
退職ラッシュで現場が回らない……



ケアの質を上げるどころか、最低限の業務すらできない……
これは、介護業界で実際に起こっていることです。



介護士歴15年以上の筆者が、退職ラッシュにより崩壊した施設のリアルな実態を語ります。
人手不足はずっと問題視されていたけれど、
ある日を境に一気に退職者が増え、現場は崩壊……
- そのとき施設で何が起こったのか?
- なぜ退職が止まらなかったのか?
この記事でわかること
✅ 退職ラッシュの原因|職員が辞めた理由
✅ 崩壊寸前の現場で起きたカオスな状況とは?
✅ 職員が定着する施設と崩壊する施設の違い
この記事を読めば、介護業界の現状が見え、これから働く施設を選ぶ際の重要なポイントが分かります。
介護士として長く働きたい方は、ぜひチェックしてください。
関連記事はこちら 介護業界はなぜ人手不足なのか?現場の介護士が肌で感じること
随時、情報を追加・更新していきます。
名前:なお(介護おじさん)
年齢:43歳
【資格】
・介護福祉士
・介護支援専門員
・上級心理カウンセラー
☑介護士歴15年目
☑介護施設のリーダー職
☑ブラック企業からホワイト企業に転職
☑職場で陰湿なイジメを受けた経験あり


詳しくはこちら
・スーパーの精肉担当(超ブラック企業)
毎日6時~21時までの長時間労働で体力の限界
・本屋の店長(普通の企業)
面接など職員の採用にかかわるが会社倒産
・ITの会社で営業(超ブラック企業)
きついノルマ・飛び込みの営業で精神消耗
・CADオペレーター(ブラック企業)
休みなし、こき使われまくりで精神崩壊
・福祉用具専門相談員(ブラック企業)
上司のパワハラがエグすぎて精神の限界
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転職の失敗を繰り返して介護士に落ち着く


介護職のお悩みQ&A
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介護職のお悩み【Q&A】


介護施設の退職ラッシュと崩壊の実態


介護業界の現状と課題
慢性的な人手不足が続く介護業界
介護業界はもともと人材不足が深刻な業界ですが、近年はその状況がさらに悪化しています。
厚生労働省のデータによると、介護職員の有効求人倍率は4倍以上に達することもあり、求職者1人に対して4つ以上の求人がある状態です。
つまり、介護施設は人手が足りず、「人の取り合い」が発生しているのです。
「辞めてもすぐに次がある」状況
介護業界では、働き手がすぐに次の職場を見つけられるため、少しでも職場環境が悪いと「もっといい職場があるはず」と思い、転職を決断しやすい傾向にあります。
介護施設で働くHさん(40代・女性)は、給料に不満があり退職を決意しました。
しかし、退職してから1週間も経たずに別の介護施設から「すぐに来てほしい」と納得のいく給与でオファーを受け、すぐに次の職場へ移ったのです。
このように、介護業界は「辞めてもすぐに別の働き口が見つかる」状況が続いており、離職率の高さに拍車をかけています。
年齢に関係なく再就職できる業界なので、介護士は自分に合った職場が見つかるまで転職を繰り返せるのはメリットです。
しかし、介護施設側としては、条件が悪いと他の施設に人材を取られてしまうのです。
退職ラッシュが発生する背景:過酷な労働環境・人間関係のストレス
過酷な労働環境
介護の仕事は、「3K(きつい・汚い・危険)」と言われるほど過酷な現場が多いのが現実です。
さらに「給料安い」のKが追加され4Kと言われることさえあります。4Kってテレビですか?
- きつい:夜勤が多く、身体的・精神的に負担が大きい
- 汚い:排泄介助や食事介助など、清掃や衛生管理の業務が多い
- 危険:腰を痛めるリスクや、認知症の利用者からの暴力行為などがある
- 給料安い:介護職の平均年収は、日本の平均年収よりも低い
夜勤明けでも翌日の勤務が当たり前 という施設もあり、体力的に限界を迎える人が続出しています。
人間関係のストレス
介護施設では、職員同士の関係だけでなく、利用者さんやその家族とのトラブルも発生します。
Yさん(40代・男性)は、認知症の利用者さんから暴言を吐かれたり、時には叩かれたりすることがありました。さらに、利用者さんの家族から「もっとちゃんとケアしてほしい」とクレームを受けることもしばしば。
「頑張っているのに報われない」という気持ちが積み重なり、Yさんは心が折れてしまったのです。
心療内科に通いながら、なんとか働いていましたが、介護施設で新型コロナのクラスターが発生したタイミングで心身ともに限界に達して退職となりました。
また、職場内でも人手不足による ギスギスした空気 が広がることもあります。



