく「事実→影響→お願い」で相談する
「あの人、全然働かないんです」だけでは、人への不満で終わってしまいます。
相談するときは、次の順番にすると伝わりやすくなります。
- 事実:「夕食前のナースコールをほぼ一人で対応しています」
- 影響:「食事準備が遅れて、利用者さんを待たせることがあります」
- お願い:「この時間帯だけ役割分担を決められませんか」
「誰が悪いか」ではなく、何が起きていて、どう変えたいのかを相談するのがポイントです。



イライラを繰り返さないための原因別・根本対策
その場で落ち着く方法は、あくまで応急処置です。
同じことで毎日のようにイライラするなら、原因そのものに手を入れます。
| 原因 | 根本対策 |
|---|---|
| 時間に追われる | 優先順位、業務手順、人員配置を見直す |
| 仕事量が偏る | 業務を見える化し、役割分担を相談する |
| 利用者対応 | 背景・対応方法をチームで共有する |
| 人間関係 | 必要な関係に絞り、問題は記録・相談する |
| 疲労 | 休息、勤務調整、応援体制などを見直す |
ここで大事なのは、全部を自分で解決しようとしないことです。
たとえば、別ユニットへの急な応援で毎回混乱するなら、「もっと自分が覚えればいい」だけではありません。
備品の保管場所を統一する、簡単なマニュアルを作る、応援に入る人が必要な情報をすぐ確認できるようにするなど、職場側で変えられることもあります。
自分の工夫で変えられない問題まで、自分の我慢で埋めないこと。
ぼくは、これが長く介護職を続けるうえで大切だと思っています。
利用者さんからの暴言・暴力は「仕事だから我慢」で終わらせない
利用者さんの状態や病気を理解することは大切です。
ただし、介護職だから暴言や暴力をすべて一人で受け止めなければならないわけではありません。
厚生労働省は、介護職員が安心して働けるよう、ハラスメント対策を含めた職場・労働環境の改善が必要だとしています。介護サービス事業者には職場のハラスメント対策として必要な措置が求められ、利用者・家族等によるカスタマーハラスメントへの対策も推奨されています。
以前、介助を待たされたり、自分の思いどおりにならなかったりすると、職員へ怒鳴る、物を投げるといった行動のある利用者さんがいました。
ぼくがお茶を出したとき、「こんなお茶、飲めるか!」と湯呑みを投げつけられたことがあります。ぼくは避けられましたが、湯呑みは床で割れました。
スタッフが施設長へ相談し、最終的には施設として対応。
その利用者さんは話し合いの結果、退去となりました。
この経験から、ぼくは「介護士が我慢すれば解決」ではなく、施設として職員の安全を守ることが必要だと考えるようになりました。
認知症や疾病などによる言動は、本人の悪意や「ハラスメント」と一律に決めつけないことも大切です。症状や環境などの背景をチームで考えながら対応します。
ただし、その場合でも職員の安全を無視してよいわけではありません。危険を感じる場合は一人で抱えず、管理者や多職種へ共有してください。



イライラが毎日続くなら、感情より職場環境を見直す
一時的なイライラなら、休んだり、誰かに話したりすることで落ち着くこともあります。
しかし、次のような状態が続いているなら、単なる「気分転換」だけでは足りないかもしれません。
- 出勤するたび同じことでイライラする
- 相談しても業務負担が変わらない
- 暴言や暴力があっても職場が対応してくれない
- 特定の職員と勤務することを考えるだけで強いストレスを感じる
- 仕事が終わっても気持ちを切り替えられない
辞めるか、我慢するかの二択にする必要はありません。
- リーダーや上司へ相談する
- 業務分担や勤務、配置を変えられないか相談する
- 問題が起きた日時・状況を記録する
- それでも改善しないなら、他の職場や働き方を知る
いきなり退職を決めなくても構いません。
まずは「今の職場で変えられること」と「この職場では変えにくいこと」を分けてみてください。
もしイライラだけでなく、「仕事へ行くのが怖い」「気持ちの落ち込みが続く」など心身への負担を強く感じているなら、介護職でメンタルがやられる原因と限界サインも確認してみてください。
厚生労働省の「こころの耳」では、ストレスのセルフチェックや電話・SNS・メールなどの相談窓口も案内されています。
介護職のイライラに関するよくある質問【Q&A】
Q1.利用者さんにイライラする私は介護職に向いていませんか?
イライラしたことだけで、介護職に向いていないとは判断できません。
「利用者さんそのもの」に怒っているのか、「時間がない」「人手が足りない」「休めていない」といった別の負担が重なっているのかを分けて考えてみてください。
Q2.何度もナースコールを押されるとイライラします。どうすればいいですか?
まず、何度も呼ぶ理由を確認します。不安、排泄、痛み、環境など原因があるかもしれません。
一人で対応し続けて余裕がなくなる場合は、職員同士で情報を共有し、対応方法や役割分担を相談しましょう。
Q3.動いてくれない同僚を見るとイライラします
相手への不満だけで終わらせず、「どの時間帯に」「どの業務が」「誰へ偏っているか」を具体的にすると相談しやすくなります。
業務分担そのものに問題があるなら、個人同士の我慢比べではなくチームの問題として扱うほうが解決しやすいです。
Q4.認知症の利用者さんにイライラしてしまいます
認知症による不安、混乱、見当識の低下などが行動の背景にあることがあります。
正論で何度も説得するより、何に不安を感じているのかを考え、チームで対応を共有することが大切です。対応が難しい場合は一人で抱えないでください。
Q5.上司へ相談しても改善しない場合はどうしますか?
相談した日時、起きたこと、自分が求めた対応などを記録しておきましょう。
異動、勤務変更、別の管理者への相談など、退職以外の選択肢もあります。それでも改善しないなら、他の職場を比較することも選択肢のひとつです。
Q6.仕事が終わってもイライラが続きます
何日も続いたり、仕事以外の生活にも影響していたりする場合は、無理に一人で抱え込まないでください。
職場の相談窓口、医療機関、公的な相談窓口などを利用する選択肢があります。厚生労働省「こころの耳」にも相談先が案内されています。
まとめ|イライラを「我慢する問題」にしない
介護職がイライラする原因は、ひとつではありません。
- 時間に追われている
- 業務量が偏っている
- 利用者対応が重なっている
- 人間関係で消耗している
- 疲労がたまり、余裕がなくなっている
イライラした瞬間は、まず安全を確保して、必要ならその場を離れたり他の職員へ交代をお願いしたりしてください。
そして落ち着いてから、「何が原因だったのか」を振り返ります。
介護職は、我慢するために働いているわけではありません。
自分で変えられることは変える。チームで変えるべきことは相談する。それでも変わらない環境なら、別の選択肢を知っておく。
「我慢するか、辞めるか」だけではなく、その間にもできることはあります。
イライラ以外にも「給料」「人間関係」「辞めたい」など複数の悩みが重なっているなら、まず悩みの正体を整理してみましょう。
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