なぜ介護業界は人手不足なのか?|原因3選と現場の介護士が肌で感じること

介護業界のイメージ画像
この記事の要約
  • 介護は「大変そう・給料が低そう・人間関係がむずかしい」と思われ、人が集まらず、入っても続きにくい。
  • 人手が足りないと、ケアが急ぎがちになり、ミスや苦情が増えやすい。
  • 解決には、働きやすくする工夫(仕事の整理、教え方の強化、シフトの見直し、記録のデジタル化、外部に任せられる所は任せる)が大切。
介護士

つねに人手が足りない……

介護士

新人が入っても、すぐに辞めてしまう……

介護おじさん

介護士歴15年以上の筆者が、なぜ介護業界はここまで人手不足なのか? 現場で実際に感じるリアルをお伝えします。

政府も介護士の確保に力を入れていますが、現場の状況は一向に改善されないのが現実です。

公益財団法人介護労働安定センターによると、介護事業所全体において62.6%もの施設が人手不足を感じていて、深刻な状況にあることがわかります。

給料が低い…割に合わないと感じる人が多い
身体的・精神的な負担が大きい…休む間もなく働く日々
職場の人間関係が難しい…お局やパワハラの問題も

介護現場で働いていて、肌で感じる人手不足の主な原因は次の2つです。

  • 介護職員の募集や定着が難しい
  • 介護職員初任者研修の講習と現場のギャップ

では、どうすれば人手不足を解消できるのか?

人手不足の対策として労働環境の改善が挙げられます。具体的には次のとおりです。

  • 業務改善
  • 人員配置の見直し
  • 職場内のストレス対策
  • 職場文化の改善
  • 研修の充実
  • 業務の一部を外部に委託
  • 新人が働きやすい環境作り
  • ICT化

介護の仕事に携わる人、これから目指す人にこそ読んでほしい内容です。

さっそく見ていきましょう。

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【筆者紹介】
介護業界15年の現役介護士です。
※現場経験公的データ(厚労省など)をもとに執筆しています。
【所持資格】
介護福祉士/ケアマネ/上級心理カウンセラー

