「男の人には裸を見られたくない」と、女性利用者さんから介助を断られる。
勤務メンバーの中で男性が自分だけになり、なんとなく会話に入りにくい。
体重の重い利用者さんの介助や、興奮している利用者さんへの対応を「男性だから」と頼まれる。
そして家に帰ると、家族の生活や将来を考えて「この収入のままで大丈夫かな」と不安になる。
ぼくは介護現場で15年以上働くなかで、こうした男性介護職だからこそ感じる悩みを経験してきました。
令和7年度介護労働実態調査では、「介護職員」7,519人のうち男性26.6%、女性72.7%でした。男性介護職は珍しい存在ではありませんが、職場によっては男性が少数になることがあります。
ここで最初に伝えておきたいことがあります。
この記事は「女性が多い職場だから働きにくい」という話ではありません。
ぼく自身、これまで多くの女性職員に助けてもらってきましたし、性別に関係なく働きやすい人もいれば、合わない人もいます。
この記事で扱うのは、男性が少数派になったときに感じた孤立感や、性別を理由に役割が固定されることへのモヤモヤです。
逆に、男性が多い職場で女性が一人だけなら、似たような居心地の悪さを感じることもあると思います。
男性だから我慢する。女性だからお願いする。
そんなふうに性別だけで決めるのではなく、利用者さん・職員の双方が働きやすい方法を考えるのが大切だと、ぼくは思っています。
この記事の要点
- 男性を理由に介助を断られることがある
- 男性が少数だと孤立感を抱くことがある
- 力仕事が男性職員へ偏ることがある
- 困難事例を男性職員へ任せる職場もある
- 収入や将来への不安を感じることがある
大切なのは「男性だから仕方ない」で全部を終わらせないことです。
【筆者紹介】
介護業界15年以上の現役介護士(施設勤務)
※現場経験と公的データ(厚労省など)をもとに執筆しています。
【所持資格】
介護福祉士/ケアマネ/上級心理カウンセラー
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結論|男性介護職の悩み5選:「男だから仕方ない」で片づけなくていい

ぼくが実際に経験してきた悩みは、次の5つです。
| 悩み | まず考えたいこと |
|---|---|
| 女性利用者さんから介助を拒否される | 利用者さんの希望を尊重してチームで調整する |
| 男性が少なく孤立していると感じる | 全員と仲良くすることを目標にしない |
| 男性だから力仕事を頼まれる | 性別ではなく安全な介助方法で決める |
| 困難事例やトラブル対応を任される | 一人に抱え込ませずチームで対応する |
| 収入や将来が不安になる | 転職だけでなく収入を増やす方法を比較する |
ポイントは、悩みをすべて自分の努力で解決しようとしないことです。
「自分で変えられること」「職場で調整すべきこと」「介護職全体の課題」に分けると、次に何をすればいいか見えやすくなります。
男性介護職の悩み1|「男性だから」と女性利用者さんから介助を拒否される
これは、ぼくが実際に何度も経験しています。
女性利用者さんの入浴介助に入ろうとすると、
「男の人には裸を見られたくない」
と言われることがあります。
尿失禁があり、交換が必要な場面でも、
「女の人を呼んできて」
と言われ、女性職員へ交代することがあります。
ぼくは、この気持ちはできるだけ尊重したいと思っています。
入浴や排泄は、とてもプライベートな介助です。羞恥心やこれまでの生活歴、本人の価値観があります。
介助を拒否されたからといって、自分の介護技術や人間性を否定されたわけではありません。
つらかったのは、女性職員へ交代をお願いするとき
ぼくがむしろモヤモヤしたのは、その後でした。
本人の希望を尊重して女性職員へ交代をお願いしたとき、「え?また?」というような反応をされたことがあります。
すると、
- 自分の対応が悪いと思われているのかな
- 女性職員より対応できる範囲が狭いな