また職員が辞めた……



残された職員の負担が増えていく……
――そんな不満が積もり、次々と職員が辞めていく悪循環が生まれてしまうのです。
人材不足が引き起こす施設崩壊の実態
連鎖的な退職が止まらない
1人が退職すると、その穴を埋めるために残った職員の負担が増えます。その結果、



このままでは自分まで倒れてしまう……



他の施設ならもっと楽に働けるかも……
と感じ、次々に退職するケースがあります。
まるで ドミノ倒し のように、退職者が出るたびに職場環境が悪化し、さらに辞める人が増えるという 負のスパイラル に陥ってしまいます。
最終的に施設が閉鎖になる……
ある有料老人ホームでは、3か月の間に10人以上の職員が退職し、残ったのはわずか数名。
その結果、施設は 新規入所の受け入れを停止 し、最終的には運営が成り立たなくなり、閉鎖に追い込まれました。
閉鎖後、利用者さんの家族は急いで別の施設を探さなければならず、大きな混乱が生じたのです。
その有料老人ホームで生活していた利用者さん2名と、働いていた職員1名を、ぼくが働いている施設で受け入れることになりました。
退職ラッシュが介護施設に与える影響


介護施設で退職ラッシュが起きると、現場には次のような悪影響がでます。
- 残った職員の負担が急増
- サービスの質が低下
- 事故やトラブルの増大
- 施設の閉鎖や統廃合
ただでさえ人手不足が深刻な業界ですから、数人の退職でも施設が崩壊の危機になります。
ここでは、介護施設が直面する具体的な問題を、実例を交えながら詳しく解説していきます。
残った職員の負担が急増
少数精鋭ならぬ「少数疲弊」状態
介護施設では1人が辞めると、その仕事は自然と他の職員に割り振られます。しかし、もともとギリギリの人員で回しているため、カバーしきれずに業務がどんどん重くなっていきます。
ある施設では、夜勤担当の職員が3人いたのに、2人が退職したことで、残った1人がすべての夜勤をしなければいけなくなりました。
(残ったのが、ぼくの知り合いです)
週に1回、施設長が夜勤をすることで、なんとか休みを確保。
現在、「辞めたいけれど辞められない状態」とのこと。
身体を壊さないか心配です。
「自分しか夜勤担当がいない」と思うと、大きなプレッシャーですね。
「もう限界…」連鎖する退職
負担が増えた職員の中には、「このままでは自分まで潰れてしまう」と感じ、さらに退職を決意する人が出てきます。
Aさん(40代・女性)は、退職者が続出した結果、1日あたりの勤務時間が増え、休日も急な出勤要請が増えました。
ある日、家族と過ごすはずだった休日に施設から電話が入り、急遽出勤することに。
「もう家族との時間も取れない。これでは自分の人生が壊れてしまう」と感じ、退職を決意したのです。
こうして、1人が辞めたことで負担が増し、次の人も辞める…という 「負のスパイラル」 が発生してしまうのです。
サービスの質が低下:利用者さんにも影響が出る
時間が足りず「流れ作業」に……
職員の数が減ると、当然ながら利用者さん1人ひとりにかけられる時間も減ります。
本来なら、
- 相手のペースに合わせて食事介助をする
- おむつ交換を丁寧に行う
- 悩みを丁寧に傾聴する
など、利用者さんの尊厳を守りながらケアすることが理想です。
しかし、人手不足が進むと 「時間内に全員のケアを終わらせること」 が最優先になってしまいます。
心では「相手のペースに合わせたケアをしたい」と思っていても、結果的に流れ作業のような対応になるのです。
たとえば、
昼食の時間に 1人の職員が20名の利用者さんを担当 すると、利用者のペースに合わせることができず、「早く食べてもらわないと次の人の介助ができない」と焦ってしまいます。
その結果……
- まだ飲み込めていないのに、次の一口を促される
- 食事をこぼしてもすぐに拭いてもらえない
など、利用者の不安やストレスが増加するのです。
また、トイレ介助の時間も確保できなくなり、「おむつを交換する回数を減らす」という苦肉の策を取らざるを得ない施設もあります。
これでは、利用者さんのQOL(生活の質)が損なわれてしまいますね。
事故やトラブルの増大
介護は「人の命を預かる仕事」です。しかし、職員の数が減ると、見守りの時間が短くなり、転倒事故や誤嚥(ごえん)のリスクが増えてしまいます。
たとえば、