当サイトの「実績」と「信頼性」
ブログ村介護職PVランキング1位獲得、「おすすめブログ」として複数のメディアで紹介されました。

詳しくはトップページのプロフィールに記載

目次

人手不足の原因【3選】

人手不足に悩む介護士のイメージ画像

低賃金

介護業界の低賃金は、人手不足をまねきます。

なぜなら、同じ体力・責任の重さなら、より給料の高い業種に人が流れるからです。

たとえ、介護業界に入っても、生活が厳しいとダブルワークになります。

ダブルワークで体調を崩して離職。職場は欠員状態になるのです。

だからこそ賃金水準を上げる、もしくは“賃金以外の待遇改善”を同時に進めない限り、人は集まらず定着もしないのです。

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介護職員の募集や定着の難しさ

人材不足の現状の図式

人手不足が深刻な問題となっている背景には、介護職員の募集や定着が難しいことが挙げられます。

なぜなら、介護職員の仕事は身体的・精神的な負担が大きく、労働環境の悪さや低賃金なイメージがあるから。

介護職は3K(きつい、汚い、給料安い)とか、それに「危険」を加えて4Kなんて言われがち。

危険な理由は、クラスターが発生するなど介護職員も感染症にかかる危険があるからです。

最初から敬遠される業界ですから、募集をかけてもなかなか応募がありません。

現場の声

現場の声を代弁する介護士のイメージ

息子の進路指導のときに、先生が「介護の仕事はやめておけ」と言ったのが忘れられません。

自分が介護士をしているのに、「たしかに」と思ってしまった。

ぼくが勤めている介護施設ではハローワークの他に求人誌やネットでも求人を出していますが、ほぼ空振り。

人が欲しいから求人を出すのに、ずっと求人を出していると「いつも募集している会社」のレッテルが張られてしまい、労働環境が悪いのではないかと敬遠されます。

なので、ぼくの職場は法人内の人事異動で人員を補充したり、職員の知り合いが紹介で入社するパターンが多いです。

大きな法人だと職員が多いので、人事異動で調整できますが、小さな事業所だと死活問題で倒産に追い込まれる事業所もあります。

株式会社東京商工リサーチの調査では、介護事業所の倒産は2022年が過去最多で143件(前年比76.5%)となりました。

とくに訪問介護は人手不足の深刻化が大きく影響しています。

倒産する介護施設のグラフ

出典: 東京商工リサーチ

新人がすぐに辞める

現場のギャップに困惑する新人介護士

介護職員初任者研修の資格を取得して、いざ現場に入ると驚かれます。

なぜなら、介護職員初任者研修の講習では教えられない「現実」を知ることになるから。

つまり、講習では言えない「闇」の部分を知るのです。

たとえば、

  • ひとりの利用者さんにゆっくり対応できない
  • 利用者さんは拒否のオンパレード
  • 利用者さんからの暴言、暴力、セクハラ

そして、「自分には合わなかった」「これ以上続けられない」と退職していくのです。

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現場の声

現場の声を代弁する介護士のイメージ

新人の定着がいちばんの課題。

やさしく教えたいのに、時間が足りず「見て覚えて」が増えてしまう。

丁寧に教えたいのに、うまくできない自分に落ち込みます。

体験談
エピソード1

ゆっくり対応できない現実。

18名の利用者さんのうち、転倒のリスクが高い利用者さんが6名。

センサーマットの対応に追われる日々。

利用者さんとの会話の途中でもセンサーが鳴れば「すみません、呼ばれたので失礼します」とダッシュします。

わかってくれる利用者さんならいいのですが…「話の途中で他の対応するとは、けしからん!」と怒られることもしばしば。現実は厳しい。

エピソード2

服薬介助のとき拒否されて薬を飲んでもらえない。

服薬介助をするとき…

「そんな薬飲んだことがない」

「あんたが飲みなさい」

口を閉じで断固拒否…。

新人にはハードルが高すぎる。どう対応するか教科書に載っていません…。

介護おじさん

奥の手「美人になる薬ですよ」

「もともと美人だから飲まない!」

お願いです。薬を飲んでください…。

エピソード3

利用者さんからのハラスメント

突然、後ろから抱きつかれて胸を触られる。振り返ると男性の利用者さん。

利用者さんから「なんだテメー男じゃねーか!」と逆ギレされる。

ここは無法地帯か?

外でやると逮捕されますよ…。

人手不足の影響

考える介護士のイメージ画像

介護サービスの質が低下する

人手不足によって介護サービスの質が低下します。

なぜなら、ひとりの職員で18名の利用者さんの対応をするため、効率重視のケアになってしまうからです。

転倒事故を防ぐので精一杯になりケアの質が低下すると、利用者さんからの苦情にも繋がります。

  • ナースコールで呼んでもすぐに来ない
  • ゆっくり話を聞いてくれない
  • 自立に近い人の対応が後回しになり不公平だ

利用者さんからの苦情も痛いほどわかります。しかし、転倒防止が最優先になってしまうのです。

現場の声

現場の声を代弁する介護士のイメージ

「人がいない前提」で回す日が続くと、声かけや見守りが雑になりがち。

利用者さんの表情が固くなる瞬間にハッとします。

ケアの質を守りたいのに、気持ちと現実が離れていくのがつらい。

介護職員のストレス増加

ストレスを抱えている介護職員

人手不足の職場ではストレスを感じながら働くことになります。

  • ひとりの職員に対する業務量増加
  • 転倒させてはいけないプレッシャー
  • 利用者さんからの苦情
  • 鳴りやまないナースコール

ストレス増加による影響

介護職員が過重労働やストレスに悩まされている場合、利用者さんやその家族も不安を感じることになります。

なぜなら、介護職員のストレスから高齢者虐待に発展するケースがあるからです。

最初は不適切な対応から始まり、どんどんエスカレートしてくものです。「ちょっとくらい」から始まり、気がつけばり利用者さんの生命にかかわる重大な事件に発展してしまいます。

あなたも、高齢者虐待で職員が逮捕されるニュースを見たことがあるでしょう。

ニュースを見るたびに心が痛くなります。

職員による高齢者虐待の相談や通報が増加しているのが現状です。

高齢者虐待防止件数の資料

出典:厚生労働省「令和 3 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果

介護業界における人手不足の問題は、社会全体に影響を及ぼしているのです。

ストレスで利用者さんを虐待するくらいなら、転職するべきです。

どんな理由があっても高齢者虐待は許されません。

労働環境が悪い職場にしがみつく理由はなんでしょうか?

逮捕されて人生が終わるだけです。

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人材が定着するための対策

業務改善を提案する介護士のイメージ画像

人手不足を解消するためには、介護職員の労働環境改善や、働き方の多様化などの取り組みが必要です。

ぼくの施設で取り組んでいる具体的な取り組みを紹介します。

業務改善や人員配置の見直し

介護職員の負担軽減のため、業務改善や人員配置の見直しを進めています。

忙しい起床介助から朝食後(7時~9時)、夕食から就寝介助(18時~20時)の時間帯は職員を増やしました。

  • 2時間だけ働けるパートさんを雇う
  • 施設長、ケアマネ、生活相談員、看護師も現場をフォローする

職場内のストレス対策や職場文化の改善

サービス残業をする文化を撲滅するために、定時にアラームをセットしています。

アラームがなると退勤する職員に対して「お疲れさま」「仕事あがってね」と声かけをして、帰りやすい雰囲気を作ることにしました。

今まで残業が多かったユニットリーダーこそ定時に帰り、他のスタッフも帰りやすい環境を作っています。

定時で帰れないときでも精神的な負担が増えないように、退勤時間から5分を過ぎると1分単位で残業代が出るようになりました。(今までは15分を過ぎなければ残業代が出なかったです)