- また仕事を代わってもらって申し訳ないな
と感じてしまいます。
だからぼくは、その分、高いところの電球交換など、自分ができる仕事は積極的にやるようにしていました。
ただ、今振り返ると、ぼく一人が埋め合わせをする問題ではなかったと思います。
利用者さんが同性介助を希望するなら、利用者さんの希望を尊重しながら業務分担を調整するのは、チーム全体で考えることです。
利用者さんの尊厳を守ることと、男性職員が申し訳なさを抱え続けることは別です。
男性介護職の悩み2|男性が少ない職場で孤立していると感じる
ぼくの職場では、ユニットに男性がぼく一人しかいない時期がありました。
勤務している職員のほとんどが女性で、自分だけ話題についていけなかったり、会話に入りにくかったりすることがあります。
誰かに意地悪をされているわけではありません。
それでも、
「自分だけ少し浮いているな」
「なんとなく孤立しているな」
と感じることはありました。
ここで強調したいのですが、女性職員が多いこと自体が問題なのではありません。
ぼくの場合は「職場で自分と同じ立場の男性がほとんどいない」という少数派の感覚が、孤立感につながっていました。
これは男女が逆でも起こり得ると思います。
無理に全員と仲良くしなくても仕事はできる
以前のぼくは、
「職場なんだから、みんなと仲良くしなきゃ」
と思っていました。
でも、15年以上働いてきた今は少し違います。
職場で必要なのは、友達をたくさん作ることではありません。
- 挨拶をする
- 感謝を伝える
- 必要な報告・連絡・相談をする
- 困ったときに助け合う
これができれば、仕事はできます。
雑談の輪に入れないことと、職場に馴染めていないことは同じではありません。
ただし、無視・陰口・仲間外れなど、性別に関係なく人間関係そのものがつらい場合は別です。
その場合は、介護職の人間関係の悩み|つらい原因7選・対処法・辞める判断基準で原因を整理してみてください。
男性介護職の悩み3|「男性だから」と力仕事を任される
介護度の高い利用者さんや、体重の重い利用者さんの介助を頼まれることがあります。
ぼく自身、男性拒否の女性利用者さんを女性職員にお願いすることがあるので、
「お互い様だよな」
と思う部分もあります。
できることは助け合えばいい。それは今も変わりません。
ただ、単純に「重たいから男性にお願い」という理由だけで仕事を振られると、モヤモヤすることがあります。
「お願い」ではなく「一緒にやろう」なら違う
ぼくが特に引っかかったのが、
「手伝って」ではなく「お願い」と言われること。
内心では、
「一緒に2人で介助すればいいのに」
と思っていました。
でも、人間関係を悪くしたくない。
仕事をしにくくなったら嫌だ。
そう考えて、グッと我慢して引き受けたことがあります。
これはぼく自身の反省点でもあります。
助け合うことと、一人に負担を集中させることは違います。
令和7年度介護労働実態調査では、介護労働者全体の23.9%が「身体的負担が大きい」と回答しています。
身体への負担は、男性・女性どちらか一方の問題ではありません。
「男性だからできる」ではなく、「どうすれば利用者さんと職員の双方が安全か」で介助方法を決めることが大切です。
頼まれる仕事を断れず悩んでいるなら、介護職で仕事を押し付けられるときの対処法も参考にしてください。
男性介護職の悩み4|困難事例やトラブル対応を任される
暴言や暴力があり、職員に危害がありそうな利用者さん。
そんなときに、男性職員へ対応をお願いされることがあります。
ぼくも実際に、怒鳴ったり、テーブルを叩いたりして興奮している利用者さんの対応を任されたことがあります。
男性職員が対応する理由は分かります。
状況によっては、体格や配置を考えて「今回はぼくが対応した方が安全だ」と思うこともあります。
だから、男性職員が対応すること自体を否定するつもりはありません。
対応が終わったあと、どっと疲れた
そのときは、利用者さんの話を聞きました。
刺激しないように傾聴して、何とか落ち着いてもらう。