ある施設では、職員が減ったことで、利用者さん一人ひとりの状態を確認するのが困難になりました。その結果、職員が見ていないところで利用者さんが転倒されて、大腿骨を骨折する事故が起こってしまったのです。
また、入浴介助の人手が足りず、入浴回数を減らした結果、利用者さんの皮膚トラブル(褥瘡〈じょくそう〉やかゆみなど)が増えてしまったケースもあります。
このように、人手不足は利用者さんの安全や健康に直結する重大な問題 なのです。
施設の閉鎖や統廃合
新規利用者の受け入れ停止
人手が足りなくなると、まず最初に起こるのが 「新規利用者の受け入れ停止」 です。施設としては、職員の負担を増やさないための措置ですが、これにより 経営難 に陥るケースも少なくありません。
ある有料老人ホームでは、退職が相次いだため「これ以上、新しい入居者を受け入れられない」と判断。入居者数が減ると収益が減り、結果的に施設の運営が厳しくなってしまいました。
最悪の場合、施設の閉鎖へ
さらに事態が悪化すると、最終的に施設が閉鎖されることもあります。特に、地方の小規模な施設では、もともと職員の数が少なく、数人が辞めただけで運営が立ち行かなくなるケースも珍しくありません。
小規模デイサービスで、3人の職員が辞めたことで運営が困難になり、家族に施設を閉鎖することを通知。
家族は急いで新しい施設を探さなければならず、「受け入れ先が見つからない」「急に環境が変わると認知症が悪化する」といった問題に直面しました。
まるで 「ダムの水が少しずつ漏れ出し、最後には決壊する」 ように、退職ラッシュが進むと施設そのものが存続できなくなってしまうのです。
まとめ
介護施設で退職ラッシュが起きると、
- 残った職員に負担が集中し、新たな退職を招く
- ケアの質が低下し、利用者に悪影響が出る
- 施設の経営が立ち行かなくなり、最悪の場合閉鎖に追い込まれる
という深刻な影響が出ます。
この問題を解決するには、施設側が積極的に職員の働きやすい環境を整え、離職を防ぐ努力をする必要があります。
次は、「退職ラッシュを防ぐための具体的な対策」について詳しく解説していきます。
介護施設の崩壊を防ぐために
退職ラッシュによる介護施設の崩壊は、もはや他人事ではありません。
- 現場の負担増
- サービスの質の低下
- 最悪の場合の施設閉鎖
こうした問題を防ぐためには、職員が「辞めたい」と思わない環境を整えることが大切です。
ここでは、介護施設が崩壊を防ぐための具体的な対策について、実例を交えながら詳しく解説していきます。
職場環境の改善が急務
「人が辞めない職場」は何が違うのか?
介護業界全体が人手不足に悩む中でも、「辞めない職場」も確かに存在します。そのような施設では、職員の満足度が高く、長く働き続ける環境が整っています。
では、具体的に何が違うのでしょうか?
✅ 1. シフトの柔軟性がある
ある介護施設では、職員の希望を聞いて「柔軟なシフト制度」を導入しました。
たとえば、子育て中の職員には「午前のみの勤務」を認めたり、夜勤が厳しい職員には「日勤専属」のシフトを組んだりしています。
その結果、「続けられる働き方ができる」と感じた職員が増え、離職率が低下したのです。
関連記事はこちら 【ママさん必見】介護業界で子育て中に働きやすい職場は?気を使わずに働こう
✅ 2. 相談しやすい職場の雰囲気
介護の現場では、人間関係のストレスが大きな退職理由になっています。しかし、「何でも相談できる雰囲気」がある職場では、ストレスが溜まりにくく、辞める人が少なくなります。
たとえば、ある施設では 「1対1の定期面談」 を導入し、管理職が職員の悩みを聞く場を設けました。
すると、「仕事の不満をため込まずに済む」と職員のモチベーションが上がり、職場の雰囲気も良くなったのです。
人が辞めない職場は「心地よいカフェ」のようなもの
良い職場環境とは、「また来たい」と思えるカフェ に似ています。
- スタッフの対応が良い(上司や同僚が優しい)
- 座席が快適(働きやすいシフト制度)
- メニューが豊富(成長の機会がある)
こんなカフェには、リピーター(長く働く職員)が増えます。
逆に、「店員の態度が悪い」「狭くて居心地が悪い」と感じたら、二度と行きたくないですよね?
職場も同じで、「ここなら続けられる」と思える環境づくりが必要なのです。
給与・待遇の見直しは不可避
介護職の給与はなぜ低い?
介護業界は「やりがいはあるが、給料が低い」と言われがちです。しかし、人材を引き留めるためには、給与の改善が必要不可欠です。