研修の充実

介護職員のスキルアップを促進するため、社内研修だけでなく病院が主催するような外部研修にも積極的に参加できる環境を作っています。

会社から強制的に参加させられるのではなく、研修の案内を見て自分が参加したい研修に自由に参加できます。

外部研修に参加しても給料が出るので、積極的に参加する職員が増えました。

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業務の一部を外部に委託

今まで介護職員がしていた「居室清掃」「お風呂掃除」を外部に委託しています。

介護職員は利用者さんの対応に集中できるようになり、負担が軽減しました。

現場の声

現場の声を届ける介護士

まずは業務を“減らす”ことから。

清掃やリネンは外部に任せ、記録は音声入力と定型文で短縮。

浮いた時間を新人フォローに回すと、ミスも退職も目に見えて減りました。

新人育成の強化

新人のOJT(実際の業務を行いながらの研修)にかける時間を1週間から1ヵ月に伸ばしました。

より手厚くサポートすることで、早期退職を防げるようになりました。

募集してもなかなか応募がないので、ようやく来た人を辞めさせないことが大切ですね。

こちらも読まれています【介護業界】新人に仕事を教えるコツ 簡単5ステップで解説

ICT化

介護サービスの効率化のためにICT化による人手不足の解消策も注目されています。ぼくの職場でも手書きだった記録類がパソコンでの入力になり、どんどん効率化されています。

介護業界全体でもICT化の流れは進んでいくでしょう。

ChatGPTのようなAIで介護プランやシフト表を作成する未来がすぐそこに見えます。

関連記事はこちら【裏技】介護現場でChatGPTを活用する方法7選|メリットとデメリットも解説

よくある質問【Q&A】

なぜ介護は人手不足なの?

「大変そう・給料が低そう」というイメージと、仕事が覚えにくい・続けにくい環境が重なって、入職→早期退職が起きやすいからです。

人手不足だと何が起きる?

仕事が急ぎがちになり、ミスや苦情のリスクが上がります。職員の疲れもたまり、さらに退職が増える悪循環になります。

すぐできる改善策はある?

仕事の分け方を見直す、記録のテンプレ化・ICT化、掃除や洗濯など外部委託できる業務を切り出す、引き継ぎメモを整える、などが即効性あり。

給料をすぐ上げられない時はどうする?

シフトの柔軟化、残業削減、休憩の確保、希望休の通りやすさ、感謝が伝わる仕組みなど「非金銭的メリット」を強化します。

新人がすぐ辞めないコツは?

1人担当を作らず「チームで教える」。OJT計画表・チェックリストを用意し、できた所を見える化して小さな成功体験を積ませます。

どの業務を外部委託すると効果的?

清掃、リネン、送迎の一部、備品補充など“専門スキル不要で時間を食う仕事”。ケア時間を増やせます。

利用者家族からの苦情を減らすには?

先に情報を出す(今日の様子、リスク説明)、連絡のルールを決める、クレーム一次受けの定型対応を作ることが有効です。

まとめ

この記事の要約
  • 介護は「大変そう・給料が低そう・人間関係がむずかしい」と思われ、人が集まらず、入っても続きにくい。
  • 人手が足りないと、ケアが急ぎがちになり、ミスや苦情が増えやすい。
  • 解決には、働きやすくする工夫(仕事の整理、教え方の強化、シフトの見直し、記録のデジタル化、外部に任せられる所は任せる)が大切。

ぼくが感じる介護業界の人手不足の原因と、対策方法は次のとおりです。

人手不足の原因

  • 介護職員の募集や定着が難しい
  • 介護職員初任者研修の講習と現場のギャップ

人手不足の対策

  • 業務改善
  • 人員配置の見直し
  • 職場内のストレス対策
  • 職場文化の改善
  • 研修の充実
  • 業務の一部を外部に委託
  • 新人が働きやすい環境作り
  • ICT化

求人を出してもなかなか応募がないので、入社した人が辞めない環境作りが重要ですね。

みんなが働きやすいように、どんどん業務を改善していきましょう。

介護士はこれからの日本を支える仕事です。

一緒に働く仲間を待っています。

日本を支えてやりましょう。

では、また。

人間関係しんどさ解決

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この記事を書いた人

【介護業界15年目】
資格:介護福祉士、介護支援専門員、上級心理カウンセラー
施設のリーダーで採用から教育に関わる
現役介護士ならではの「体験談」や「介護現場の声」を発信しています。
「ブラック企業」から「ホワイト企業」に転職した経験を活かし、転職に失敗しない方法も紹介しています。

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