大きな事故もなく、対応は終わりました。
でも、居室から出た瞬間、どっと疲れました。
怒鳴られる。
テーブルを叩かれる。
いつ暴力につながるか分からない。
そんな状況で相手の話を聞き続けるのは、精神的にかなり消耗します。
そのとき、ぼくは内心で思いました。
「もし今日、男性職員がいなかったら、どうしていたんだろう?」
でも、角を立てたくなくて言いませんでした。
男性だから怖くないわけではない
ここは強く伝えたいです。
男性だからといって、怒鳴られて平気なわけではありません。
男性だから怖くない。
男性だから傷つかない。
男性だから危険な対応を全部任せていい。
そんなことはありません。
一方で、女性職員だから対応できないと決めつけるのも違うと思います。
必要なのは、性別だけではなく、利用者さんの状態や職員の経験、体格、人数、その場の危険度などを考えて対応することです。
厚生労働省も、介護現場のハラスメント対策について、担当職員の配置や申し送り、相談しやすい職場環境づくりなどを事業所側の対策として示しています。
困難事例が起きるたびに、特定の男性職員一人へ対応が集中するなら、それは個人の頑張りだけで解決する問題ではありません。
- 誰が対応するのか
- 一人で対応するのか、複数で対応するのか
- どの段階で交代するのか
- 危険を感じたらどう離れるのか
- 対応後に誰へ報告・共有するのか
ここまで職場で決めておくことが大切です。
利用者さんからの暴言・暴力そのものへの対応は、介護現場で利用者さんから暴言・暴力を受けたときの対処法で詳しく解説しています。
男性介護職の悩み5|収入や将来を考えると不安になる
最後は収入です。
これは、もちろん男性だけの悩みではありません。
家計や将来への不安は、男性・女性に関係なく感じるものです。
ただ、ぼく自身は一家の生活を考えたとき、かなり悩みました。
知り合いから、
「家を建てた」
「新車を買った」
という話を聞く。
そのたびに自分の収入を思い浮かべて、
「自分には無理なのかな」
と落ち込むことがありました。
介護の仕事は好きです。
今の職場も好きです。
それでも、子どもの教育費や、自分たち夫婦の老後資金を考えると、
「転職した方がいいのかな」
と考えることがあります。
仕事が好きなら「辞める・我慢する」の二択にしなくていい
ぼくが選んだのは、今の職場で働きながら副業を始めることでした。
もちろん、これは「介護職は全員副業すべき」という意味ではありません。
収入を増やす方法はいくつかあります。
- 資格を取る
- 昇進する
- 手当のある働き方へ変える
- 副業をする
- 条件のよい職場を探す
令和7年度介護労働実態調査では、介護労働者全体の38.1%が「仕事内容のわりに賃金が低い」、29.9%が「昇給がない、少ない」と回答しています。
収入に不安を感じること自体は、珍しい悩みではありません。
介護の仕事を続けたいなら、「辞めるかどうか」を考える前に「収入を増やす方法はないか」を考えてみてもいい。
具体的な方法は、介護職の給料を上げる方法7選で紹介しています。
給料だけではなく「このまま介護職を続けて大丈夫かな」と感じている場合は、介護職の将来が見えない人へ|不安の原因と今日からできる行動計画も参考にしてください。
男性介護職の悩みは3つに分けると対処しやすい
ぼくが15年以上働いてきて感じるのは、男性介護職の悩みを全部「男性だから」でまとめない方がいいということです。
| 分け方 | 例 |
|---|---|
| 自分で変えられること | 無理に全員と仲良くしようとしない、断り方を変える |
| 職場で調整すべきこと | 介助の分担、力仕事、困難事例の対応体制 |
| 介護職全体の課題 | 身体的負担、賃金、働き方 |
自分の考え方や行動を少し変えるだけでラクになることもあります。
一方で、自分では変えられないこともあります。
「もっと自分が頑張ればいい」で終わらせないことが大切です。



性別で役割が固定されているなら、職場の問題かもしれない