たとえば、
ある施設では、基本給を上げるのは難しいものの、「夜勤手当を増額」 することで夜勤の負担を軽減しました。これにより、夜勤を引き受ける職員が増え、シフトの負担が分散されたのです。
介護職は我慢しがち
「もう少し給料を上げてほしい」と思いながらも、「まぁ、我慢できるか……」と働き続けている人が多いのが介護業界です。
しかし、どんどん業務負担が増えると、「もう無理!この環境じゃ働けない!」と限界を超えてしまいます。
不満を言わないからといって、不満がないわけではありません。職員の不満や悩みを早めに察知して、職員が納得できる環境を整えるが大切ですね。
DX(デジタル化)で業務負担を軽減
ICT活用で「介護はアナログで大変」の常識を覆す
介護の仕事は 「紙の記録が多い」「人の手でやらなければならない作業が多い」 というイメージがあります。
しかし、デジタル技術を導入すれば、負担を軽減できるのです。
たとえば、
- 「見守りセンサー」 を導入し、夜間巡回の回数を減らす
- 「音声入力の記録システム」 を使い、報告書作成の時間を短縮する
こうした取り組みを進めた施設では、「作業が楽になった!」と職員の満足度が向上し、離職率が下がりました。
デジタル化は「洗濯機を導入する」のと同じ
昔は洗濯をすべて手洗いしていましたが、洗濯機が登場してからは 「時間も体力も節約できるようになった」 ものです。
介護の現場も同じで、最新技術を導入することで、職員の負担を減らせます。
「アナログな方法」に固執せず、便利なツールを積極的に活用していくべきですね。
関連記事はこちら 【裏技】介護現場でChatGPTを活用する方法7選|メリットとデメリットも解説
外国人労働者の活用と課題
外国人介護職員の増加
近年、介護業界では 「特定技能」 や 「技能実習制度」 を活用し、外国人労働者の受け入れを進めています。
すでに多くの施設で外国人スタッフが活躍しており、「助かっている」という声も多いです。
しかし、
- 「言葉の壁」があり、細かいニュアンスが伝わりにくい
- 文化の違いから、利用者さんや家族とのトラブルが起きる
という課題もあります。
そのため、受け入れた外国人職員がスムーズに働けるように 「やさしい日本語」を使う研修 や「施設内の多言語マニュアル」を整備することが求められます。
関連記事はこちら 【例文32選】介護現場で使ってはいけない「タブーな言葉」|ポジティブに言い換えるコツを紹介
【まとめ】介護施設の崩壊を防ぐために
介護施設の崩壊を防ぐためには、
- 職場環境を改善し、辞めない仕組みを作る
- 給与や待遇を見直し、職員の不満を減らす
- DXを導入し、業務の負担を減らす
- 外国人労働者を活用し、持続可能な人材確保を進める
という取り組みが大切ですね。
まとめ
今回は「退職ラッシュで介護施設が崩壊した話」を紹介しました。
介護施設で退職ラッシュが起きると、現場には次のような悪影響がでます。
- 残った職員の負担が急増
- サービスの質が低下
- 事故やトラブルの増大
- 施設の閉鎖や統廃合
介護施設の崩壊を防ぐためには、次の取り組みが大切です。
- 職場環境を改善し、辞めない仕組みを作る
- 給与や待遇を見直し、職員の不満を減らす
- DXを導入し、業務の負担を減らす
- 外国人労働者を活用し、持続可能な人材確保を進める
退職ラッシュで介護施設が崩壊しないためには、会社が職員の声を聞きながら労働環境を改善していかなければいけません。
他に条件がいい求人があれば、いつでも転職が可能な業界ですから。
職員とのコミュニケーションを疎かにした会社は長続きしません。
沈みかけた船からは逃げるように人がいなくないります。
あなたの職場は大丈夫ですか?
ぼくも介護士です。一緒に頑張っていきましょう。
では、また。
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