男性介護職として働いていれば、結果的に男女で役割が変わる場面はあります。
たとえば、女性利用者さんが同性介助を希望する。
その代わりに、ぼくが別の業務を担当する。
こうした助け合い自体を悪いとは思いません。
問題なのは、性別だけで役割が固定されることです。
- 重たい利用者さんは全部男性
- 怒っている利用者さんも全部男性
- 男性だから一人でできると言われる
- 相談しても「男なんだから」で終わる
こうした状態が繰り返されるのであれば、男性介護職としての適性ではなく、職場の業務分担や安全管理に問題がある可能性があります。
逆に、女性職員へ「女性だから細かい気配りをして」「女性だからこの利用者さんを担当して」と仕事を固定するのも同じです。
男性か女性かではなく、その人の経験・得意不得意・利用者さんの希望・安全性を見ながら役割を決める職場の方が、ぼくは働きやすいと思います。
今の仕事全体にモヤモヤしているなら、まずは介護職の悩み9選|原因・対処法と辞める判断基準で、自分が何につらさを感じているのか整理してみてください。
それでも「もうこの職場では続けられない」と感じているなら、介護職を辞めたいのは甘え?|限界サインと後悔しない判断基準へ進めばOKです。
いきなり退職を決める必要はありません。
まず「自分が何に一番疲れているのか」を見つけるだけでも、次の行動は変わります。
男性介護職の悩みについてよくある質問
男性の介護職員はどれくらいいますか?
令和7年度介護労働実態調査の「介護職員」7,519人では、男性26.6%、女性72.7%でした。
およそ4人に1人が男性ですが、職場やユニット単位で見れば、男性が一人だけというケースもあります。
女性利用者さんに介助を拒否されたら、自分の対応が悪いのでしょうか?
性別だけを理由に拒否されているのであれば、必ずしも介護技術や接し方に問題があるとは限りません。
入浴や排泄は羞恥心に関わるため、利用者さんの希望を確認したうえで、職場内で対応を調整することが大切です。
男性だから力仕事を頼まれるのは仕方ありませんか?
職員同士で得意なことを補い合うのは必要です。
ただし、安全な介助方法よりも「男性だから」が優先されているなら、業務分担を見直す余地があります。
暴言・暴力がある利用者さんは男性職員が対応するべきですか?
状況によって、男性職員が対応した方が安全なケースはあると思います。
ただし「男性なら大丈夫」と一人に任せるのではなく、利用者さんの状態・職員の経験・人数・危険性などを踏まえてチームで判断することが大切です。
厚生労働省も、介護現場のハラスメント対策では職員個人だけに対応を任せず、組織としての方針や相談体制、情報共有などを整えることを示しています。
まとめ|男性介護職だから我慢する、で終わらせなくていい
ぼくは介護現場で15年以上働くなかで、女性利用者さんから男性を理由に介助を断られたことがあります。
勤務している男性が自分一人になり、孤立しているように感じたこともあります。
体重の重い利用者さんの介助を頼まれ、
「2人でやればいいのに」
と思いながら黙って引き受けたこともあります。
怒鳴ってテーブルを叩く利用者さんの対応を任され、何とか落ち着いてもらったあと、居室を出てどっと疲れたこともあります。
そして今でも、家族の生活や将来を考えれば収入について悩みます。
だから、
「男なんだから、そのくらい気にするな」
とは言いません。
同時に、女性職員を原因にする必要もありません。
問題なのは性別そのものではなく、少数派であることによる孤立や、性別だけを理由に役割が固定されることだからです。
自分で変えられることなのか。職場で変えるべきことなのか。介護職全体の問題なのか。
まず、この3つに分けて考えてみてください。
介護の仕事が好きなら、今の職場で感じている一つの悩みだけで、介護職そのものまで嫌いになる必要はありません。
参考資料
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